2020.3.5 全てはグルーヴなのか!?
観に行く予定だった公演が中止になった劇団コンプソンズの、過去作#5『ぶっ飛ぶ夢をしばらく見ない』をYouTubeで見た。
中止公演の予約者特典だったようで、中止を知らせるメールにURLが貼ってあった。
(これはこれから見るやつ)
前情報一切なく予約した劇団だったので、こんな形で見ることになるのは心苦しいのだけど、面白かった。高校時代の遺恨が残る男女が、ゲイバーで再会する。客とママの形で。二人の同級生、恋人、偽テレビマン、盲目の絵本作家、記憶喪失者、死者、キャッチ。クセが強く、何かを隠しあうバーの常連人たちは、最終的に自分の真実を話すとポイントがもらえるゲームの中で真実を告白する。でも、その秘密の内容が下らない。
大柄なストーカーを演じていた方は、東京塩麹の制作の方だと知る。『Factory』のリリースから知っていたバンドで、ライブも何度か観に行ったけどしばらく忘れていた。いま、これを書きながら、今年になって配信されたライブ音源を聴いている。音が反復されながら、アドリブ性はうかがえないキチっとした心地よさ。「誰も見ていない真っ暗なところ」のホーン帯の気持ちよさを感じながら、このままタイプしていく。今週の土曜日(3月7日)19:00~19:45にYouTubeライブを配信するみたいだ。
コンプソンズと東京塩麹の間は、青葉市子を聴いていた。今月のユリイカを買ったのだ。
ユリイカを買うなんて初めてかもしれない。ceroのときもビリー・アイリッシュものときも、欲しいなあと思ったきりだったから、今回は見かけた帰り道に思い切った。
さっきのコンプソンズでも、ちょうどユリイカを揶揄したギャグがあった……「ポレポレ、ユリイカ、○○○○!」みたいな。サブカルの呼吸で3コンボだ。
ギャグは「そこは問題無しのつぶて。ツブツブツブツブ……草間彌生!?」が一番面白かった。どんな芝居だよ。
何かを特集する雑誌にはもともと馴染みが薄い。ラーメン屋を100軒並べられたところで実際に足を運ぶ店を決めようとは思えないし、名作映画だって多少の前知識がないとどれから見ればいいかさっぱり分からない。「これさえ読めばテーマについて丸わかりですぜ、旦那」てな具合で雑誌が並ぶ平積みコーナーは自然とさけてきたのかもしれに。初めは、1冊読んでわかるわけないだろう、的なツッコミを入れていたけど、立ち読みの習慣も持たないうちに、気付けば雑誌1冊を読んで何かを知ろうとする好奇心自体が失われていることに気付いた。大変な事件である。
「私が20歳だったころ」のような特集(おそらくBRUTUSだったような)で、菊地成孔が「サックスの練習さぼってセックスばっかしてたんで僕の二十歳なんてあてになんないスよ(笑)」なんて下らない話していた雑誌(それも別に買っちゃいない)が最後だとしたらどれは誰のせいだ。
とにかく、ユリイカ面白い。
近藤聡乃先生の漫画が掲載されているなんて。
まだ半分も読み切れていないけど、同業者に加えて小説家や写真家や文学者が、青葉市子という不思議な存在を、言葉を駆使して不思議なままに、パーソナル描写をたくさんの思い出とともに振り返っていく構成がすごくよくて感心してしまった。
「最初に少し弁解させてほしい」なんていかにもな言葉から始まる、ポーランド人ドラマーAlbert Karchの文章も最高。
気になり続けていた青葉市子と仕事をすることになった興奮を綴った日記の一部を自ら抜粋している部分なんかとくに。
ぼくの人生なんて、しょせんは子供の遊び。真剣に考えてもしょうがないだろう?ぼくはここにいて、空気を動かし、ありもしないもののあいだに繋がりを見つけたり、架空の何かをつくりあげて、それを楽しんだり、歌ったり、演奏したりしている。そういうのを真剣に考えてどうする?いや、考えなくちゃいけない。だって、それは”美”なんだから。その美しさに真剣に向き合ってこそ、感謝と思いやりに満ちた笑顔で世界や自分自身を見つめることができるんだ。真剣に向き合う対象を間違えてしまうこともあるけど、そういうときは少しも笑顔になれない。
自分の内面がそのまま外界に接続されている意識は、なんとなくだけど、欧米人の特権のような気がしていた時期がある。
青葉市子の10年にわたる作品群(とくにアルバム単位で見たとき)の変遷も、内面から外の風景へ意識がうつろぐ形跡のようだ。学校帰りにTSUTAYAで『0』を借りたのが6年間くらいだから、自分が聴いてきた音楽、歌詞についてどんなことが描いてあるか、この先を読むのも楽しみだけど、今日はもう帰る。
ライブアルバムは、東京塩麹にのせて荘子itがラップを始めた。
https://music.apple.com/jp/album/tokio-live-at-velvetsun-tokyo-2019/1495301218?i=1495301511
「接触と分離の反復で気持ちよくなる快感」をまさに感じている。ユリイカに寄稿する伏見さんが持ってきた言葉だ。東京塩麹の音楽。バンドとMC、音源と僕、僕の指とキーボード。この世の全てはグルーヴってことですか、谷王。
あ、block.fmでDOS MONOSがやってる番組に菊地成孔出ていたそういえば。アーカイブいつまで残ってんだろう。
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