【コスプレイヤーの法務】コスプレ盗撮の代償

GW中にニコニコ超会議が2年ぶりに開催されていたらしいのだが、そこでの盗撮の記事を見かけてしまった。
仕事柄、刑事事件、特に盗撮事件なんかもよく扱うので、今回はそのことについて。

1 盗撮の代償

ローアングルでの撮影だとかなんだとか言われるが、結局のところ、盗撮を規制するのは各都道府県の定める条例が基本的なものといえます。

人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置すること。

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 第5条1項2号本文

撮影する、はもちろんのこと、差し向ける、設置するもアウトなわけです。

これに対する刑罰というのもあるわけで。

 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
⑴ 第5条第1項(第2号に係る部分に限る。)の規定に違反して撮影した者

公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例 第8条2項1号

罰金が定められているからといって、数万円で済むはずもなく、初版であっても数十万単位で罰金になるというのもよくある話です。

罰金で収まるならば、盗撮のほうが割が合うと考える人はいるんでしょうか。

処罰ならまだしも、職場や家族にも事件のことを知られてしまうというのは大きな代償です。

それこそ、巡回中の警察官に逮捕されるケースだけでなく、居合わせた一般の方による逮捕(私人逮捕)なんていうものもありますから、警察官が近くにいないから逮捕されないとかそんな甘い話でもありません。

逮捕により職場などが事件を知り、職を失った人たちをよく見てきましたが、代償は高くつくといわざるをません。

2 盗撮の被害

では、盗撮の被害者は、何ができるのか。
刑事事件の被害者であれば、被害届などによる意思を示すことになります。それ自体で被害回復ができるわけではありませんが、やったことに対してしかるべき処罰を与えるという意味では、これが一番大きいものになると考えられます。

もちろん、そのほかに金銭賠償ということを考えると思いますが、被害届と引き換えに示談をし、その際に金銭が支払われているというところです。

インターネット上には、示談金の相場なんて記載があったりもしますが、別にそんなものがあるわけではなく、示談のお話を弁護士としてしてもその幅は千差万別です。

3 一度出たものは消えない

撮影データというものも今はデータになっていることがほとんどですから、消えているのかどうかも被害者からすればわかりませんし、不安でしかありません。

一方で、犯人自身も一度出てしまった情報というものは、消すことがとても難しいといわなければなりません。それこそ、過去に起こした事件で報道がされてしまえば、それを消すということはとてつもなくハードルの高い話です。

検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一 部として提供する行為が違法となるか否かは,当該事実の性質及び内容,当該UR L等情報が提供されることによってその者のプライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度,その者の社会的地位や影響力,上記記事等の目的や意義,上記記事等が掲載された時の社会的状況とその後の変化,上記記事等において当該事実を記載する必要性など,当該事実を公表されない法的利益と 当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当である。

最高裁平成29年1月31日決定

検索結果からの削除という段階でこのような判断が出されているのですが、公表されない法的利益が明らかに優越するというのがどういう場合に認められるのか、特に上記最高裁決定は逮捕報道されたことについての判断なので、一度出ると消えないというのはこれからもそれなりに先例に従った判断がなされる以上は、変わらない考えだと感じるところです。
(一方で更生することを考えれば削除なども考えうるところであるのもまた事実です。)

4 最後に

いずれにせよ、盗撮が犯罪行為に該当するのは間違いない話であり、これによって被害者が傷つくというのは当たり前なのですが、加害者もそれ相応の代償を負うのです。

病的に盗撮行為を行っている人もいますが、取り返しがつかなくなる前にしかるべき対応をすることをお勧めするばかりです。


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