アートライターってなに?
LAWSは地方・地域に特化した「アートライター」を養成するためのスクールですが、そもそもアートライターってなんだというかたもいらっしゃると思います。
そんな方々のために、アートライターとはなにか、自分なりの考えを、できるだけわかりやすく、記しておこうと思います。
アート、を書く人?
「アート」とはあえて日本語に訳すと「芸術」になるわけですが、芸術とは様々なジャンル、要素を含んでいます。それらを言葉を使って記述する人のことをアートライターと呼ぶ。というと、まぁそりゃそうなんだろうけれど、なんだかわかったような、わからないような、煙に巻かれてるような気持ちになります。個人的な違和感はふたつ。
「アート」を「書く」ことの疑問
「アート」を「書く」とはどのような行為なのでしょうか?
そもそも書く行為そのものは芸術に入らないのでしょうか。言葉を通して文化を作るライティングも、芸術なのではないでしょうか?
アートの範囲
私たちが「芸術」と呼ぶものは、およそ文化を形づくるほとんど全ての人間の営みを含んでいます。日本語的に言えば、美術、文学、音楽、演劇はもちろん、踊り、映画、アニメーション、漫画etc…といった具合に範囲が広く、アートを書く人って一体どんなアートを書ける人のことなのか、よくわかりません。
アートを書くということ
翻訳して伝える
まず、書くことに関して。
書くという行為を通して生まれる芸術作品はたくさんあります。小説や詩はもちろん、脚本や評論も。言葉は、それそのものでも芸術たりえますが、同時に言わずもがな情報を「伝える」ための行為でもあり、特に芸術を伝えることは、ある種の翻訳作業であると、僕は考えています。
芸術に相対するとき、どのようなことを感じるでしょうか。どのような印象をもって、どのように心が動かされるでしょう。
芸術の多くは、それ単体では文字情報を帯びておらず、それぞれの領域が持つ独自の言語で私たちの感覚に働きかけてきます。
私たちが芸術からのある種のメッセージを受信するとき、それを論理的に理解するためには、一度脳内で言語という形式に変換して、出力する必要があります。この翻訳行為を通して、私たちは芸術を心でも頭でも理解できますし、翻訳された情報が様々な媒体を通して伝えられることで、多くの人が芸術を理解することができます。
この翻訳行為は、ライティングだからそできる重要な役割だと思います。
記録して紡ぐ
また芸術作品だけではなく、それを作るアーティストのことや、アーティストを支える人たちのことを記録することも重要です。作品の周囲や背景にあるものを記録することで、ライティングは一元的なものでも、感覚的なものでもなく、社会的な意味を帯び、その集合体が歴史となっていきます。
ちょっと大袈裟に言えば、アートライティングは、アートの歴史を断片的にでも紡いでいくような役割も担っています。
なにを書ければアートライターか
アートの条件
アートの範囲を考える時、そもそも「アートとは何か」という問いが絶対に必要になりますが、この最も重要な問いを、あえてここでは述べません。そのひとつの理由として、アートに関わる人たちとの対話や、書くことによって、自分で形作っていくことに意味や意義があると考えているからです。
ただ、芸術という言葉をwikipediaで検索すると(このページはよくできています)、以下のようなことが書かれており、このようなことを満たしていればアートであるようです。
これがアートの条件であるとするならば、アートライターとは、自らが鑑賞者となりながら、「精神的・感覚的な変動」をメッセージとしてつかみとり、ライティングという芸術を用いて自ら具象化することができる人のことをさす、と言えるのではないでしょうか。
もちろんアートライターは美術や音楽、舞台など、それぞれ親しみのある領域に属し、専門性を持っていたりしますが、どの領域にいても、アートの条件が同じであるならば、先に述べた「翻訳」の基本スタンスも変わらないと言えます。
アートライターとは
まとめというわけではないのですが、個人的に今、アートライターとはこんなスタンスを持つ人のことなんじゃないかと考えています。
なんだか難しくなってきたかもしれませんが、ここであえて言いたいのは、アートライターの力は、個人の特別な力というよりは、書く対象に向き合う姿勢とそれに伴う自助努力によって育まれていきます。つまり文章をもってアートに丁寧に向き合う姿勢があれば、誰にでもなることができます。
地域に関わり、線を引く
地域を書くということは、その土地に触れ、人々が紡いできた一本の歴史という糸に、自分言葉を絡ませるということです。
日本中のアートを、自分の好きなものだけ、自由気ままに書くのも楽しそうですが、それだけではバラバラの記録が、形の合わないパズルのように自分の中に積まれていくだけかもしれません。
地域を書き続けることで、自分の文章が人と人を繋ぎ、対話をつくり、自分の文章同士も繋がっていき、いつの間にか一本の細い線が引かれていくことに気がつくはずです。
その細い線は現代から伸びて過去や、次の世代にもつながる小さな線です。
LAWSで書くという行為に向き合い、そんな線を一緒に形づくっていきませんか?
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ちなみに
「アートライティング」については、僕の敬愛する仕事仲間で美術評論家の三木学さんが書いてくださった記事がありますので、歴史や流れ含めてより具体的な情報を知りたい方はぜひこちらをご覧ください!
(イラスト:森夕香)