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フィリピンの特殊事情を開拓!     若きリーダー、マイケル・アンジェロさんの挑戦

 フィリピンでは、コロナが明けてから店舗出店が急速に拡大中。コーヒー、おでん、ドーナツなどの新しいサービスも始まりました。しかしながら、フィリピンのフランチャイズ店舗のオーナーは、日本と異なり投資家であることが多く、店舗指導が一筋縄ではいきません。そうした中、店舗拡大を推進する主要メンバーの一人、地元フィリピン出身のマイケル・アンジェロさんは、「毎日が学びの過程」と意欲的に取り組みます。詳しく伺いました。
 

 
ローソンフィリピン オペレーションマネジャー/
マイケル・アンジェロ・ピアス・ランサンガン

1993年、フィリピン・マニラ生まれ。大学卒業まで6年間、フィリピンのNo.1大手ファストフードチェーンJollibee(ジョリビー)※で店舗スタッフを務め、大学卒業後の2016年、ローソンフィリピンに入社。ストアオフィサー、ストアマネジャー、ストアコンサルタントを歴任し、エリアマネジャーを経て現職に至る。ファーストネームとミドルネームであるマイケル・アンジェロの由来は、母が好きな映画『ニンジャタートル』のキャラクター、ミケランジェロから。
 
※ Jollibee(ジョリビー)=フィリピン最大のファストフードチェーン。24時間営業の店舗も多く、国民のソウルフードとして定着し、連日地元の人や観光客で賑わう。看板商品はフライドチキン。

警察官よりローソン
規律正しく自分が成長するために

──ローソンに入社したいきさつを教えてください。
 
 私は学生時代、大手ファストフードのジョリビーで店員やリーダー職を務めていました。その後は、オフィスワークの仕事をしていたのですが、これまでのようにお店でオペレーションをしたり、多くのお客様に接することが好きだと気づいたんです。そんな時、大学時代の友人がローソンで働いていたので、話を聞いて応募しました。
 
 採用していただいて本当に幸運でした。入社して真っ先に感じたのは、日本の人々はとても規律正しく、仕事に対して真面目に取り組むだけでなく、従業員や仕事仲間とすばらしい関係を築いているということでした。ここなら自分が成長できると考えたのです。
 
──以前から日本の会社に就職することに興味があったのでしょうか?
 
 いいえ。子どもの頃は、大人になったら警察官になることを夢見ていました。私の住む首都マニラは、最古の旧城壁都市イントラムロスやリサール公園などの歴史的な場所や美術館などもあり、ショッピングやナイトバーも多く、観光地として素晴らしい場所です。
 
 ですので、そうしたコミュニティと国のため、平和と秩序を維持する一助になりたいと考えていたんです。ところが、国内外のニュースで報じられていたように、私が成長する過程で、私たちの国の警察官の多くの違法行為に関与していたことが判明したので、警察官を目指すことをやめたんです(苦笑)。

ローソンブランド訴求へのチャレンジ

 
──日々の仕事について教えてください。
 
 オペレーションマネジャーとして、各店舗の売上げや廃棄、清掃・接客・品揃え評価などのKPI※ をチェックしています。加えて、個別の業務やルーティンワーク、チームメンバーやオペレーション部門、他部署とのミーティングがあります。他にも、店舗運営のアイデア考案、そのプロセスの確認、改善策が必要な場合は、その方策を思案します。
 
※KPI=Key Performance Indicator(キー・パフォーマンス・インジケーター)の略で、企業などの組織において、個人や部門の業績評価を定量的に評価するための指標。
 

店舗を巡回するアンジェロさん(奥)


──現在の業務のなかで、最も課題に感じていることは?
 
 やはり急拡大をしているフランチャイズ店の運営ですね。オペレーションの標準化やブランドイメージを守るため、さまざまな指南をしているのですが、フランチャイジーのなかには、何度も議論を重ねてようやく本部としての取り組み事項や決め事を守ることに理解をしてくれるという事例も少なくありません。店舗拡大するためには、フランチャイズ店と本部が同じ方向を向いて、ローソンブランドを維持することが不可欠ですが、簡単ではありません。
 
 そういったケースでは納得してもらえるよう、実例を示すようにしています。どうすれば売り上げが上がって、オペレーションが効率化するのか。例えば、ある店舗では実際に本部社員がサポートをしながら、個店プロモーション、レイアウト変更、コーヒー、韓国おでん、ドーナツを導入したことで、売上げが2倍近くになりました。オーナーも運営を担っている店長やスタッフも、誰もが満足いく結果に導くことができたのです。

コーヒーはバリスタが豆を挽き⋯。
大きなフライドチキンは主力商品、
おでんは動画配信サービスがきっかけでブレイク!?

