【公認/認定翻訳士】メキシコのPerito traductorとは?
この記事は、役所手続等でメキシコの公認/認定翻訳士による認定翻訳が必要になり、公認/認定翻訳士を探している方向けの生地です。
日本国籍保有者がメキシコで結婚をする場合や政府機関に日本で発行された書類を提出する場合は、日本で発行された書類に外務省からアポスティーユを受け、その書類に認定翻訳を添付する必要があります。
traducción certificada=認定翻訳(「公認翻訳」という呼び方もありますが、本記事では「認定翻訳」と呼びます。)を日本の戸籍謄本に添付して提出するという手続は、メキシコでは結婚の手続をするためという理由が一番多いと思われますが、認定翻訳が求めらるのは結婚の手続だけではありません。
日本の会社がメキシコに子会社設立をする場合、離婚手続をする場合、家族のビザを取得する場合、日本からの輸入手続をする場合、裁判等で日本で発行された書類を証拠として提出する場合などがあります。
では、認定翻訳の提出を求められたらどうすれば良いのでしょうか?
本記事では、認定翻訳とは?認定翻訳士(公認翻訳士)とは何なのかをグアナファト州の認定翻訳士であり、メキシコの現役法学部生である僕が解説致します。
認定翻訳とは?
認定翻訳とは、メキシコの公的機関等が外国でスペイン語以外で発行された書類をメキシコの法律上で認識するために、裁判所が認可した認定翻訳士(perito traductor)が外国語文書とスペイン語訳の間で記載内容に相違がないように翻訳し、その両言語間の互換性を認定したものです。
このように説明すると何だか難しく感じますが、より簡潔に説明すると、
外国語で発行した書類を公的機関に出す場合は、資格を持った人に訳してもらいましょう、ということです。
では、なぜわざわざ資格を持っている人に書類を外国語からスペイン語にしてもらう必要があるのでしょうか?
法手続/お役所手続上スペイン語以外は認めない
メキシコでは全ての手続がスペイン語で行われることが様々な法律で明記されています。
例えば、離婚や損害賠償などを解決するための民事裁判やその他の法手続について定める「Código Federal de Procedimientos Civiles(民事手続連邦法=民事訴訟法)の271条(CFPC, 2024)では、訴訟手続はスペイン語で記述し、外国語の書面はスペイン語に翻訳することが明記されています。
その他、「~法」に明記されていなくても、各お役所機関の仕事の進め方について定めるreglamento(規則)や、お役所機関の手続運用について定めるacuerdo(合意書)に「この手続で外国語の文書を提出する場合は、認定翻訳を付けること」と定められていることがほとんどです。
この「外国語文書はスペイン語に翻訳しなさい」という指示と一緒に「スペイン語への翻訳は認定翻訳士による認定翻訳であること」という指示もセットにされていることが多いです。
たまに外国語文書でも「単純翻訳(traducción simple=誰が翻訳しても良い)でも良い」とされているときもあります。
このようにメキシコの公的機関は、スペイン語でしか手続をしないようになっています。
では、この認定翻訳ができる認定翻訳士(perito traductor)とは何なのでしょうか?
元々は裁判の「鑑定人」
perito traductorは、そもそもperitoと呼ばれる職業というか国から認められた資格保有者の一種で、
peritoを日本語に訳すと「鑑定人」となります。
刑事ドラマなどで、裁判で司法解剖をする医師だったり、筆跡鑑定などの専門的視点から証拠について鑑定をする人を鑑定人と呼びますが、この鑑定人をメキシコのスペイン語で「perito」と呼びます。
メキシコの裁判所法(「Ley Orgánica del Poder Judicial de la Federación=連邦司法権組織法」)では、101条(Ley Orgánica del Poder Judicial de la Federación)連邦裁判所諮問委員会(Consejo de la Judicatura Federal)の司法鑑定人部は、鑑定人を任命し裁判の補助をさせる、としています。
またその86条のXIX号で、鑑定人のリストを毎年作成するとしています。
この規定は連邦管轄の裁判所の規定ですが、ほぼ同じような規定が各州の裁判所法に存在しています。
従って、鑑定人の一つである認定翻訳士はその資格を各州の裁判所、裁判所諮問機関、州最高裁判所や連邦裁判所諮問委員会に認めてもらうことになります。
