マガジンのカバー画像

ポエム・エッセイ

266
ポエムのまとめです。わたしの頭の中は、こんな感じです。
運営しているクリエイター

2023年10月の記事一覧

互いに多忙期。

10月が飛び去っていく。 夕食の献立をあたたかい物から考えるようになった。 肉まんをチンしたあとの湯気の匂いと、敷き紙にくっついた生地を思い浮かべるようになった。 鍋が欲しくなった。三人前くらい入る大きさの、あまり重く無いものが好ましい。 もう冬タイヤに交換する日を、との日曜日にしようかと思った。 今年は多いだろうか。 早いだろうか。 冬用の長靴は靴箱にあっただろうか。 グレーの空で今、雪を作っている。 朝露を尖らせて、削り節を貯めるように雪を作っている。 そのうち緑

ぬるい温泉に、夏に入りたい。

いつまでも満足できない性分なのだとしたら、どうしよう。そう悩んだこともあったが、今はべつの可能性を考えている。 飽き性であるが故に、情熱的になれる人に憧れる。かしこく世間を泳ぐ人に魅力を感じる。そんな自分が嫌いではなかった。 多分、幸せに満足しやすいのだ。 浅瀬のようなプールで泳いでも幸せなんだなと思えるのだろう。 ただ、その満足感にすぐ飽きるから、もっと、もっとと貪欲になれる人の真似をしてみたいのだ。 自己肯定感などという、何処から出てきたか分からない言葉に惑わされている

箱入り息子。

わたしは「箱」。あなたの思い通りに詰め込まれてきた。 これが常識だからと、あなたの納める世界の普通をわたしに教え込んだ。 こうするのが普通だからと、常識という物差しの使い方を体験させた。 わたしには怒りに思える感情を、愛情だというらしい。 わたしには不自由に思えることが、自由にさせていることらしい。 そんなあなたに従ってみた。 わたしには、比べるものが無かったから。 わたしの世界は、あなたの納める世界の中にあると思っていたから。 そんなあなたに従っていた。 涙はこぼれたけど、

咲いた人、ありがとう。

格好がいい華がひとつ。 誰にとってもじゃない。 我にとっては。 おやすみなさい。 貴方の色は、淡く、遠くなっても。 華がひとつ、休みに入りました。

知っててやるのが至福のとき。

アイスコーヒーからホットコーヒーに変えた朝に差し込む日差しは明るかった。 半分開けたカーテンから見えるアパートの外は静だ。ときどき吹く風が音を立てるけど家族連れは外出したのだろう、駐車場の車は少なかった。 空に浮かぶ雲が見える。 あそこに手を突っ込んだら温かいんだろうなと思うと、すこし右手が高揚した気がする。 ホットコーヒーの湯気は見えない。 わたしは大体の見当をつけて、鼻先をそこに突っ込む。 コーヒーのにおいは、美味しい。 そしてまた、毛布に包まった。

そのボタンの押し方は、十人十色。

僅かな紅葉と突き抜ける青空と。 「乾燥に注意」と、匂いがすきなハンドクリームを塗るのが楽しい日。肌寒さには抵抗しつつ、上着を羽織る程度にした。 朝から仕事終わりの予定を薄っすら浮かべながら車のドアに手を伸ばすと、バチンッ、と静電気が走る。 痛い。 理想の体質ってなんだよ。 電気を出せる身体ってカッコイイと思ってたのに。 ハンターハンターのキルア? NARUTOのサスケ? いやいや。 GetBackersの銀次が好きだった。 懐かしい漫画が読みたい時がある。 記憶のスイッチ

黒夢が聞きたい日。

今週は少し長く感じた一週間だった。 週末は好きなことをして過ごしたい。やることやって出かけようと思うけど、天気はどうだろうか。 こんな風に週末の過ごし方を遠慮がちに考えて、その中から負担の少ない楽しみ方をするなんて年寄りになった気がして、なんだかな。 後先考えない、なんて事すら考える前に歩き出していたのに。 ポケットに、財布と煙草と100ライター。あとは好きな音楽の中から気分にピッタリくる曲を探すのだけに頭を使って、それから景色の流れる車窓から目的地のイメージをして。 行き

