自分にとって初の重力本『my blueberry nights』(以下:本作)をC103にて発行してから、およそ半年が経ちました。
物語の展開や描写など、本作は自分の中では結構気にいっている作品となりましたが、本作を書き上げられたのはこれまで自分が出会ってきた映画の存在によるものが大きいです。
学生時代から映画鑑賞に耽り、印象的に残った台詞や演出はいちいち映画を止めてメモし続けてきたのですが、地道にメモし続けてきた結果今はそこそこな量になりました。
そんなメモの中から色々見つつ、本作は17作品の映画の台詞や演出を参照しました。
今回は自分の記憶用メモとして、ここに残したいと思います。
※このnoteでは映画のネタバレを含みます。
01.『ビフォア・サンセット』(原題:Before Sunset)
本作の冒頭に、以下の文章があります。
こちらは『Say That You’re Mine』という曲のイントロ部分で流れる台詞なのですが、この台詞の元ネタは『ビフォア・サンセット』のワンシーンからきています(※参照部分…0:45〜)。
そしてこちらのセリフは、後々シドーの台詞として再び登場します。
漂流都市群ジルガ・パラ・ラオの中央港「マリニ・ポートゥラオ」、その物資搬入港にある巨大クレーンの真下のエリアで、猛暑の中ぼうっとベンチに座るキトゥンとシドーのワンシーンです。
一緒に過ごす時間が少なくなっていくうちに、クロウとの接し方が分からなくなってしまったキトゥンに、シドーは温くなったアイスコーヒーを啜りながら言葉をかけます。
ちなみに『Say That You’re Mine』は、本作最後にキトゥンとクロウがストロベリーパイとブルーベリーパイを一緒に食べるシーンに流れるイメージという意味合いでも参照しています。
02.『6才のボクが、大人になるまで』(原題:Boyhood)
『ルナティック・フォール』到達予定日まであと0日、夢魅の館の浸水対策を手伝っていたクロウに、アキがキトゥンについての話を聞きます。
『6才のボクが、大人になるまで』は実際に12年間にわたって撮影された映画で、主人公の男の子と姉が、母親の再婚なども経つつ思春期を過ごしていくという内容の物語です。
(結構うろ覚えですが)主人公の男の子は離婚した父親を慕っており、離婚した今でも時々会うという間柄。新しい父親をなかなか慕うことができず、母親に話の中で「家族なんだから分かってよ」的なことを言われます。
そこで男の子は「前も家族だった」といってその場を出ていきます。今回はこのシーンから参照しました。
映画自体は結構長いので、興味のある方は時間のある時に鑑賞するのをお勧めします。
03.『ぼくとアールと彼女のさよなら』(原題:Me and Earl and the Dying Girl)
これは本当になんでもないワンシーンなのですが、主人公グレッグがヒロインのレイチェルと雑談をしている中で彼女の父親の話になり、グレッグが「そのパパ返品した方がいい」という一言を吐きます。 クスッと笑えるようなシーンだった記憶があるので、クロウとアキの会話で似たような台詞で登場させました。
ちなみに『ぼくとアールと彼女のさよなら』は、主人公グレッグと友人アールがひたすら映画のパロディ制作に耽る高校生活を送っている中、ある日幼馴染である少女・レイチェルが白血病を患っていることを知らされ、そこから主人公はある行動に出る…といったあらすじです。
04.『ファイト・クラブ』(原題:Fight Club)
ブラッド・ピッドが出演している『ファイト・クラブ』の序盤、主人公である「僕」が末期がんのグループセラピーに参加するシーンがあります。
そこで「僕」は皆と一緒に涙を流し、「毎晩僕は死に、毎晩僕は生き返った」というナレーション(僕)が流れます。
本作では、ヘキサヴィルを襲った大災害から一年後、キトゥンが突然街に帰ってきた日のことを思い出すクロウの心情として登場させました。
『ファイト・クラブ』はサブリミナル効果が使われていたりと特徴的な映画で、考察するのが面白い映画でした。
05.『はじまりのうた』(原題:Begin Again)
『はじまりのうた』は、主人公のシンガーソングライターであるグレタと、彼女の歌声に目をつけた音楽プロデユーサーのダンが、なんやかんやあって自分たちで野外録音でアルバムを作ろうと、日々懸命に音楽制作にのめり込むといったお話です。
ある夜、グレタとダンは街中で一緒のイヤホンで音楽を聴きながら、「音楽のおかげで、平凡な風景も意味のあるものに変わる」といった話をします。
本作では、猛暑の中ぼうっとベンチに座るキトゥンとシドーの会話の中で登場させました。
ちなみに自分は同じ監督の作品である『シング・ストリート』という映画がお気に入りです。
06.『時計じかけのオレンジ』(原題:A Clockwork Orange)
キューブリック監督の非常に有名な映画です。
暴力や非行に明け暮れていた主人公・アレックスは、ある日殺人事件を起こして逮捕されてしまい、そこで刑期を短くするためにある療法の被験者になるよう頼まれるが…といったあらすじです(確か)。
