アートライターへの道すじ
現在のアートライターは皆、どうやって仕事を得るようになったのでしょうか。「わたしはアートライターだ!」と言った日から、アートライターと名乗れますし、たぶん誰も何も言いませんが、仕事はなかなかもらえません。
今回はアートライターとして仕事をするまでの道筋について簡単に記載しておきます。
アートコミュニティに入る
最初にほぼ結論なのですが、アート業界の仕事の多くは コネクション。つまり知り合いからの紹介でくる仕事が一番多いような気がします。僕がフリーライターをしていた時、企業の案件や雑誌系の仕事など、全く知らないクライアンントからお声がけいただくことなどありましたが、ことアート業界においては、全く知らないライターをピックアップするというのは、少なくとも僕の活動している関西ではあまりありません。
その背景には、大学コミュニティがあります。アート関係者の多くが美術・芸術大学を出て、何らかのプレイヤーとして活動していますから、そのネットワーク内で声をかけられ、仕事をもらいます。
アート関係者からすればもちろん、共通言語や背景がわかる人に頼みたいと思うわけですし、知り合いの紹介なら安心できるので、これは当然のことかなと思います。
ではアートコミュニティの外にいる人たちは、どうやってコネクションを作ればいいのでしょう?
アートプレイスにいき、関係者とつながる
まず体育会系な回答になってしまい恐縮ですが、アート関連の場所に行って、とにかく人とつながることがひとつ。
名刺を渡してライターをしていることを伝え、一度だけでなく、展示やイベントがあるたびに顔を出し、挨拶します。仕事云々よりもまず、「ライターをされている⚪︎⚪︎さん」と認識してもらうことが大切で、いい人だなとか、面白い人だなと思ってもらえればなお良し。
僕が京都にいることもありますが、特に文化芸術関係においては、最初は健全な人間関係からしか、仕事は生まれません。仮に仕事に繋がらなくても、アート業界でゆくゆく仕事をするときに、誰がどんな活動をしていて、どんな作品を作っているか、知っておくことはとても重要です。
ちなみにアート業界で文章系の仕事を発注してくれそうなのは以下の人たちです。
キュレーター・学芸員(展覧会の紹介や広報誌など)
アーティスト(作品集や何らかの記録集など)
アートプロデューサー・マネージャー(プロジェクトの記録など)
メディア関係者、編集者(言わずもがな媒体に関わってる)
特定のアートコミュニティに入る
美大・芸大関係者以外で、アート業界で活躍されている方の多くは、どこかのアートコミュニティに属していた経験があります。特定のコミュニティに入ることで、その場に関わる人たちとは深く繋がれます。またアートの仕事の多くは作家や、外部の人たちと必然的に関わりますから、周囲の人のコネクションも自然と享受することになります。
一緒に働く人や付き合いの多い人には、自分の興味関心を共有することが大切です(もっとこういうものを書きたい、こんなことをしたい)。僕が出会ってきたアート業界の人たちは皆さん、とてもいい人で、個人の鋭意については尊重してくれる人が多かったので、相手の話をまずは聞きながらもこちらの考えもどんどんシェアし、対話を通して関係を深めていくと、仕事につながっていくように思います。
コミュニティへの入り方としては、以下のようなパターンが想定できます。
芸術祭のボランティア(長年関わるとなおいい)
アートプロジェクトのインターンシップやアルバイト
アーティストが実施しているプロジェクトに参加
求人に応募
(ネットTAMの「キャリアバンク」にアート系の仕事が数多く乗っています)
現役のアートライターはどうやってアートライターに?
僕がお世話になっているライターさんたちのパターンをご紹介します。
Mさん
元々芸大出身で、卒業後、芸術系の出版社に。出版社時代のコネクションなどを使って編集者に。必然的にライティングの仕事もされるように。今は地方に住まれていますが、仕事の多くは東京や住まれていた京都からのようです。
Nさん
一般企業の広報、Webディレクターを経てフリーランスに。今は主に東京のWebメディアを中心に、アート関係のことを書かれています。Webディレクター時代の繋がりで、アート関係者と繋がり、仕事をもらい始めたそう。あとはNさん非常に活発に様々な場所へ足を運び、人と繋がっておられます。提案力もあるので、仕事に繋がりやすいのかと思います。文章も丁寧なので、僕が関わっているメディアでも重宝しています。
ぼく
どこかでまた書こうと思いますが30代までは一般企業で働きながら、フリーライターをしていました。30代になってから仕事を全て辞めてとあるアートプロジェクトにフルコミットする形で入り、そこで人脈を広げました。ぼくもNさんと同じように様々な場所に行って人と出会い、それで仕事を広げている感じです。
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アート業界は特に使い捨てのような仕事が少なく、人と人との信頼関係で仕事が回っているなと、特に関西では思います。
アートライターも、仕事仕事という感じよりは、丁寧に人間関係を作り、問題を共有し合う中で仕事をもらう。そんなスローなスタイルを好む人に向いているかもしれません。
LAWSでは、そんなコミュニティ作りという観点でも授業を進めていきますのでお楽しみに!
(イラスト:森夕香)