「まずはやってみる」女性初のカンパニープレジデントが仲間とともに北の大地で取り組む大いなる挑戦
2024年3月、ローソン初の女性プレジデントの一人として、北海道カンパニープレジデントに就任した鷲頭さん。ロールモデルとして、多くの女性社員から希望の星となっています。しかし鷲頭さんにとってこの人事は青天の霹靂でした。そんなローソン歴30年の鷲頭さんに、「これまで」と「これから」について語っていただきました。
ローソン北海道カンパニープレジデント/ 鷲頭 裕子
山口県生まれ。地元のコンビニエンスストアに入社後、1992年、経営統合にともないローソンの社員に。福岡、東京、香川、島根などでMD(マーチャンダイザー/商品開発)などを務める。2008年、東京で調理麺のMDを担当。2009年、東北商品部に異動。2012年、東京で店内調理「まちかど厨房」プロジェクト責任者に。店内淹れたてコーヒー「マチカフェ」の開発も担当。その後、店内調理やナチュラルローソンの商品開発部長を経て、2024年3月、理事執行役員・北海道カンパニープレジデントに就任。初の女性カンパニープレジデントの一人として活躍中。
人生最大の契機は3.11
──鷲頭さんがこれまでローソンで経験してきた中で、最も忘れられない、印象深い出来事は?
いろいろありますが、一つ挙げるとすればやはり2011年の東日本大震災ですね。当時、私は仙台の東北商品部でMD(マーチャンダイザー/商品開発)として働いていました。3月11日2時46分、いつも通りオフィスで仕事をしていた時、突然、激しい揺れに襲われ、とっさに机の下に潜りました。周囲のロッカーやキャビネットが激しく倒れる音に、これまで経験したことのない恐怖を感じました。
あの時、3月ですがすごく寒かったんですよ。電気、水道、ガスなどのインフラが全て止まってしまったため、明かりもつかないので、私含め、皆さんとても不安になったと思います。地震直後から情報が途絶え、状況が飲み込めないほど混乱していましたが、徐々に情報が入ってきて、被害の大きさを知って驚愕しました。
その後、津波で被害のあった店舗のオーナーさんやスタッフさんが仙台市内に避難されてきたので、事務所内にあった食材と非常用発電機を駆使しておにぎりやカレーなどを作り、毎日のようにみなさんの避難先に持って行きました。そんな炊き出しを一ヶ月ほどやりました。
一週間ほどして、まず電気が復旧しました。少し落ち着くと、お客様がお店に来られるんですが、当然ながら十分な商品量が入ってこないんです。その当時、東北のローソンでは店内調理のおにぎりやに力を入れていて、仙台のオフィスには水や米などがありました。店舗には、コーヒーメーカーやフライヤーなどの器具があるので、これらの設備を活用し、何とか温かい飲食物をお客様に提供したいと考え、当時の支社長から許可をいただき、食材をオフィスから運び、お店で温かいコーヒーやおにぎりなどを作って提供したんです。
これがお客様からものすごく喜ばれました。食べ物は避難所でも配られるのですが、やはりパンだったり、決まったものが多かったんですね。それだけに、目の前で誰かが作ってくれる温かい食品が本当にありがたい、と多くのお客様に言っていただけました。この経験を通じてコンビニは、地域社会の不可欠な支柱であると再認識し、東日本大震災後には、店内のキッチンでお弁当やサンドイッチ、おにぎりを提供する「まちかど厨房」プロジェクトの責任者となって、店舗数の拡大につなげていきました。震災当時は約40店舗しかなかった「まちかど厨房」も、現在は9,300店舗まで導入が進んでいます。
オーナーさんの想いに感動
──特に有事の際、コンビニは重要なインフラとなりますね。
インフラという意味ではもう一つ、東日本大震災を通じて忘れられないことがあります。福島原発の近くのお店や、津波は被ったけれど建物自体は残っているお店のオーナーさんの中に、いつかまたお店をオープンさせたいと言う人が少なくなかったです。
いつかその土地に戻って来た時に、以前のように気軽に立ち寄れる場所でありたい。震災で街が真っ暗になり、不安な気持ちで生活している中で、ローソンの明かりがただそこに灯っているだけで、人々の希望になったからと。
その話を聞いて、当時ローソンで働き始めて20年ほどでしたが、ローソンのオーナーさんってすごいなと改めて思ったんです。同時に、インフラにはいろいろな意味合いがありますが、我々がお客様に提供できる価値は商品だけではなく、存在そのものでもあるということを勉強させていただきました。
ローソンでは「みんなと暮らすマチを幸せにします。」というグループ理念を掲げています。これは、オーナーさんたちが店舗を通じて地域社会に貢献し、実践されていることで支えられていることを改めて実感しました。オーナーさんたちのこのような姿勢から沢山の刺激をいただき、支え、学びとなり、成長させてもらいました。
──ほかに東日本大震災での経験で得られたことはありますか?