#推し短歌「同級生」

楽しい記憶を思い出して、ふと思う。 大抵のことは偶然なんだなと。 初恋の人と同じ年代に生まれて良かったし、友達と同じ地域に住んでたことに、なんて自分はラッキーなんだと思う。そんな短歌です。 曖昧に 笑顔の記憶 放っておく 偶然のまま 偶然のまま

切れ目がわからない

忘れていた棘がさわる 恥ずかしい記憶 何のために覚えているのか 意味があるのだろう うとうと 船を出す 窓の陽はまだ暖かい

#推し短歌 「寝る前の妄想」

妄想しながら眠るのが好きです。 とても無防備で不思議な行為だなと、つくづく想う。 そんな気持ちで書いた短歌です。 夢と月 暗き世界か海底か 手すり無き日の 魅惑とは毒 真っ暗なところを覗くときには、必ず手すりがあるかを確認しないといけないといけない。そうしないと惹き込まれる。 ブラックホールの可能性はあってもサンタクロースを見たい気持ちに勝てないから、常に現実に片手がさわっているのを確認する。 これがわたしが精神的に参ったときに学んだ教訓です。

刈り取り済み。

ツー、ツッ、ツー。 まだ暑い空気の中を番いのトンボが飛んでいた。稲刈りの終わった田んぼの上で休む場所を探すのは愚かな行為だと知らずに、繋がったままホバリングしている。 だけど次の瞬間には、情熱的と呼んでいいのかわからないままの格好でガマに食われた。 トンボの汗をかく暇もないほどの生涯に、愛はあるのか。 愛が足りなかったのか。 足りれば伝わるのか。 受け取る気のない者にも伝わるのだろうか。 それは本当に愛なのだろうか。 いつから愛があると思ったのだ。 憎たらしい顔のガマガエ

#推し短歌 鬼ごっこ

小さい頃は学校の休み時間でも放課後でも、なぜだか暇さえあれば「鬼ごっこ」をしていた気がする。 鬼渡し 帳の中で駆けて跳ね 弱きも強きも 無病息災 誰が決めたわけでもなく、その時々で一定の範囲で追いかけ廻っていた。 鬼ごっこのときは、運動が得意なヤツも足が遅いヤツもあまり気にしないで遊んでいた気がする。鬼ごっこもいろんな種類があるから、鬼の数を増やしたりして。 転んで膝から血が出ても帰りたくなくて我慢して、何をあんなに毎日やっていたのか。でも、楽しかったな。そんなイメージで

#推し短歌 「風呂場」

これは自分の体験です。 子供の頃は耳が悪かったので、人より音が聞こえずらかった。 手術後に家のお風呂に入ったとき、音が反響するのをはじめて体験したのを30年以上たってもハッキリ覚えています。 その日を思い出して書いた短歌です。 反射する 音のふくらみ 感じたい 拍手を送る 凄い凄いと もしかしたら人生で初めて感動した瞬間だったのかもしれません。 手をたたく音が響くと、嬉しいのと面白いのを同時に感じ、何度も繰り返していた。 お湯に濡れた拍手と渇いた手の拍手。違いがあるのが不

#推し短歌「THE YELLOW MONKEY」

推し短歌を皆さんつくっているようなので、わたしも今日から作ってみようかなと思います。 今回は学生時代から好きな「THE YELLOW MONKEY」について。 かすれゆく 人魚が運んだ 憧れと ロビン・フッドの歩いたあとに 吉井和哉さんの口笛を吹きながら草原を歩く少年のような歌詞の世界が好きです。流れていく世界を今日も愉しませてくれる。 かと思うと、変わらない色気のある声で欲望まみれの歌を歌うときもある。 そんなイメージで書きました。 学生時代に、わたしが初めて自分のお