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季節外れの焼き芋探して

 思い入れの無い街に、想い出がある。厄介なことに、楽しい想い出だ。
 学生時代にあんなに勉強したこと(それほど勤勉ではないが)は使わない物からどんどん忘れていく。国語辞典みたいな薄い紙の分厚い本の中に隠れてしまって、もうどのページにあるのか探す気にもならないことだらけだ。
 一方の想い出の方はというと、そんなことはなく何十年も跨ってさえいない自転車に乗れるから不思議である。気になるのは、自分の身体のサイズと重さ、あとは可動しなくなった関節に戸惑ってしまうということくらいだ。
 
 バラバラになってしまった仲間たち。もうどこにいったか分からないボードゲームのコマたち。最近、それらを探す気なってきている。
 実際にリアルで連絡をとりたいなんてそんな野暮なことではなく、もう一度思い出したい。それだけだ。
 あの日、財宝を宝箱に入れたのか、それとも落ち葉の下にさつまいもを隠しただけだったのか。それを確かめてみたい。

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雨音ムッツ
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