見出し画像

「なあ、ヤブカラボウって知ってるか?」

「なあ、ヤブカラボウって知ってるか?」

眉ををあげて、ニワトリが答える。
「いまのお前みたいに、突然なんかやってくる奴に使う言葉だよ」
「じゃあ、オレはいまヤブカラボウになったのか?」
そう自問するウサギは、悩むように腕を組む。

「いやいや」と、ニワトリは手を振る。
「お前がなったとかじゃなくて、藪の中から急に棒が出てくるみたいに突然でビックリしたときに使う、ことわざ? みたいな言い回しだよ」
「ふーん」と、ウサギはまだ納得していないようだ。

「じゃあさ、その薮の中にいるのがヤブカラボウってことか?」

「なんだよさっきから。べつに薮の中にだれかいるとかじゃないから」

「いや、急に棒が出てきたんなら絶対いるだろ、藪の中にヤブカラボウがさ。ほかに誰が出したんだよ」

「いや、そういうんじゃないんだって。いないから。この世にヤブカラボウなんて奴は」
「ほんとに?」と、ウサギは諭すように手を広げてみせる。

「いや、いないと思うぜ。べつに調べたわけじゃないけど・・・・・・。え?いないよな?」
自信なく答えるニワトリに否定も肯定もしないウサギは、無言のまま目を見開いて首を縦に振ってみせる。
それを見たニワトリの声は大きくなる。
「あ、あれなら知ってるよ、ドロタボウ。泥田坊って妖怪がいるんだってさ。そいつの仲間かなんかにいるかもな、ヤブカラボウ」
それを聞いてウサギは、満足げに拍手をした。

「おめでとう。ついに知ったな、ヤブカラボウを」

頂いたサポートは、知識の広げるために使わせてもらいます。是非、サポートよろしくお願いします。