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一人でも多くの人に、自分の理想のお店に来てもらいたい

 全国にあるローソンのオーナーさん・クルーさんに、マチの魅力とご自身との関わりをインタビューする企画「#マチのほっとステーションをつくるひと」。
 
第8回目は、神奈川県、大和市でローソン、ローソンストア100をあわせて6店舗、市外を含め21店舗を経営するオーナー、廣岡義隆さんにインタビュー。廣岡さんが経営する「ローソン大和南林間五条通り店」が取組む「公共のトイレ協力店」について、取組みの経緯・その背景にあるマチへの想いを聞きました。


相談から始まった「公共のトイレ協力店」取組み

本日は、よろしくお願いします。今回は大和市の「公共のトイレ協力店」に参加されているということで、まず、この取組みに協力するに至った経緯を教えていただけますか?

 大和市自体に、公衆トイレの数が元々少ないということもあって、お住まいの方から市に設置の依頼が多かったらしいんですね。でも、そのためにはお金もかかるし時間もかかるし、欲しい場所になかなか出せない状況があったようで…。そこでコンビニの力を借りることによって実現してみたいということを相談されました。最初から「協力してください」ということではなく「どう思いますか?」みたいな。
 
 最初は大きなポスターを貼っても大丈夫なのかなとか?そういうことを聞かれて「いや、そんなの絶対貼ってくれないから、こういう小さいシールにしたらどうですか?しかも、裏面だと掃除するときに剥がれていくから、表面をシールにする仕様にしたらどうですか?」など、もともとローソンで貼っている販促物を実際にモチーフとして見てもらって、これで作ってみたらどうですかなんて相談をしました。

では、ローソンの本社からの依頼で協力したというわけではなくて…

 そうですね。最初に市から協力の依頼があって、それをスーパーバイザーや支店、本社に相談して進めさせてもらった形です。

もともとトイレは貸し出していなかったのですか?清掃など負担も多いと思うのですが…

 トイレの貸し出しはしていました。貸し出すのを嫌とは全く思っていないですね。むしろ自分も、トイレに寄りたくなったらコンビニで借りることが多いですし、安心を提供できればという想いがあるので。
 でも、きっとコンビニを使ったことがない人、例えば小さなお子さんなどは、コンビニでトイレを借りていいのかどうかが分からないと思うんですよね。個人的な話なのですが、息子が小学生で、学校から家までの帰り道でずっとトイレを我慢して帰宅したんです。なぜコンビニで借りなかったのか聞いたところ「借りていいのか分からなかった」と子どもながらに言うんです。コンビニのオーナーの息子でも、コンビニのトイレに行ったことがないから、借りていいか分からない。そういうものなんだと思いました。
 普段コンビニを中心に生活している私たちみたいな人、コンビニをよく利用されているお客さまには想像できないのですが、そういう意識をお持ちの方はまだまだたくさんいるんです。これはちょっとオーバーですけど、飛行機を見たことない人にアメリカに飛んでいけばいいよって言っても想像できないじゃないですか。それと同じで、普段はスーパーやドラッグストアを使われていてコンビニを使ったことがない、中を見たことがない人からしたら、そこにトイレがあるのか、貸してくれるかも想像できない。コンビニを普段使っている人の先入観で考えていたらダメだなと思いました。

ちなみに、この取組みを始めてから、トイレの掃除頻度などは変わりましたか?

 基本的に、一日に何回やりなさい、というように決めてはいるのですが、正直できないこともあったんですよね。他の業務との兼ね合いなどもあって、どうしても行き届かない時があったり。でも、この取組みに協力してからは「キチッとやらないと」というように意識が変わりました。ちょうどローソンとしても「トイレをもっともっと綺麗にしてお客様をお迎えするぞ!」と取り組んでいくタイミングでしたので、この協力店制度がすべてではないのですが、このシールが貼ってあるからこそ、蔑ろにはできないぞという意識は働いたと思います。
 また、このシールを貼ったことでお客さまのご使用頻度が増えたので、さらに掃除回数を増やすことにしました。クルーさんの自主的なトイレ点検・清掃頻度も自然と増えていますね。

そういった大変な作業にも関わらず、協力したのは、マチのためという使命感みたいなものが大きかったですか?

 もちろん!と言いたいところですが、それだけじゃないですね(笑)。先程のトイレのお話と同じで、お客さまから見ると、一度も入ったことがないお店は、どんなお店か分からないんですよね。人間というのは不思議なもので、一度目の来店ってすごく緊張するし、ハードルも高いんですよね。だから少し遠くても知っている別のコンビニに行ったり、他の業態のお店に行ったりしてしまう方もいらっしゃいます。
 
 でも、この取組みに参加していて、うちのお店の近くで「トイレに行きたい」となったら、うちのお店に入ってくれるんですよね。緊急だから、そんなハードルを軽々飛び越えて入ってきていただける。そうなると「一度行ったことのあるお店」になるので、何もご購入いただかなくても、お客さまにとっては「マイコンビニ」のリストに入れていただけるんです。そうすると、何かの時にお立ち寄りいただける。そういったこともあるだろうなと思いました。
 
 私たちも自信を持って商品を提供していますし、品揃えにも接客にも非常にこだわっています。でも、それが「一度も来店したことない」という理由で伝わらないこともあって……。なので、トイレに協力して本当に困っているマチの方に貢献できて、そして、お店のことも知っていただける、一石二鳥のいい取り組みだなと思いました。


どんどん外に出て、地域の人に顔を覚えてもらいたい

正式な協力依頼が来る前に、相談があるってすごいですね。

 私がこの大和市の中で、6店舗経営しているということで、少しは知ってもらっていたのかもしれません。以前、大和市の「ヤマトン」というキャラクターグッズの販売をしたことがあります。市のご担当の方とやり取りしていたこともあり、相談しやすかったのかもしれません。

まさにマチの盛り上げをされている印象ですが、ご出身はこの辺りなのですか?

