困ったときは、今も昔も。
オレが闇を覗き見たのは、これで三回目になる。
一回目は、いつもつるんでた仲間が突然いなくなったとき。
二回目は、うまく生きられない自分を終わらせようとしたとき。
そして、今日。三度目の闇を覗いている。
相変わらず暗く、黒く、そこにあるのが闇だとは分からずに見入ってしまうから取り込まれても気が付かないのだろう。寄り添っているなんていうのは、それを直視したことの無い、それもこれからも交わることの無いセーフティーゾーンから出ない「賢い」やつらの物言いだ。
そんなやつらはその恐ろしさを実しやかに並べ、自分が主人公だとばかりに話す。柵の近くを歩いたことも無いのに、森の狼の恐ろしさを皆に伝える。
田舎の、それもこんな森の中で闇が口を開けている。
田舎で育つと、それがこの世の全てだと錯覚する。周りもそれを押し付けて生きているから、その気色の悪い幸せは腐ることはないようだ。
信仰を嫌うわけではない。好きにすればいいし、好きに祭ればいい。
でも、人のキズを平たく縫い合わせるのはやめてくれ。
納得いくまで調べもせずに、世間に向ける「にこやか」な顔を一日も早く取り戻すために協力するのはやめてくれ。どこの誰かも知らない近所の婆が作った料理を美味そうに食って、餌付けするな。
「死ぬ気でがんばれよ」。
柵の外ばかり見てるオレに、いつだったかそんな風に顔をしかめたやつらがいたな。そいつらは喜びもしないだろう。これから願いが叶うのに。
――呼吸をした。
そんな異常な集団が、丁寧に形を残してきたおかげで「闇」はここに現存している。触らないということが成した奇跡だろう。
一回目で、これから出来るかもしれない仲間は捨てた。
二回目で、好きでもないことをする自分を捨てた。
三度目。
「三度目の正直」とも、「二度あることは」なんてことも言うから、三度目は特別な気がする。
そして、もちろん勝算はある。そのために費やしてきた体だ。
口を開けたまま、闇はアホ面で待っている。
オレは闇に飛び込んだ。
無料でくれてやる訳じゃない。
あいつを取り戻すんだ。