本作では、キトゥンがまだ帰ってこない夜の土管の家の端で、ミルクを飲みながらある夜のことを思い出します。なかなか寝付けない夜、何気なく点けたブラウン管テレビではとても日中には流せないような暴力映画が流れていました。
※『時計じかけのオレンジ』は性暴力描写がいくつかあるので注意です(汗)
07.『ヘレディタリー/継承』(原題:Hereditary)、『ライトハウス』(原題:The Lighthouse)
両作品ともホラー映画です。
『ヘレディタリー/継承』では最後に家の庭にあるツリーハウスに上っていくシーン、『ライトハウス』では立ち入ることを許されなかった灯台の灯室に続く階段を上っていくシーンがあり、本作ではそれらをイメージとして参照しました。
ヘキサヴィルの大災害が起きて半年経ったある日の夜、失踪したアキを探すクロウが、夢魅の館で隠された空間の存在に気づきます。
『ライトハウス』は主演二人の狂演っぷりが凄まじく、個人的にも大好きな映画です。一部、衛生面で非常に汚い描写もあるのでそこは注意です。
『ヘレディタリー/継承』は最初に観たとき、怖すぎて夜寝られませんでした。実は家族愛に溢れた作品という見方も出来るのですが、それにしたって終盤のシーンが怖すぎ…。
08.『インセプション』(原題:Inception)
『TENET』や、最近だと『オッペンハイマー』を作ったクリストファー・ノーラン監督の作品です。
主人公・コブの夢の中でかつての妻を見るシーンがあるのですが、本作ではミザイの本の中でそのシーンを描きました。
ノーラン監督の作品はどれも迫力があって面白いので、興味がある方はぜひ。
09.『グッバイ、サマー』(原題:Microbe et Gasoil)
家でも学校でも悩める日々を送る14歳の主人公が、風変わりな転校生と友情を育み、自動車を自作して大冒険に繰り出す夏のお話。
本作では映画にも出てくる「死と無限」の描写等で、いくつかのシーンで登場させました。
10.『アフター・ヤン』(原題:After Yang)
個人的には、人生の中で恐らくずっと心に残り続ける美しい作品です。
あらすじは以下の通り。
作中、動かなくなってしまったヤンのメモリーバンクの中で、かつてヤンが一緒に過ごしたオリジナル(人間)のエイダという女性の映像が映し出されます。
本作では、キトゥンとクロウが撮影する6秒間の記録データを振り返るシーンで参考にしました。
映画でも非常に美しいシーンなので、興味があればぜひ一度観ることをお勧めしたい作品です。 ちなみに音楽は坂本龍一さんの作曲です。
11.『雨に唄えば』(原題:Singin’ in the Rain)
1952年のミュージカル映画で、きっと一度はこのタイトルを耳にしたことがあると思います。 本作では、キトゥンが入院中に見た夢の中のシーンで参照しました。
大雨の中で傘を持って踊るシーンは、名作映画のワンシーンとして世界的にも有名です。
12.『ニュー・シネマ・パラダイス』(原題:Nuovo Cinema Paradiso)
こちらも名作映画と言われている作品のひとつです。
舞台はローマのシチリア島の村。映画好きの少年・トトは映写技師のアルフレードと仲良くなりさらに映画の世界へのめり込む…といったお話です。
やがてトトが成長し兵役を終えて村に帰ってきたとき、村にはトトの知らない映写技師がいました。 アルフレードと再会したトトは、前途洋々な外の世界を知るために、これ以上村に留まらないよう忠告を受けます。
本作では、ミザイに国を出るよう言い放つリザのシーンで参照しました。
ちなみにエピローグである二週間後、寂れたラダレ来航記念公園施設内の避難所も、この映画の最後で閉館し取り壊される「パラダイス座」をイメージしています。
13.『青い、森』
実はそこまで好きというわけではない作品なのですが、本作を書くにあたって展開を結構参考にした映画です。
映画の中では失踪した主人公を二人の友人が探すのですが、主人公の家にはある隠された空間が存在することが映画後半で分かります。
本作では、失踪したアキを探すクロウが、夢魅の館の中に隠された空間が発見するシーンで参照しました。
本作でアキが語る「物事には全て裏側がある」という言葉は、映画でもひとつのキーワードとなっています。
14.『アステロイド・シティ』(原題:Asteroid City)
『アステロイド・シティ』ではいくつかの章に分けられていますが、章の始まりは毎回舞台のスクリプトの表紙が映し出されます。
本作では、最後の奥付のページを海外のスクリプトのようなイメージで作成しました。
15.『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(原題:My Blueberry Nights)
最後はウォン・カーウァイ監督作品『マイ・ブルーベリー・ナイツ』です。
本作では、キトゥンが毎週楽しみにしているオリジナルドラマとして登場させました。
以上、本作にて参考にした映画作品たちでした。
今後の映画鑑賞に少しでも役立てば幸いです。