【前編】メキシコのNOM-035-STPS-2018とストレスチェック

メキシコではここ数年で職場のメンタルヘルスに関する関心が高まり、NOM‐035というものが導入されています。
メキシコで働いていると、会社の日本人の経営陣の方が人事やコンサル会社などから「NOM‐035を運用しないといけないと言われた」とか、残業をしたくなかったりする人や、被害妄想が強めの人なんかが「それはNOM-035に違反している!」ということを言います。

今回は、NOM-035とは何なのか?そして誰が何をしなければならないのか?ということについて解説していきたいと思います。

前半で「NOMとは何か?」について。後半でNOM-035について解説します。

また、解説にあたって、メキシコの法律やルールをそのまま解説してもメキシコの法律用語などが出てきて結局よくわからないまま終わってしまうので、
身近な日本の似たルールを探してきて比較しながら解説をしてなるべく易しく解説していきたいと思います。
さらに、日本のルールと比較するので、日本のルールについてはここで理解して日本で仕事で使うときに是非役立ててみてください。

まずNOMって何?

まずNOMって何なのか?ということですが、
NOMは、正式名称をNormas Oficiales Mexicanas(メキシコ公式規格)といいます。
また、何を決めるルールかというと、

商品やサービス、それを製造したり提供するための仕事のやり方のルール

です。

なぜこのようなルールを定めるかというと、日本の「JIS規格」と同じく、消費者や、製品やサービスを製造したり提供する人の健康や安全を守るためです。

NOMには様々な種類があり、NOM‐(数字)‐(メキシコの象徴を表すイニシャル)‐(公布年度)で構成されています。
NOM‐035を見てみましょう。NOM‐035の正式名称は;
「NOM-035-STPS-2018」
になります。

NOMは、メキシコの省庁(日本の厚生省にあたる労働省、財務省など)によって官報(Diario Oficial Mexicana=政府の新聞、お知らせサイト)で公布され、そこには、
「メキシコ公式規則 NOM-035-STPS(労働社会保険省)-2018(年度公布) 職場における心理社会的リスク要因の特定分析及び予防」
と記載されています。
このようにNOMの後に続く番号と文字列によりそのNOMが何を意味するのかが大体分かるようになっています。

また、「心理社会的リスク要因」という訳の分からない言葉を使っているので、これは後で解説します。

NOMって法律なの?

法律のようなものと理解して大丈夫です。
それは、NOMには法的拘束力、つまり守らないと何かしら国が違反者に対して対処ができる力があるからです。
厳密に言うと、「法令」の一つで、法律を運用するために省庁が出すことのできる命令(運用ルール)、もっと言うと省令のようなものです。

*省令:各省大臣が出す命令

※ここから少し細かい説明なので、面倒な方は次段落まで読み進めてください。
「法律」と「NOM」のもう一つの違いは、両者とも守らなければならないルールに間違いありませんが、
「法律」は、選挙で選ばれた国民の代表が集う国会(三権分立の内の「立法」)が作ったルール(厳密にはメキシコの場合、法律は上院/下院を通過して大統領が承認する)。「NOM」は、(メキシコの場合)国民が選んだ大統領(三権分立の内の「行政」)が選ぶ大臣(財務大臣など)が出すことができるルールです。

そのため、NOMを公布する官報を見ると、冒頭部分に大臣の名前が出てきます。

時々、「NOMと法律はどっちが上なのか?」という質問があります。
結論として、法律が上で、これは法律は憲法に反するものを作ることができず、各省庁(大臣)は法律で決められた範疇で仕事をしなければならず、その範囲外で省令(NOM)を出すことが許されないからです。

NOMって誰が守らなければならないの?

NOMを守るのは、物を作る人、売る人、人を働かせる人(会社)です。
これは、NOMがそもそも、商品、サービス、輸入品、これらを行うための生産工程等で守るべきルールを定めているからです。
そうすると、もう少しNOMを守るべき人を特定する言葉をフォーマルな言葉にすると、
NOMを守るべきなのは、
製造者
設計者
輸入者
事業主等
となります。

そのため、スーパーの食品売り場に行くと加工品のパッケージには「NOM」という表記と共に、「exceso de sodio(塩分過多)」などの表記がされています。
次回解説するNOM-035は、事業主が守るNOMであることが分かります。

NOMを守らないとどうなるの?

基本的には罰金が課せられます。
もしかしたらNOMの中には重大な違反がある場合操業停止などの重い処分が課せられる可能性もあるかもしれません。
罰金等は、担当する各省庁が調査をして違反があった場合に課せられます。

前編まとめ

NOM-035の解説にあたって前編ではNOMそのものについて解説しました。
とりあえず、今回の内容が理解できればNOM-035の次回内容も難なく理解できると思います。


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