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9月4日外科医教授

痛みが消えた


 8月26日のヨード液を使った内視鏡検査後の2日間は、痛みが酷くてスイカ以外ほぼ何も食べられなかったせいで、体重は45㎏台に。
 ヤバい。食べないと本当にヤバいかも。
 と思っていたら、3日目から痛みがすーっと引いた。
 朝起きた時の感覚から違う。
 つばを飲み込んでも胸のあたりが痛くない。
 水を飲んでみても――痛みがない!
 え? じゃあご飯は? 
 白米を食べる――痛みはなかった。
 じゃあ、めっちゃ痛かったフルーツのプルーンは?
 いやいやいや、痛くない!
「痛くないー!まるで治ったみたい」
 小躍りしたくなるほど、何でも食べれる。本当に治ったんじゃない?と勘違いしてしまいそう。
 夫は「ヨード液が効いたとか?そんなはずない!」と首をかしげている。
 わたしと言えば、痛みというストレスなしで食べれることが嬉しくて次から次へと目に留まったものを食べまくる。
 そうしているうちに数日空っぽだった胃が悲鳴を上げた。
「加減しなさい」と、子供のように夫に窘められた。
 あんな激痛だったのが嘘のようだ。不思議なこともあるものだ。けれど忘れてはいけない。癌が消えたわけではないことを。

外科医と面会


 私がヨード液にやられて苦しんでいる間、北欧先生から連絡があり、がん専門病院の外科の教授に会うようにと夫に電話があった。
 いまや、夫はわたしの秘書のように面会のスケジュールを組んでいる。というのも、一緒に付いてきてくれるので、彼の仕事の空きに合わせる必要があるから。
 外科の教授に会わなくてはならない。――なぜ?
 フランスはグループで癌患者を診るらしく。日本も多分同じかな。
 グループの中にはそれぞれのスペシャリストがいる。
 わたし担当は、

  • ヒッピー先生=消化器内科医

  • 北欧先生=科学・放射専門医

  • 外科医教授

 まだ他にもいるかもしれないけれど、今のところこの3人しかしらない。メインで連絡をくれるのは、というか仕切っているのは北欧先生のようだ。
 つまり外科手術も考慮に入れて今後の方針を決めるために外科医に話を聴きに行けということらしい。

 外科医教授はフランスの中では食道全摘の大手術ができる2か所の病院のうちのひとつである、このがん専門病院の外科医教授。また、女医である。
 この女医さんは話し方も雰囲気もとてもエレガントでとても優しかった。しかし、お世話になりたくはない。
 選択肢は2つだけ、外科手術か科学放射線治療とまた同じ説明を受ける。
 わたしの場合T1N+M0だそうだ。これはTNM分類と言って、原発腫瘍の大きさ(T)、所属リンパ節転移(N)、遠隔転移(M)の三要素で病期を決定するもので、わたしの場合の「N+」とは、リンパの腫れが癌でない0なのか癌である1なのか不明だから。
 リンパの検査はリンパの中を見る必要があり、とても危険な検査なのでできないと言われた。ということで、この場合、リンパは黒だと想定で話が進んでいく。
 
 教授から丁寧にイラスト付きで食道全摘の外科手術の説明を受けた。
 食道全摘後は、上体を起こしてじゃないと寝れないとか、食事は少量を数回に分けてゆっくり噛んで食べなくてはダメだとか。しかし、将来的には健常時と変わらない量が食べれるようになると。
 それはないだろう――と、心の中だけで反論した。全摘された方のブログを読んだけれど、6年経っても食事をとるのは大変そうだし、水分を取るのでさえ苦労されている。
 とにかく、外科手術はしたくない。と何度も伝えておいた。
 残されたのは科学放射線治療のみ。
 外科医教授も外科手術は最終手段でいいと。(外科手術は嫌だって言ってもそれを言われた)
 まずは、科学放射線治療を試した方がいいと言ってくれた。
 癌自体は小さいので科学放射線治療で消える可能性もあると。
 消えた後5年以上再発しない人もいるし、再発したらその時また考えればいい。今はひとうひとつ潰していきましょうと。
 わたしも賛成! だったらもうやることはひとつ!
 科学放射線治療、さっさとやりましょうよ!と、言いかけたその時。
「とはいえ、最終決定はもちろんあなたなんだけど、その前にメンバーの意見を聞かないといけないから、次のミーティングが来週月曜日だから、それが終わるまで待ってね」と言われた。
 また待つの!? あと5日も? そんなことしているうちにリンパの癌が広がっちゃうかもしれないじゃない?

 外科教授は穏やかで余裕な感じだが、わたしは気が気じゃない。

 月曜の夜にミーティングだから、火曜日に連絡します。と言われ、診察終了。
 この「待ち」の時間がわたしの平常心を揺るがす。
 待ってるのってほんと、好きじゃない。
 そんなことを言っていても仕方ないので、気分を変えて癌細胞が活発に動きませんようにと願うしかない。

 しかし、本当にこんな悠長でいいの?

 自宅に戻り、意気消沈していたわたしの耳に夫の携帯音が鳴り響いた。部屋に流れているラジオの音を下げ耳を澄ます。
 北欧先生からだった。
 
 
 

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