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ローソン歴38年、変わるマチと変わらない想い

 全国にあるローソンのオーナー・クルーに、マチの魅力とご自身との関わりをインタビューする企画「#マチのほっとステーションをつくるひと」。

 今回は、愛媛県松山市の松山東石井六丁目店のクルー、吉川由起代さんにインタビュー。今年でローソン歴38年の大ベテランクルーさんに、この38年間で変わったこと、変わらないこと。そして、未来に向けた想いを伺いました。


コンビニ利用経験がないにも関わらず、ローソンクルーに

本日は、よろしくお願いします。吉川さんは非常に長い間、ローソンで働かれていると伺ったのですが……。

 今年で38年目になります。当時2歳だった息子が、先日40歳になったので。

数字よりインパクト強いですね(笑)。

 そうですね(笑)。当時、4歳と2歳の息子がいて、その時、松山市は2歳からでないと保育園に預けることができなかったんですよね。下の息子が2歳になるのと同時に保育園に上の子と一緒に預けて、働き始めたので息子の年齢で考えると一番思い出しやすいです。

どこかで働きたいなと思っていて、下のお子さんが保育園に入られたタイミングで何かやろうと。

 そうです。家からいつも通っていたスーパーへの道中で、工事が始まっているのは知っていて「何ができるんだろうね」っていうような感じだったんです。それで、息子が2歳になる前に、求人広告で仕事を探そうとしたら、そこにローソンができるというのを知って、働いてみようかなって。
 でも、実は私、それまでローソンに一度も行ったことがなくて(笑)。日曜日の夜7時からのテレビの番組の中でローソンのコマーシャルがあったと思うのですが、「開いてます、あなたのローソン」っていう台詞だったと思うのですが。画面を見ていなかったので、私には「愛してます、あなたのローソン」って聞こえたのか、その台詞が耳にずっと残っていたんです。でも「ローソンってなんだろう?」って、全然分からなくて。なるほど、コンビニだったのかと。

それまで一度も触れたことがなかったことに驚きました。店舗も見たことないと。

 一番町っていう繁華街の方にはあったみたいなのですが。子育てしていた私にとっては、三番町とか一番町とかは馴染みがなくて、行く機会がなかったんですね。お買い物もスーパーで済ませていることが多くて、コンビニも全然。

それでコンビニ挑戦ってすごいですね。ネガティブなイメージなどはなかったですか?

 なかったですね。まずはやってみようと。でも最初は、思ったより大変でした(笑)。なにしろ最初の店長さんも新入社員で入られた大卒の方で、一番町にあったお店で何カ月間か研修されて、できたばかりのお店を任せられた店長さんで、その下に私だったので。開店当初は、店長と二人だけで朝・昼・夕。ローソンができてまだ10数年の時代なので、仕組みも手探りの状態で、入ってきた商品1個ずつラベラーで値段も全部つけて。レジは●●●円ガチャン、●●●円ガチャンみたいな感じのレジでしたし。
 だから店長が発注された、とにかく来た商品に値段をつけてきれいに並べるって気持ちを徹底して。その中でこの商品は売れそうって思う商品を、ちょっとスペースを広げたりと工夫して、それで売れたらすごい喜んで、人知れず自分のなかで「よしよし、やったぞ」って。

密かな楽しみというか。

 ですね。最初の一ヶ月は本当に大変だったのですが、ローソンの仕事は自分に本当に合っているなと思って。慣れてきてからは、水を得た魚ではないですけど、本当に楽しくお仕事をさせていただいて、ローソンにいる9時から17時はずっとわくわく過ごしていました。


祖父母の雑貨屋がきっかけ、コンパクトでお客様の見えるお店が好き

小売業、接客業の経験はあったのですか?

 学生時代に百貨店の催事場でアルバイトをしていた経験はありますね。あと、祖父母が雑貨屋を営んでいたので、その手伝いを少し。祖父母が身体を悪くした時に手伝いをすることになって、一度徳島の祖父母の家に預けられたんです。お店は私の通っていた中学校のすぐ前なのですが、お昼休みになると、家に帰ってくるんです。
 それで、お昼は祖母とお店に立って、友達がいっぱいきてパンとかを買っていくんですね。そんな感じで、お昼の営業を一通り手伝ったら、祖母が作ったお昼ご飯を食べてから、五限目の授業に戻るっていう。今では考えられないような話ですね(笑)。ノートなどの雑貨も扱っていたので、生徒や先生がよくお買い物に来ていて。

ドラマのような光景だなと思って聞いていました。

 田舎の学校だったので、当時はそんな感じです。先生が授業中にたまたま、お店に寄ったら祖母の調子が悪い時があって、すぐに教室に来てくれて「おばあちゃんの調子が悪そうやから、早くお店に帰ってやれ」みたいなこともありました。祖母を寝かせて、授業中にも関わらず、私は店番して。店番とお昼のお手伝い、終わった後の掃き掃除なんかがメインでしたが、そんな経験もとても楽しかったので。

それが、小売業で働くきっかけなのかもしれないですね。

 それは大きいと思います。ローソンで働き始める前は、生活圏内にコンビニがなくて、ずっとスーパーを利用していたのですが、仕事を探すってなってもスーパーで働こうとは少しも思わなくて。実家の雑貨屋の経験から、こういったコンパクトな空間がよかったのかなと改めて感じました。やっぱりお店は常にキレイにしておきたいっていうことと、お客様がご来店されたら、なるべく気持ちよく接客したいっていう、ただそれだけの単純なことをずっと一生懸命にやっているのが好きなんだなと。何も考えず、目の前のことをやり切ることを目指して今までやってきたので、こうやってお話を聞かれるまで、私も気が付かなかったのですが。

長くローソンで働かれている中で、継続が難しいと感じたことはありましたか?