これら裁判所が裁判を進行する上で、先ほどの連邦民事訴訟法のように裁判はスペイン語で行わなければならないため、スペイン語を話せない人が裁判に出てきた場合には認定翻訳士の出番となります。
このperitoというのは鑑定人なので、何も翻訳だけのperitoが存在しているわけではありません。
検視に始まり、筆跡鑑定、公認会計、心理(精神)鑑定、測量や児童相談まであります。
裁判以外での活躍の場
お役所手続
上記までをまとめると認定翻訳士の仕事は法手続に用いる書類を翻訳し、原文と訳文の整合性を担保し、それを法的な事実であると認定すること言えそうです。
上記に書いた通り、法律が認定翻訳士の行った翻訳が裁判で使える程質的に正確であると認めているため、
認定翻訳は冒頭の通りお役所での手続でも求められることがあります。
いくつか例を見ていきましょう。
家族関係に関する手続
一番よく依頼があるのが外国人がメキシコで家族関係に関する手続をする場合です。
家族関係に関する手続で一番最初に思いつくのは、結婚、離婚に関する手続です。
僕にもメキシコで結婚する日本人の方からアポスティーユを受けた戸籍謄本の翻訳や、
メキシコ国籍の方と離婚をする日本人の方から同じく離婚手続(メキシコの場合は単純な離婚手続でも裁判が必要な場合がある)に使う戸籍謄本の認定翻訳の依頼がありました。
輸入手続
実際に受注した訳ではありませんが、
以前設備や製品などを輸入する際に、税関から製品の仕様などについての文書を提出するために認定翻訳が必要であるとの問い合わせがありました。
適用する関税措置や担当する税関職員により対応が違う可能性が大いにありますが、日本からメキシコに製品や設備を輸入する場合で、書類の原文が日本語の場合は認定翻訳が必要になる可能性があるということです。
移民手続
移民手続は、先ほどの家族関係の手続とほぼ一緒ですが、
メキシコでは、一人がメキシコの居住権を取得するとそれを理由に少なくとも配偶者、子供、両親のビザを「家族ビザ」として申請できるようになっています。
その場合には、最初にビザを申請した本人との家族関係を証明するために戸籍謄本の認定翻訳を求められます。
学校系手続
例えばメキシコに語学留学として語学学校に入る場合は必要がありませんが、
メキシコの教育カリキュラム(教育省が管轄するもの)内にある教育機関に進学する場合、revalidación de estudiosという手続で、日本で通っていた直前の在学や卒業、成績証明書を提出しなければなりません(州や教育機関によって提出書類が異なります)。
その際に、卒業証明書、在学証明書、成績証明書の認定翻訳の提出を求められる可能性があります。
ちなみに、僕は今グアナファト州の公立大学の法学部通信課程で勉強していますが、グアナファト州の場合、このrevalidación de estudiosに必要な書類は認定翻訳である必要はありませんでした。
ただし、グアナファト州であっても私立大学などで大学に手続をお願いしたり、
メキシコ国立自治大学の通信課程では日本の学歴証明書類には認定翻訳が必要であるようです。
当局監査用の書類(税務署=SATの実質的支配者(UBO=Ultimate Beneficial Owner)に関する監査)
最近多くなってきている依頼がこの「実質的支配者(UBO)」に関してSATに提出を求められうる書類の認定翻訳です。
実質的支配者とは、簡単に言うと、昨今の組織犯罪の増加に鑑みて資金洗浄や会社が生み出した収益が犯罪組織に流れないように、税務署(SAT)が会社から実質的に利益を得ている人は誰なのか?という点について企業に問い合わせられるようにしておき、企業もいつSATに聞かれても良いように実質的支配者の素性に関する書類を用意しておくというものです。
この実質的支配者の社内での運用方法の詳細については、KPMGさんやEYさん等がHPなどでまとめられています。
これに関して認定翻訳士としては、この実質的支配者(親会社の社長や場合によっては取締役)の戸籍謄本、本人の身分証、住所を証明する書類(住民票など)、実質的支配者の配偶者の身分証、会社の登記簿の日本語からスペイン語訳の依頼があります。
僕の場合、専門が法律系や管理部門の通訳翻訳なので、実質的支配者の書類の翻訳は得意分野となります。
まとめとサービス告知
今回はメキシコの認定翻訳制度について解説しました。
日本で発行した書類を裁判や役所手続のために提出する場合は認定翻訳が必要となり、これは認定翻訳士しかできない、ということだけを少なくとも覚えて本記事を読み終えてもらえればと思います。
また、ここより下は認定翻訳が必要な方向けの僕の認定翻訳のサービス紹介となります。
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