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いつもの席で、いつも二人で。

「優しさにすら傷付くような弱い人間だから」そう言ってから、彼女は美味しそうに注文したパスタを食べはじめた。
そんなことを自ら口にするような人は本当に弱いのか、と頭をよぎった。
でも弱っている可能性はあるか、と思い直して「そうなんだ」といつもの相槌をかえした。
彼女は時々、こんな風にボクを食事に誘って、いや、ボクを食事に誘ってではない。彼女の食事にボクを誘う。
そんな彼女を、頭ごなしに否定できないボクはお人好しかもしれない。

今日の彼女はどっちだろう。
飲み物しか頼んでいない友達の横で、遠慮無しに好きなものに食らいつくハツラツとした女。

もう一つは、涙ぐむ女。
自分の気持ちに虚勢と予防線を張るように、距離をはかる。なにかを恐れているような顔をしている。

どちらも好きだが、いや、片思いするなら前者がいい。でも、相談相手にはなりたくない。
食事を終えた彼女が、カリっと音を立てて氷を噛んだ。
ちらっと、こちらを見る目が笑っている。

いまがこんなに幸せだと、ボクは幸せに憶病になる。




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雨音ムッツ
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