災害時などの有事には、平時のルールに縛られず、その時々の状況に応じてやるべきことをやる大切さを学んだことですね。
この経験から、お客様の喜びを確信した時には、「やりたいけど無理」とあきらめるのではなく、「実現するためにどうすればいいか」を考え、「まずはやってみる」というチャレンジする姿勢が身につきました。これによって、これまで何度も仲間と一緒に新しい事業を生み出し、成果も出してきました。
こういった意味で、東日本大震災が私の仕事人生の中で最も忘れられない印象深い出来事であり、コンビニ事業に関わる者としての使命感がより一層強くなりました。この経験は、今も私の行動原理となっています。
北海道カンパニープレジデント就任は「青天の霹靂」!?
──北海道カンパニーの最高責任者であるプレジデントに就任したとのことですが、縁もゆかりもない土地で、女性初のプレジデント就任の心境は?
内示を受けて、しばらく放心状態に陥りました。まさに青天の霹靂。自分がプレジデントになることを一瞬たりとも想像していなかったので、「なんで私が?」という思いが強かったです。プレジデントという重責を果たせるだろうかと不安しかありませんでした。
そんな私の背中を押してくれたのが、多くの仲間や女性社員たちからの「おめでとう」というお祝いと励ましのメールでした。中には「鷲頭さんがローソンで働いていく上でのロールモデルになりました」という人までいたんですよ。プレジデントになるとは私自身予想外でしたが、私の就任で喜んだり、希望をもってもらえる人がいると気づいた時、より一層の責務を実感しました。
全道レコメンドナンバー1を目指して
──現在、北海道カンパニーのプレジデントとしてチャレンジしていることを教えてください。
5年、10年後の北海道の人口減少や地方の過疎化に対する危機感を感じています。そのような状況に対して、ローソンが果たすべき役割はなんなのか、北海道のマチのほっとステーションとして、みんなと暮らすマチを幸せにするにために、ローソンができることとはなんなのかということを日々模索しています。
「お店と共に全道レコメンドナンバー1」を目標に掲げ、お客様に選ばれるローソンを作ることが、現在取り組んでいる最大のチャレンジです。
さらに、日本国内はもちろん、海外から北海道を訪れる観光客の方々を中心に、新しいお客様にファンになっていただくことも、将来の大きなテーマだと考えています。
──ではプレッシャーも大きいのでは?
もちろん、加盟店の皆さんの生活を支える重責を感じていますが、プレッシャーに負けずに結果を出すことに注力しています。北海道のお店やカンパニーを発展させるため、自らの経験を活かしつつ、チームメンバーの豊富な知識とアイデアによって足りない点を補ってもらい、日々の業務を推進しています。私はプレジデントとして、チームの結束を強化し、共に大きな成果を目指しています。
そして、難易度の高い目標ほど挑戦する価値があり、経験豊富なチームとなら達成可能だと信じています。
性別・学歴関係なし!能力と結果で評価
──これまで長年ローソンで働いてみて感じるローソンのよさとは?
いろいろありますが、まずは個性を尊重してくれるところですかね。それと、チャレンジ精神を醸成する風土や一緒にチャレンジする仲間がいるところです。
何より今回の私の人事でもわかる通り、性別や学歴に関わりなく、能力や実績、仕事に対する姿勢で評価してくれる点ですね。私はこれまで与えられた仕事やミッションにがむしゃらに取り組み、気がついたらプレジデントになっていました。こういうところもローソンらしくて好きですね。