待望の書籍化
先日,全世界待望のアナウンスがなされた。
『刑法総論の悩みどころ』,いわゆる”橋爪連載”の書籍化である。
もはや説明する必要はないと思われるが,念のために触れておくと,
『刑法総論の悩みどころ』とは,2014年4月号(No.403)から2016年3月号(No.426)まで掲載された【法学教室】の連載のことである。
刑法総論の諸論点(「悩みどころ」)における理論的状況を簡潔に整理し,学生に向けて平易に書かれたこの連載は非常に評価が高く,全世界で書籍化が望まれていた。自分自身もゼミ発表の際には法学部図書館で参照するなど,非常にお世話になっている。
今年の5月下旬に発売されるとの情報も流れていたのだが,その後は音沙汰がなく,11月になってようやく正式発表がなされたというかたちである。
橋爪 隆 (東京大学教授)/著
2019年12月下旬予定
A5判並製カバー付,480ページ
予定価 3,520円(本体 3,200円)
ISBN 978-4-641-13940-4
480ページというなかなかのボリュームで,しっかり読み込むためには,それなりの時間がかかりそうである。しかしその時間を割く価値のある本であるのは疑いがない。
目次は以下の通り。
第1章 危険の現実化としての因果関係
第2章 実行行為の意義について
第3章 不作為犯の成立要件について
第4章 正当防衛状況の判断について
第5章 過剰防衛の成否について
第6章 誤想過剰防衛をめぐる問題
第7章 事実の錯誤について
第8章 遅すぎた構成要件実現・早すぎた構成要件実現
第9章 過失犯の構造について
第10章 過失犯における回避義務の判断について
第11章 「原因において自由な行為」について
第12章 実行の着手について
第13章 共同正犯の構造(1)──共犯としての共同正犯
第14章 共同正犯の構造(2)──正犯としての共同正犯
第15章 共犯関係の解消について
第16章 承継的共犯について
第17章 共同正犯と正当防衛・過剰防衛
第18章 不作為と共犯をめぐる問題
第19章 包括一罪の意義について
目次を見るだけで既に興奮を抑えきれないのではないだろうか。なにせ第1章から「因果関係」である。「危険の現実化」は非常に曖昧な概念であるが,橋爪先生が解説しているのだから,わかりにくいわけがない。今から非常に楽しみで仕方がない。
このように,刑法を一通り学習し,より深く学びたいと考える人にとってはマストバイの書籍といえる。(ただし,連載から書籍化まで時間が空いてしまったぶん,どこまで最新の判例に対応しているのかが唯一の不安要素かもしれない。)
そして,(某考え方・楽しみ方とは違って,)各論まで出版されることを願っている次第である。
12月下旬を楽しみに待とう。
そういや公文書の表記が「,」から「、」に代わっていくそうですね。
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