 
──店舗で提供しているコーヒーやホットスナックは、日本とどう違うのでしょうか?
 
 フィリピンでは、売り上げに大きく貢献する重要なアイテムです。コーヒー文化が根付いているので、コーヒーは特に需要があります。ローソンのコーヒーは、近隣のオフィスワーカーに好評ですね。フィリピンには、持ち帰りコーヒーを提供する店も多いので、ローソンでもバリスタが豆から挽いて抽出したコーヒーを手頃な価格で提供しています。
 
 おでんは、いわゆる韓国おでんです。動画配信サービスがきっかけなんです。人気の韓国ドラマや映画の影響を受けて、フィリピンでも韓国グルメが広まりました。
 
──ホットスナックで一番人気はフライドチキンと伺いました。詳しく教えて下さい。
 
 フィリピンでは、フライドチキンが大人気で専門店がいくつもあります。そのため、ローソンでは丸鶏の生肉から仕入れて揚げるオリジナルのチキンを提供しています。
 

人気商品であるおでんやフライドチキンなどのホットスナック
フライドチキンは大人気


 一番人気の理由は、大きくて美味しいこと。加えて、原材料が公表されていて、安全性が広く知られたからだと思います。
 
──フィリピンには、店内で飲食ができるイートインスペースが多く設えてあるそうですね。
 
 はい、こちらではイートインスペースではなく、ダイニングスペースまたはダイニングエリアと呼びます。日常的にみなさんが交流をする場としても賑わっています。簡単な食事をしたり、購入した商品を食べたり飲んだり、楽しんで過ごしてもらえるので、私たちにとっては常連になってもらうための重要な場所になります。

「ダイニングエリア」は憩いの場

国民的スポーツのバスケで気分転換
「毎日が学びの過程」を大切に


──アンジェロさんは、休日でも仕事の準備やプロセスの分析をしていると伺いました。ストレスが溜まることはないのでしょうか? リフレッシュはどのようにしているのでしょうか?
 
 ストレスにかんしては、あまり感じていないです。私はまだ若いですし、それほどの重圧にないからなのだと思います。確かに、休みの日でも3時間から6時間ほど仕事のことで時間を使っていますが、残りの時間は食事やバスケットボールなどを楽しんでいます。
 
 バスケは、フィリピンでは大変人気で、私も子どもの頃から常にプレーしていました。仕事仲間であるチームメンバーとも一緒にプレーしているので、チームビルディングにも良いんです。
 
──仕事でもバスケでも優れたリーダーシップを発揮されていると伺いました。
 
 ローソンの上司の皆さんのおかげでもあります。私の特性をみつけて、これまで様々な経験をさせてくれました。、これまで多くの経験ができているからこそです。経験なくして、リーダーにはなり得ません。それに何より、一緒に仕事をしてくれているチームメンバーのおかげです。
 
 私はリーダーという役割ですが、それができるのも同じく各々が役割を担っているチームメンバーがいるからです。ですから役割が違うだけで、私たちは対等だとも考えています。
 
──上司の方々が期待されるのも、アンジェロさんのそうした人間力にもあるのですね。日ごろから大切にしている信条はありますか?
 
 ありがとうございます。私が大切にしているフレーズが一つだけあります。それは「Every day is a learning process.(毎日が学びの過程である)」です。というのも、例えば今日何か失敗したとしても、歩みを止めなければ、それは今後の目標を達成していくための糧になるからです。
 
 これまでに多くのチャレンジや苦労がありましたが、すべては必要不可欠なプロセスだと思うのです。
 
──ローソンでの仕事は楽しいですか?
 
 もちろんです。私自身が成長できるだけでなく、家族にも誇れる仕事です。だから、今後もフィリピンに多くの店舗を増やして、もっと必要とされる存在にしていきたいと考えています。
 

新店のオープニングセレモニーを仕切るアンジェロさん


──今、フィリピンでローソンはどういった存在になっていますか?
 
 今はもう有名で多くの人が知る存在ですし、とても人気ですが、ほんの数年前は認知度としては高くありませんでした。店舗拡大をする前だったので当然なのですが、当初は一般に「値段の高い店」と敬遠されていたんです。
 
 それが今では、リーズナブルで高品質であることも広く知られて、コーヒーやフライドチキンも人気商品になりました。数年のうちに、たくさんの人がローソンを知って、人気になったことが嬉しいです。この良さをもっと知ってもらうため、首都マニラだけでなく、他の地域にもたくさん店舗を増やしていきたいです。
 
取材・文/松山ようこ