法律家ってどんな専門家?①テニスのルールを題材に
裁判官、検察官、弁護士を総称して「法律家」といいます。
法律家というと、どんな専門家だと思いますか?
法律を全部知っていて、聞けば頭の中から法律が出てきて解決してくれる?
そういうイメージを持たれる方が多いのですが、さすがにそんなに万能ではありません(笑)。よく使う法律はそうできることもありますが、法律は無数にありますし、さすがに調べないとわからないこともあります。
僕なりの解釈ですが、法律家の専門性とは、法律をたくさん知っていることではなくて「法的な考え方」ができるというところにあると思います。
「法的な考え方」といわれても意味が分からないと思うので、ここからは例を挙げます。
こんな事例を思い浮かべます。
私が、クレーコートでかみおひろみち@Kamy1126先生とテニスのシングルスのゲームをしていました。かみお先生の打ったフォアハンドは僕の届かないスピードで飛んできて、ベースライン付近に着弾し、僕は取れませんでした。ボールの跡を確認したところ、ボール跡の大部分はラインの外に出ており、ラインに乗っている部分は、1センチ程度でした。私は、このボールの跡を見て、ボールはアウトだと主張しました。
この主張は認められるでしょうか?
はい。テニスのルールを知っている人は、すぐに答えがわかりますね。
でも、テニスを知らない人は、テニスのルールを確かめなければいけません。
そこでJTA TENNIS RULE BOOKにも掲載されている、ルールオブテニス(日本語版)を見ると、こんなことが書いてあります。
「規則12 ラインに触れたボールは、コート内に正しく入ったものとみなされる」
スポーツのルールって、作られ方が法律と同じなんです。
私たち法律家は「ラインに触れたボール」という部分を「要件」、「コート内に正しく入ったものとみなされる」という部分を「効果」と呼んでいます。
これを上記事例に適用すると、「ボール」が「ラインに触れ」ています。この要件を満たしているため、効果が発生します。そのボールは、「コート内に正しく入ったものとみなされる」ので、結論はインです。
このように、大前提として要件と効果で作られた条文を引っ張り出して、世の中で起こっている具体的な事実関係が要件を満たしているかどうかを判断し、その事実関係からどのような効果が生じるのかを導く。これが法的な考え方です。
こうした考え方ができると、見たことも聞いたこともない法律を目にしても大丈夫です。
なんだそんな簡単なことなのか、自分でもできる、と思われた方もいらっしゃると思います。弁護士の仕事がなくなっては困りますので、次回以降、どんどん専門性を掘り下げていきます。
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