ステーブルコインと日本法
2022年6月、資金決済法が改正されました。同改正のポイントは、⑴ステーブルコインへの対応、⑵高額電子移転可能型前払式支払手段への対応、⑶銀行等荷よる取引モニタリング等の共同化にあります。本稿では、ステーブルコインと改正資金決済法の関係について触れます。
ステーブルコインには、皆さんご存知のとおり、暗号資産型ステーブルコインと法定通貨型ステーブルコインの二種類が存在します。暗号資産型ステーブルコインについては、暗号資産を担保としてステーブルコインの価値安定を図ります。日本法においては、暗号資産については、資金決済法上の暗号資産として取り扱われるところ、暗号資産型ステーブルコインについても機能的には他の暗号資産と同じですので、暗号資産に該当するものと考えられます。
暗号資産に該当する以上は、その売買、交換、取次等を行う場合には暗号資産交換業の登録が必要になります。
他方で、法定通貨型ステーブルコインについては、名前のとおり法定通貨が担保されていることになり、今回の資金決済法の改正により「電子決済手段」として取り扱われる事になりました。また「電子決済手段」の売買、交換、取次、管理等を行うことは、電子決済手段等取引業として取り扱われます。電子決済手段等取引業も当然登録が必要ですが銀行や資金移動業者については別途の登録は不要とされています。
ちなみに日本の資金決済法については、クリプトに関して海外諸国より整備が進んでいるとも言われており、今回のFTXのチャプター11に関してもFTXJapanに関しては、顧客の暗号資産がコールドストレージ(コールドウォレット)で分別管理されていたこともあり、返金対応となる見込みです。
https://help-jp.ftx.com/hc/ja/articles/13054195917593
ステーブルコインに話を戻すと、暗号資産型と法定通貨型の暗号資産については、改正資金決済法において整備がされたものの、もう一つの課題が残されることになりました。
それは前払式支払手段のうち「流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるもの」についての取り扱いです。これはパーミッションレスブロックチェーンで展開される前払式支払手段を念頭においているものと思われます。パーミッションレスブロックチェーンとは簡単にいえば誰でも参加出来るブロックチェーンでビットコインなども該当します。
日本のステーブルコイン(JPYCなど)の中には、前払式支払手段との前提にたっているものがあり、パーミッションレスブロックチェーンによる前払式支払手段に該当するものと考えられます。そのため内閣府令(来年6月までに)によっては「電子決済手段」として取り扱われることになる可能性もあります。
なお、「流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定める」とされていますが、パーミッションレスブロックチェーンの前払式支払手段をあえて「電子決済手段」として、電子決済手段等取引業の登録を受けなければならないとすることには疑問がないわけではありません。改正資金決済法の規定は顧客の資産の安全を図るということが念頭にあるもの考えられますが、前払式支払手段については、資金決済法上、発行保証金の供託が義務付けられるなどの顧客保護が図られています。前払式支払手段に既に課されている義務以上に義務を加え、顧客保護を図ることは一見悪いことではないといえますが、他方で電子決済手段等取引業として銀行や資金移動業者が優遇される結果、日本のステーブルコインの発展が遅れてしまう可能性もあります。
いずれにせよ、内閣府令が注目されます
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