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全国のローソンで一番恵方巻を売るお店は、マチの人と支え合う「日本一」で「地域一」のお店

全国にあるローソンのオーナーさん・クルーさんに、マチの魅力とご自身との関わりをインタビューする企画「#マチのほっとステーションをつくるひと」。
 
第3回目は、鳥取県米子市で4店舗を運営されているオーナー、田内睦彦(たうちむつひこ)さんにインタビュー。田内さんの運営する夜見地区にある米子弓ヶ浜店は、全国のローソンの中で日本一恵方巻を売るお店としても有名です。そんな「全国No.1」の称号を持つオーナー、田内さんにマチに対する想いを伺いました。


何かで「日本一」になりたいと思って、恵方巻に着目

本日は、よろしくお願いします。米子弓ヶ浜店といえば、日本一恵方巻を売るローソン、として有名ですが、なぜ恵方巻に着目されたのですか?

 ローソンで恵方巻を発売するとなった時は、普通に販売をしていたのですが、これがなかなか売れなくて(笑)。恵方巻ってこっちでは風習、習慣もなかったので、ただ置くだけでは全然売れないんですよね。

山陰というと神事も多く、馴染み深いのかと勝手に思っていました。

 今では出雲大社なんかも売り出したりはしていますが、当時はそんなことはなかったですね。
 そんな中ある年に、当時働いていた大学生のクルーさんが、所属するサークルでいっぱい予約を取ってきてくれたんですよ。それで「これは、この地方でも受け入れてもらえるかもしれない」と思い、一念発起して取組みを始めました。

それにしても「日本一」ってすごいですね。

 当時、広島県のお店が日本一のお店だったので、そこに追いつけ追い越せと思いがむしゃらに。もともと、何かで一番になりたいな、全国で一番になれるものはないのかなんて考えていたものですから。当時、恵方巻はコンビニではあまりメジャーな取組み商品ではなかったんですよね。だから、ローソンから、この辺りの夜見地区に恵方巻を広めていこうという思いで頑張りました。

具体的にはどういう取組みをされていたのですか?

 営業用のチラシを作って、地元の人が集まるところに営業に行きました。地域のミニバスの監督も務めているものですから、対戦したチームにパンフレットのセットを手渡したり、そういった地道な努力ですね。

パンフレットと共に配布しているお手製のお手紙

順位を見せていただくと、2005〜6年くらいに一気に順位が伸びているのですが、これは何か特別なことがあったのですか?

 「弓ヶ浜のローソンが日本一を目指している」というのを地域のみなさんに認知していただいたのが大きいかなと思います。私やクルーさんから、お客さまに直接「日本一を目指して頑張っているので」と、ずっとお伝えしてきたんです。そうすると、お客さまも「応援しよう」って予約してくれるようになりました。2位までは「全国1位を目指している店だよ。応援しよう」って感じでだんだんと増えていって、1位を獲ってからは「1位のお店で買おう」って感じでさらにお客さまが来てくれるようになりました 。

地域の人に応援されているお店ですね。

 本当にありがたいです。お客さまが、ご友人や周りの方に声をかけて代わりに予約を取ってきてくださったり(笑)。今は夜見にお住まいでないにも関わらず、「恵方巻は弓ヶ浜店で買おう」とわざわざ来てくれるお客さまも多くいます。でも、最初とやっていることは変わらないんですよね。チラシを作ってお渡しして、店内をディスプレイして、積極的にお声がけをして、そうやって同じことをずっと愚直にやってきていて。だから、お客さまに支えられて日本一になっているんだと思います。

地元のテレビのニュースなどでも取り上げられていましたが、反響はありましたか?

 その時は、常連のお客さまから「見たよ〜」ってお声がけを多くいただきました。「いつも行ってるローソンがテレビに出てる」ってお客さまに喜んでもらえると、私たちも嬉しいし、頑張った甲斐がありますよね。


家業だった牛乳屋さんの倉庫をローソンに改装。必ず地域の役に立つお店になろう

そもそも、なぜローソンを始めようと思ったのですか?

 家が酒屋と牛乳屋をやっていて。このお店はもともと牛乳の倉庫だった場所をローソンにしたんです。当時、酒屋もなかなか下火になっていって、何か新しいことにチャレンジしたいなと思っていたところ、ローソンのオーナー募集の案内を見たんです。その説明会が水曜日だったんですが、酒屋もちょうど水曜日休みだったものですから、タイミングですね(笑)。それで、当時倉庫にしていたこの場所に、調査に入ってもらいました。

