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【クリエイターの法務】AI技術と著作権法
midjournyなどのAI技術をもとにイラストを作成することが少しトレンドに上がっていましたが、ここ数日でトレンドに上がっていたのが、mimic(ミミック)というAIを使用したイラストメーカーサービス。
自身のイラストをAIに学習させ、その学習したイラストの作風でイラストを作成するというもので、利用規約としても自身のイラストを使用するものとし、他人のイラストを用いることは利用規約違反となるとの案内がされていたものです。
これについて、他人の不正使用を防げないと批判が上がり、冒頭のようにβ版サービスについて見合わせる事態となってしまいました。
今回は、著作権法から見て、AI技術がどう扱われているのか。なぜ、こういった批判が出たのかなどについて触れたいと思います。
1 AI技術と著作権法
AIにイラストを読み込ませて学習させるというのは、著作権法としてはどう考えられるのでしょうか。
細かいAIの処理についてはわからないところでもありますが、AIにイラストを読み込ませる行為は、画像を解析する中でデータの形で有形的な再製がされるなどすることから複製(法21条)などには該当しうると考えることができます(読み込むイラストが著作物である前提)。
AIのような機械学習に関しては、著作権法30条の4が定められています。
(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)
第三十条の四 著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
著作権法
分かりにくいところですが、AIなどの機械学習は「情報解析」にあたるとして、この条文の話になってきます。
ちなみに、この条文は平成30年の著作権法改正によって、旧30条の4、同47条の7を統合するなどして生まれたものです。
「著作物が有する経済的価値は,通常,市場において,著作物の視聴等をする者が当該著作物に表現された思想又は感情を享受してその知的・精神的欲求を満たすという効用を得るために対価の支払をすることによって現実化されていると考えられる。したがって,著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない行為については,著作物に表現された思想又は感情を享受しようとする者からの対価回収機会を損なうものではなく,著作権法が保護しようとしている著作権者の利益を通常害するものではないと評価できる。」
著作権法の一部を改正する法律(平成30年改正)について(解説)
この部分、イラストの作風などを利用しているじゃないか!という考えもあり得るところですが、著作権法はそのあたりの利用についてはカバーしていないのです。
このへんをわかりやすくまとめているのが、リンク先の柿沼太一弁護士のコラム後半に記載されている図になります。
https://storialaw.jp/blog/4936
ここが著作権法のわかりにくいところですが、著作権法は具体的な表現を保護するのであって、作品の裏にあるアイデアのような作風、画風、世界観といった抽象的なものを保護していないのです。
2 AIが作成したイラストについて
では、AIにイラストを読み込ませることが適法であるとして、そこから作出されたイラストはどうなるのか。
AIが作ったとしても、イラストを読み込ませることでイラストが作出されるということであれば、読み込ませた人間が創作者になると考えられます。そうすると、イラスト自体に創作性が認められる限り、新たな著作物が作られたと考えられます。
では、新しく作られたイラストは、読み込まれたイラストの著作権を侵害するのか。
結局、この問題については、新しいイラストが元ととなるイラストの創作性が認められる部分を使用したと判断できるかにかかってくると考えられます。
画風などになってしまうと、あくまでアイデアの部分が似ているだけで、複製、翻案などの著作権侵害ということは難しくなってきますが、上野達弘教授も「AI が新たに生成した作品の中に過去に学習 した著作物の創作的表現が断片でも残っている場合は, これを公表などすることに著作権が及ぶことになる」と述べています。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsai/36/6/36_745/_pdf
3 法律と感情面
AIが作成したことで著作権侵害と直ちにいえないというのは見てきたところですが、そうはいっても冒頭のように批判を浴びてサービスが見合せになってしまいました。
この辺は、他人が使用するリスク云々が言われますが、新技術によって自身の作品にフリーライドされてしまうといった危惧感などもあるように思います。
法律的な処理はどうしても新技術の後追いになるわけですが、デジタル技術が進めば進むほど、その人が作り上げたというタグ付け(それこそNFTのような改変しにくい唯一性を示すタグなど)が価値を持ちうるし、そこに価値を付与することがなされていくのではないでしょうか。