 一度だけ、この仕事を辞めないといけないのかなと思った時はありました。それはやっぱり子供が小さい、保育園に通っていた時で。子供が急にすごい咳をして、病院に何度通っても良くならなくて、ちょっと大きい病院で検査してもらったら百日咳ですって言われて。百日咳にかかると保育園にも預けられないので、これは大変なことになったと。これはもう迷惑をかけるから、辞めなきゃダメだと思って、夕方暇な時間帯に店長にお話に行って。
 そうしたら、店長が「いや吉川さん子供は病気するよって。休んで元気になったら来て」みたいに軽く言ってくれて。「えっ。でも、結構休まんといかんのですよ」って言ったら「子供は病気するものだから」ってみたいな感じで対応してくれて。その時に、本当によかったと思いました。仕事が大好きだったので、これで辞めなきゃいけなくなったら悲しいなって。そうやって、子育てしている時に迷惑をかけてきたということもあって、子供が手を離れたらお店のために一生懸命働こうって思って、それが今につながっていますね。

今はどのようなお仕事をされているのですか?

 リーダークルーとして、まちかど厨房を担当しています。厨房が始まってからは、少しでも早く厨房商品を出す方がいいので、できる限り早く来た方がいいと思って8時半から16時半まで働いています。でも、やっぱり厨房作成だけじゃなくて、お客様の様子は気になりますよね。厨房の横に小窓があるのですが、チラっと中を見たお客様がいらっしゃったら、すぐに窓を開けて「もうすぐ●●できますよ」「●●出来たてです」のように声をかけたりとか。他にも悩んでいるようなお客様がいらっしゃったら、売り場に出て「今週これが新商品なんですよ」と声をかけたり。
 小窓があることで、お店の様子が分かるので、すごく良いです。やっぱり、お客様の様子がどうなっているのか、どういう動きをされているのかは気になりますし、そういうのが見える環境が好きなんだと思います。


お客様の変化・マチの変化を感じながらも、今を一生懸命に

長い間、同じお店で働き続けて、マチが変わったなと思うことはありますか?

 このお店は、前のお店が移転する形でできたので、二店舗目になるのですが、もう18年働いていますね。実は、ここに最初来たとき、周辺は全部畑だったんです。そこに、全部住宅が建って、そこの方たちが冷蔵庫代わりに使ってくださって。こうやって、お客様は増えていくんだなと思いました。

お店が移転された時に、前のお店とのギャップは感じましたか?

 前はどちらかと言うとオフィス街的な感じで、お昼にいらっしゃる方はほとんどが常連のお客様なんですね。だから12時頃までは忙しいのですが、お昼のピークを越えると落ち着いて、品出しをして。みたいなリズムがありました。でも、今のお店は駐車場が広いこともあり、ありがたいことに、本当にずっとお客様が来てくださって。

 でも、逆に今までのように常連のお客様だけではないので、やっぱり緊張することも最初は多かったです。品出しの時に、お客様に気がつかないなんて失敗もあったり……。でも我慢強いのが取り柄なので、そういう時も、なんでダメだったのかちゃんと振り返って、それを糧に、次にご来店される時は、少しでもよい接客をしたいと思って勇気を持って話かけたりして、それでニコッとされたりすると、内心「よかった」って安堵しています。

ローソン、コンビニの変化についての実感はどうですか?

 コンビニの使われ方も変わってきたように思います。働き始めた頃はATMもなかったですし、どんどん進化しているなと。少し前に、隣の電気屋さんが閉店して、大きなスーパーができて「これは大丈夫かな?」って思ったのですが、スーパーはスーパー、コンビニはコンビニの使い分けをされているんだなと。このサイズのお店で欲しいものがすぐ見つかる、おすすめや提案の接客があることが大事だと改めて思いましたし、そこで手を抜いてはいけないなと、感じるタイミングでした。

マチやお客様が変わっていく中で、ご自身について何か想うことがあれば教えてください。

 当然なのですが、お客様も、マチの様子もどんどん変わっていきますよね。一緒に働く店舗の従業員もどんどん変わっていって。でも、良い意味で、私は本当に変わらなくて。ふと気付いたときに「もうこんなに経ったの」っていう感じで、自分が年数を重ねている気持ちが本当にないんです。店長にしても、社員の方にしても、接する相手がみんな若い人たちなので、脳が錯覚しているだけなのかもしれませんが(笑)。
 でも、今目の前にある仕事、目の前にいらっしゃるお客様に、とにかく一生懸命にという思いでやっている。ただ、私のやれる仕事を、手を抜かず懸命に続けているだけなので、本当に気持ちも、やっていることも変わらないんですよね。もうお店に来るなって同僚に言われるまで、きっと変わらないと思います。

一生懸命の積み重ねが、38年の歴史に繋がっているんだなと思いました。
吉川さん、ありがとうございました。