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シンクロニシティ
100円で買ったハンガーが濡れた洗濯物で曲がるくらい当たり前のことなのに、ショックを受ける。ついつい調子よくしゃべっていると軽口を言ってしまい、あとから「不快にさせただろうな」と後悔してしまう。
そんな癖があることは重々承知で、後悔と共に改めなければと思うのだがうまくいかなかった。今まで、そのせいで相手との関係が悪くなったことはないのだけれど、確実に一言多かったなと自己嫌悪する。言動が漏れる自分にガッカリする。なんて、不満の多い人間なんだと。
にこやかに毎日を過ごし、その中で悪いことが起きてしまうのが不運なことなのだと受け止められないのかもしれない。いつか終わる日まで流れていくのが普通なのだからと、割り切れないようになってしまったようだ。
原因は、疲れていたからだろうか。そういう時に多い気がする。
そんなに悩むほどの無いことなのだろうか。
トラブルがあったわけでもないのに、忘れてしまえばいい。
そんなことより大事なことはいくらでもある。
そんな自分を受け入れてくれる人だけと過ごせばいい。
色々と頭に思い浮かべてみても、どれも言い訳じみた感じがしてしまうから、気持ちが晴れなかった。頭と、それから心の隅の方に黒い粘液が溜まってい行くような気持ちの悪い熱がどこかに感じる。
でも、こんなことに時間を使いたくないと言っている声も同時に巡っているから、気持ちの変わることをしようとキッチンに向かう。
手を動かしたい。
作りなれたカレーを作るために野菜を切る。ニンジンとジャガイモの皮を剥き食べやすく切る。玉ねぎはできる範囲で薄く、そして自分なりに手早く切ることに集中して。あとは、特別なことはしない。カレールーの箱に書いてある通りに料理する。別に美味しいレシピを開発したい訳ではないし、今は失敗はしたくない。
コンロが一口空いているので、ついでにゆで卵も作る。つるっと殻が向けるゆで卵を想像しながら鍋にお湯を沸かす。前にゆで卵を作ったときは、上手く皮がむけずボコボコになってしまったから、その後に調べたこと実践してみる。
ゆで卵が今週もうまく作れなかった。
そんな、さらなるショックを感じながら茹で卵の殻をむいていた。
BGMに流していたラジオ番組から聞こえるのは、しきりに「人生は偶然だ」というテーマで語る知らない心理学者の女性だった。
何故だか、自分に言われているような気がして、すこし楽になった。
曲がったハンガーにかかる洗濯物も昼寝しているうちに乾いてしまうか。
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