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あの日から変わった言葉の意味 part1
「行ってきます」
「いってらっしゃい!気をつけてね!」
何気ない朝の会話
テンプレートなやりとりとして言い続けていた
「気をつけてね」
最近は本当の意味で「気を付けて欲しい、安全に帰ってきて欲しい」と願いながらかける言葉になった。
事故に遭って死んでしまうかもしれない。
という危険は誰にでも想像できる
でも実際に当事者になるまで
明日は我が身だった事に気付かない
だいたいの人はみんなそうなのだろう
私達もそうだった。
これは主人が日本に入国してから
10日目にあった事故のお話。
(少し長くなるので2部に分けようと思います)
主人の来日
2年前、主人より先に日本に帰国していた私は
彼が日本に引っ越してくるのを心待ちにしていた
物件を決め、1人で入居し、
家具や家電も1人で手配した。
大変だし少し心細かったが、
彼の初めての日本生活を少しでも快適なものに出来ればと、喜ぶ姿を想像しながらワクワク色々な準備を進めていた。色々な手続きは8ヶ月もかかった。
そして遂にビザの手続きも完了し、
ようやく入国の日取りが決まった。
せっかくなので、サプライズで旅行に連れて行こう!
そう思い立って、入国後初の日本旅行の計画を思いついた。久しぶりに主人に会えるので舞い上がっていた。
主人がずっと行きたがっていた
九州のとある島に連れて行こうと思い
旅行の手配も進めた。
その島に行ったことのある同僚からも現地の情報をリサーチし、素敵なコテージも予約した。
うん。完璧。
素敵なお家、と私達のテイストで揃えた家具、
彼が行きたかった島へシークレットアドベンチャー
喜ぶ顔を想像するだけで胸が躍った
そうこうしているとあっという間に
主人の入国日になり、新居に"お招き"した
彼の反応は想像通りだった。
「Facetimeで見るよりも、実際の方が何倍も素敵なお家だね〜!家具もすごくいい感じだね!!」
「これ、僕のお部屋?!どんなデスクを買おうかな〜」
スイスに住んでいた時は家賃がとても高かったので、個人の書斎がなかったのに対し、今回はそれぞれに自分の部屋もある。初めての書斎に彼も嬉しそうにテンションあげあげだった。
1週間は新居でゆっくりと過ごした。
日本で食べたかったものを一緒にたくさん食べて
8ヶ月会えなかった分、一緒に過ごす時間の幸せを噛み締めていた。
国内旅行に行こう
彼の入国から8日目の朝
私達は朝の5:30に家を出た
計画していたシークレットアドベンチャーに
出かけるためだ。
電車に乗り、駅弁を買って新幹線に乗る。
彼は自分がどこに連れて行かれるのか
まだ知らない。
新幹線のチケットの行き先を見て
もしかしてここ?あそこ?と質問攻めにしてくるが
着いてからのお楽しみだよ〜とはぐらかす
新幹線を降り、船に乗る
海のないスイス出身の彼は
流石に揺れるフェリーと海の景色には
テンションがあがっていた。
うん、いいね、期待通りの反応だよ。
船に揺られて約2時間弱。
長旅の末、ようやく念願の島に着いた。
ここはとても小さな島で、タクシーも島に3台ほどしかなく、バスは2時間に1本しか通っていない。
同僚からもレンタカーのレンタルを勧められていたので、さっそく島のレンタカー屋で車を借りた
そうせざるを得なかったとはいえ
ここで車を借りなければと今でも考えてしまう
旅先の事故
島に着いて3日目の夕方
ビーチでゆっくりしていた。
多分19:00くらいだったと思う
暗くなったしそろそろ帰ろうか、と車を走らせ
ビーチの駐車場出てすぐのカーブを曲がった時だった
目の前に急にヘッドライトが見えた
気がついた時には
ガソリンと煙の匂い、胸の痛み
目の前にフロントが潰れている車がもう一台。
ああ、事故か‥‥
どうやら正面衝突だったようだ
車から煙が出ているのが見えて我に返った
即座にシートベルトを外し、車外に飛び出した
助手席側のドアまで走ろうとしたが
主人も同じ考えだったのか車の後ろで合流した
何がどうなっているのかお互い分からず
パニックだったが、
お互いに血も出ておらず歩けていて
命があった事にホッとした。
そんな安堵も束の間、
反対車から子供の泣き声が聞こえた
助けないと!!
2人で走った。運転席でぐったりしているお母さんを
車から引っ張り出そうとしている男の子がいた
シートベルトが壊れていて外せなくなっていた
まずはこの子の安全を確保しないと。
白線の内側に立っていてね!と言い
安全なところまで連れて行き、
2人でお母さんを運転席から引きずり出す。
そこからはドラマを見ているような展開だった
島の不安定な電波で救急車が呼べない
通りがかりの人達が止まってくれて
電話を貸してくれた
その後沢山の通りがかった人達が助けてくれた
たまたま看護師さんがその中にいて
お母さんのケアもしてくれた
主人が胸の痛みをしきりに訴えていたけれど
血は出ていなかったのでエアーバッグの衝撃による打撲なのだろうと思っていた。
とにかくパニックだったが、
冷静になろうとアドレナリン全開で
自分の胸の痛みもほとんど感じていなかった。
その後4人とも病院に搬送され、検査を受けたが
幸いお母さんと子供は大きな怪我はなかった
私達もその日は、特に異常なしと言われ、
4人とも入院などなはく帰宅を言い渡される。
レンタカーを失った私たちは島のパトカーで
コテージまで送ってもらった
警察によると、
お互い廃車になる大事故だったらしい。
警察の方にも病院の方にも
命があって、大怪我もなく、奇跡だと言われた。
なんでこんな事になったのか
どうしても思い出せない
ただ、カーブにミラーがなく、
相手のヘッドライトも見えなかった。
急に目の前に車が現れた覚えしかない
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続きはpart.2へ
(明日公開します)
らべんだ