 出身は神戸です。自宅は平塚なので、ここは地元ではないですね。しかし、この大和市は、私が経営するローソンの一号店があった場所なので、大事な場所です。マチの方たちに顔を覚えてもらうまでに、半年ぐらいかかりましたね。

たった半年!

 まずは早く溶け込まないと、と思って、色々なところに顔を出しました。近隣にある飲食店、散髪屋や美容院、パン屋、喫茶店、ファミレス、地域のお店に寄って自分がお客さんになって、たくさんの方にご挨拶して。前職では薬の営業をしていたので、そういうことに躊躇せず飛び込むことができましたね。
 
 もちろんお店にきていただくお客さまとも交流して、どんどん顔を覚えてもらうように努めました。私がすぐにレジに立ってしまうので、発注やシフト管理とか、バックヤードで実施することが多い業務は店長にまかせっきりで…(笑)。「いらっしゃいませ」と言える商売がしたくて始めたので、そこはぶらしてはいけないと思って、開業から16年経った今でもレジに立ちますね。いろんなお店に行ってこのマイユニフォームを着て。あ、これ、マイユニフォームなんですけど、常にカバンに入っていて、いつでも取り出せるようにしています。

「いらっしゃいませ」と言える商売?というのはどういうことですか?

 私がローソンを始めた理由ですね。小学生の時、通学路にローソンがあって毎日寄っていたのですが、そこのオーナーさんがすごいいい人で。いつも「いらっしゃいませ」って優しく声をかけてくれて。僕は子どもながらこういったお店を持ちたいな、こういった商売をしたいなって思ったんですよね。いわゆる夢ですね。もちろん小学生ですから、夢はたくさんあって、そのいっぱいある中の一つではあったんですけど。
 その後、全く違う方向、先程お話した薬の営業という仕事に就いたのですが、そのお得意先の中に、ローソンがあって、そこで色々と話をしているうちに、ローソンのオーナーやらないかっていう話を受けて「待ってました!」と(笑)。

引き抜き、ということですね。

 むしろ自分からどんどん「オーナーってどんなですか?」と話を聞いた感じでしたね。その時は、もうローソンをやることしか考えられなくなっていましたから。


自分の理想のお店で、地域を代表するオーナーに

そもそも、最初にこの大和市を出店場所に選んだ理由はなんですか?

 お店の視察に来るまでは、縁もゆかりもない土地でした。前職からそうだったのですが、成長を実感するのが好きだったので、「数字が悪くてもいいから、誰もやりたくなさそうなお店でやりたい」と言ったのを覚えています。それが南林間の駅前で。決して悪い場所じゃないのですが、当時は駅前の唯一のロータリーに、競合のコンビニ・スーパーが4店舗くらい密集していて、これが理由かと。

そんな厳しい状況を打開した秘策を教えてください。

 特別なことはないですよ。自分の中で、こういう店が理想だっていうのがあって。実際に見に来てみたら、周辺の競合店は、その理想よりも全然レベルが低くて……。これなら、自分のつくるお店の方がよっぽど良いだろうと。それまでローソンで働いたことがなかったものですから、固定概念なしに、とにかくがむしゃらに自分が目指す理想のお店、「みんなが行きたくなるようなお店」を目指しましたね。品揃えはどこよりも多く、最初から、サラリーマン時代の後輩を引き抜いて店長にして、人の育成にもとことんこだわって。バックルームもピカピカにしました。誰も見ないのに、そんなとこってとこまで(笑)。
 休みの日もお店に立ち寄って、お客さま目線でお店を見て回って、「あれがない、これがない」「挨拶がない」ってとにかく言い続けて。自分がお客さんとして来店した時に、理想的だなと思えるお店にしたかったので。

お金もかかったんじゃないですか?

 そうですね。最初は厳しかったです(笑)。仮に、生活のためにコンビニオーナーを始めたのであれば、妥協してしまう部分もあると思うのですが、私は良くも悪くも、本当に自分の理想・自分のつくりたいお店をつくることが全てですから。ちょっとした趣味の世界というか、自己満足というか。
 でも、自己満足って一番人を動かすんだと思いました。徹底して理想を追求したからこそ、徐々にお客さまにも支持をいただいて、最終的には売上は当初の二倍以上になって、本当にびっくりするくらいお客さまも増えました。
 とにかくキラッと光るお店にしたくて。お客さまから見て、というのはもちろんなのですが、数あるローソンの店舗の中でも「なんかあの店舗、あのオーナーすごいぞ」というような感じで注目されるというか。それが出店している地域、マチの評判にもつながりますよね。すると「神奈川の大和市に複数店舗を展開しよう」「神奈川の大和市で新しいことに挑戦してみよう」っていうことにもなります。
 「地域を代表するオーナー」、地域に根ざしているだけでなく、地域を背負って勝負していけるオーナーになれたらいいなという思いでやってきましたし、今やっとその夢が少しずつ叶ってきているところかなと思っています。

最後に、廣岡さんのこれからのチャレンジを教えてください。

 日々チャレンジですね。自分たちのお店が良いお店じゃないと「公共のトイレ協力店」にも参加できないですし、「どんどんお店に来てください、見てみてください」と言えるようなお店であり続けなければと思うので、今の店舗はもっと理想に近づけたいですね。同時に店舗数も増やして、さらに多くの人に私たちのつくるローソンの良さを知ってもらいたいと思っています。

廣岡さん、本日はありがとうございました。