キレイな恋の片付け方を法律的に考えてみた~同棲の解消で家具とかどうしてる?~
♪恋の魔法には期限がある 時がたてば宝石もガラス玉さ~
月日は移ろいゆくもの。人の心も同様でしょう。だからこそ恋にも期限がある。あんなに素敵に見えていたあの人が、魔法が解けた瞬間からアラばかりが目についてしまう…。恋とは儚い物ですね。
せめてキレイな思い出を心の宝箱にしまいつつ、後腐れなくお別れしたい。…とは建前で実際はなかなか簡単にはいかないもの。恋の終幕はただでさえメンタルに堪えるのに、物理的にもあれやこれやと問題が生じることも。今日はそんな問題を法律の点から検討してみましょう。
婚約、事実婚、内縁関係…これらの言葉の違いって分かる?
まずは言葉の定義を押さえておきましょう。よく聞く言葉ですが、それぞれの意味の違いをいざ説明しようとすると、中々難しいですよね。
婚約
婚約とは、結婚の約束をすること。法律上は婚約についての規定はなく、書面での約束をしていなくても婚約は成立します。具体的には、LINEで「結婚しよう」と送りあったり、第三者に結婚相手として紹介していた場合は、婚約が成立していたと認められます。容易く口約束しちゃいけませんね。
内縁関係と事実婚
内縁関係とは結婚の意思はあるものの、婚姻届を提出してない状態の夫婦のこと。内縁関係と事実婚は法律的にはほぼ同じ意味で捉えられています。(以下「内縁関係」で統一して表記します)
内縁関係についても法律上の規定はありません。現状では「双方に婚姻の意思があること」と「夫婦同然の共同生活の実態があること」という条件を満たしている場合に内縁関係の成立が認められると考えられています。具体的には、同居期間の長さや親族や知人、職場の人から夫婦と認識されているかどうかといった個別の事情を総合的に考慮して判断がなされています。なお地裁では同性カップルに内縁関係を認めた判決も出ています。
参考:◆「同性カップルを事実婚に準ずる関係と認め、法的保護の対象になるとする画期的な判決が、宇都宮地裁で示されました」(OUT JAPAN)
https://www.outjapan.co.jp/lgbtcolumn_news/news/2019/9/17.html
では、言葉の意味を押さえたところで、具体的に恋の終わりに訪れる問題を法律的に見ていきましょう。
婚約を解消したら、お金を請求されるの?!
婚約を解消しても、原則慰謝料の請求は認められません。ただし、浮気や金銭トラブルの存在、一方的に関係を不当に解消した場合には慰謝料の請求が認められることも。スマートな関係解消を心掛けたいですね。
同棲の解消
意見が分かれるところですが、結婚前の同棲を選ぶカップルも多いですよね。とはいえ、全てのカップルが順調に暮らしていくわけでもなく、別れを選択するカップルも少なくありません。そしていざ同棲を解消するとなると、購入した家具の分配とか飼っていたペットをどうするのかとか、色々と問題が噴出してくるのでは?
ここでのポイントは、二人の関係が内縁関係であったかそうでなかったか。内縁関係の有無で対応が大きく変わってきます。
同棲の解消に纏わる諸問題~内縁関係の場合~
内縁関係の場合は法律上の婚姻関係とほぼ同様の権利があるとされています。同居,扶養の義務,婚姻費用の分担が認められ,内縁関係を解消した場合は,財産分与や慰謝料請求も認められています。
なので、不貞行為により同棲を解消する場合には慰謝料請求ができたり、同棲時に購入した家具などの財物の交付を相手に請求した場合には、離婚時に適用される財産分与制度が適用されます。
※財産分与とは?
離婚をした者の一方が他方に対して財産の分与を請求することができる制度です。
財産分与は,(1)夫婦が共同生活を送る中で形成した財産の公平な分配,(2)離婚後の生活保障,(3)離婚の原因を作ったことへの損害賠償の性質があると解されており,特に(1)が基本であると考えられています。
参考:◆「財産分与」(法務省)
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00018.html
ペットはどちらが引き取るの?
ペットは法律上、物にあたるので財産分与の対象となります。同棲前からペットを飼っていた場合は、そのペットの購入者がペットを引き取る権利を有します。同棲後に購入した場合は共有財産になります。通常の共有財産は二人で分けることができますが、ペットの場合はそうはいかないですよね。分けることができない財産を分ける場合には、その財産を売りそのお金を1/2で分け合う方法や、一方が財産をそのままの形で引き取り、他方に同等の金銭やその他の財産を補てんする方法が用いられます。ペットの場合は2つ目の方法でしょう。引き取らない方の精神面を考慮し、一定のお金を払う場合もあります。
同棲の解消に纏わる諸問題~内縁関係でない場合~
内縁関係ではない場合は、原則同棲の解消により慰謝料請求などの問題は生じません。単に恋愛関係にあるだけで婚姻の意思なく同居していた場合には、10年同居していても慰謝料請求ができません。
また、財産分与の規定は適用されません。同棲時に購入した家具などの財物の割り振りは、リスト化しどちらが引き取るのか、その場合の金銭賠償などを書面にまとめて紛争を回避しておくとよいでしょう。ペットに関しても同様です。
終わりよければ全てよし!とまではいきませんが、物理上は後腐れ無くお別れして、新たなスタートを切りたいものです。
まぁ、ガラス玉も朝の光にかざせば、キラキラ光って素敵ですけどね。