印象派をめぐるノルマンディーの旅 ルアーブル編
ルーアンを後にした私は、TER(中距離列車)で約1時間30分ほどにあるルアーブルという港町を訪れました。モネが印象・日の出を書いた場所で、ノルマンディーらしい北の厳しい海を見ることができる街でした。
再建された町
ノルマンディーは、2回の世界大戦で戦地の中心となった場所であり、特に港町であるルアーブルは第二次世界大戦の際に町中が焼け野原になったそうです。そのため、戦後、急ピッチで再建が進められました。パリやルーアンを含む近郊の村では、中世や近世の建物が残っており、ノスタルジックな雰囲気が漂うのですが、ルアーブルは都市計画をもとに開発をされた場所なので、団地のような建物がきちんと区画化されて立ち並んでいます。
フランスにもこういう景色があるんだという驚きと共に、自分の視野の狭さに恥ずかしくなりました。第二次世界大戦を考えるとき、私はついつい太平洋戦争のことを思い返しますが、ヨーロッパももちろん戦地として大打撃を受けたんだということ。そして、ヨーロッパの都市といえば、中世から続く石畳の道に、特徴的な古い建物が立ち並ぶ印象があるけれど、日本と同じようにその景色を守ることが許されなかった場所があること。
ルアーブルは、町を歩きながらそんな歴史を感じさせられる不思議な場所でした。
その象徴となるのが、聖ヨセフ教会。
こちらは戦後に、ルアーブル再建を指揮したオーギュスト・ペレによってまず初めに作られた場所でした。他都市の教会とは違う新しい建物は、とても静かな場所でここにしかない異様な空気を感じました。
印象派だらけのマルロー美術館
ルアーブルにも海が見渡せる場所に美術館があります。ここはルーアン美術館とは違い新しく明るい雰囲気の美術館でやはりモネやルノワールをはじめとする印象派の絵画が数多く展示されていました。
人もあまりいないのでゆっくり見ることもできますし、モネの睡蓮の一つも収蔵されていました。
ルアーブルは、モネと同じ地に立ちたい、港町へ行ってみたいという安直な気持ちで訪れましたが思いがけず歴史に思いを馳せることになりました。