牛乳屋の倉庫で、牛乳マークのローソン開業、という訳ですね。

 そうですね(笑)。商売っていう面では、できるだろうという気持ちもあって。酒屋時代から地元に根ざしたお店だったので、接客とかそういった、対面でのお客さん商売には自信がありました。
 しかしいざ始めてみると、やっぱりコンビニは酒屋と全然違ってもう大変(笑)。商品とか、知らなければいけないことも多いし、緻密に考えなければいけないことも多くて。正直、酒屋時代はもっとざっくりでしたから。でも、もともとの家業のお店をローソンに改装して始めたというのもあり、苦難にぶち当たるたびに「必ず地域の役に立てるお店になろう」という強い気持ちを再確認し、頑張りました。開店前の5宣言※のひとつに「One for カスタマー、All for カスタマー」を掲げているのですが、その気持ちを忘れず、地域のお客さま一人一人のためになることを考えていけたらいいなと。

※ローソンではお店を開店するにあたって、お店の目指す姿をオーナーの皆さんに宣言してもらっています

バックルームには地域の感謝状なども飾られていますが、これはどういったものですか?

 小学校の児童さんがまち探検でやってくるんですよね、職場見学会みたいな感じですね。ソフトドリンク用冷蔵庫のバックヤードに入れてあげたりとかして、少しでも学びの機会を提供しています。お店を好きになってもらえると、応援してもらえるようになるので、恵方巻の日本一も、そういった地域のお客さまとの関係性に下支えされているんだと思います。


クルーさんたちがお店の魅力。店長は、25年以上前の高校教師時代の教え子

信頼のおけるリーダークルーの谷本さん

恵方巻が注目されることが多いと思いますが、米子弓ヶ浜店のその他の魅力も教えてください。

 そうですね、やっぱりクルーさんが一番の魅力かなと思います。特にお昼のクルーさんは、ほとんどが10年以上長く務めていただいているベテランで、とても信頼しています。25年前のオープンスタッフのクルーさんも1人いますね。

恵方巻の最初の取組みもクルーさん起点でしたよね。クルーさんの強さが魅力ということですが、具体的にはどういった強みがあるんですか?

 お客さまとのコミュニケーションのとり方ですね。

 この場所は、一見のお客様はあんまり来ない立地なんですよ。北に境港市という漁師町があって、南の米子市は商売の街なのですが、このお店はその中間点のベッドタウン的なところです。ほとんどが、日々の買い物をするために来てくださるという感じなんですよね。そうすると、毎日来てくださるお客さまも多くなりますので、日々、どうやったらお客さまのためになるかを考える機会も多くなります。お客さまを飽きさせないように、自信を持っておすすめできる新商品は、しっかりとその魅力を伝えていけたらと思っています。

 私たちがこの商売を通じてできることは、お客さまにとってのお得をしっかりとおすすめすることなんですよね。だから、お客様が得になることに関しては、特に押しが強い。例えば、からあげクンの新しい味がおいしかったら、いっぱい作っておすすめするとか。ポイントカードを使ったお得な引き換えがあったら、積極的におすすめして使ってもらうとか。その気持ちでコミュニケーションしていると、自然と会話ができるようになって、おすすめもしやすくなってという流れに自然となっていきますね。

今でも率先して接客に臨む田内さん

新人のクルーさんが入った時はどうやって教えているのですか?

 特に教えていませんね(笑)。実は私、酒屋を継ぐ前は、地元の高校で体育の非常勤講師をしていたんですよね。体育講師だったものですから、言葉で教えるよりも、基本は見て覚えてねっていう。なので、教師生活が活かされているのかは分かりませんが、私が率先して会話していると、段々クルーさんも真似じゃないけど、喋れるようになって、親しくなっていって。もちろん、最初から同じことを全部やってねって言っても難しいんで、何かひとつできた時には、ちゃんと褒めてあげて。徐々に距離を縮めて、コミュニケーションを深めてもらう感じですね。ちなみに、今、米子弓ヶ浜店の店長を務めてくれているのは、25年以上前の高校の教え子です(笑)。

最後に、田内さんが次にチャレンジしたい「日本一」 を伺えますか?

 う〜ん、難しいですね。恵方巻が終わった後は、しばらく抜け殻みたいになってしまうので(笑)。
最近クルーさんと取り組もうと話しているのは、スイーツの販売です。ローソンはスイーツに力を入れていますし、リーダークルーさんと一緒に、どうやって進めていくか、日々一緒に考えています。
あ、実は私が運営する別のお店(ローソン・ポプラ米子西河崎店)は「鳥取県内で、ポプ弁※を一番売るお店」ですね。ちなみに、家業の酒屋の名前は「酒一番」で、今でもその社名でローソンを運営しています。

※ポプ弁:店内炊き立ての白米を豪快に盛りつけた、店内調理のお弁当

一番に縁がありますね。

 私たちにとって一番幸せなのは、地域で愛されて、地域のお客さまに喜んでもらえることなんで、これからも地域密着の一番店であり続けたいです。

田内さん、ありがとうございました。