婦人画報「変わるもの、変わらないもの」を読んで(2021年3月号「宝塚トップスターの軌跡 珠城りょうさん(月組)」)

「やっと会えたのに、さよならだなんて」で始まるリード文がもう泣かせる。コンスタントに珠城さんにインタビューを重ねてきたライター・矢口由紀子さんのテキストは、とても読み応えがあり、愛に満ちたものだった。
昨年末の大劇場公演での初日ご挨拶。「ちょっと聖母みたいな顔をして」という表現が、珠城さんらしい凛とした言葉で気持ちを伝えてくれたあの光景をよみがえらせてくれる。
退団発表のタイミングについては、本当にあの時しかなかったなあという絶妙なものであり、今回の記事で発表後の気持ちを少し知ることができた。トップに就任してからの重責については、「私を信じて一緒に闘ってくれる人たちがいる。そういうふうに感じられる瞬間を何度も経験できた。それは宝塚でしか得られない宝物の時間」と。退団発表後、何回か聞いたり読んだりしている“一緒に闘って”という言葉に背負ってきたものの大きさ、着ていた鎧の重さを感じる。最近はそれをおろすことができたのか、やわらかくておだやかな表情が見て取れて、こちらもほっと和やかな気持ちになる。珠城さんが幸せなら我々も幸せ。
過去の記事を振り返るくだりでは、出演作品や役についての思いにブレがないことを語り、『月雲の皇子』の存在の大きさをあらためて。そして、『赤と黒』『BADDY』という新旧の名作の名前もあがる。役との巡り合わせもきっと役者の力量だと思う。魅力的な脚本、魅力的な役をさらに魅力的な“人物”へと変換する珠城さんの芝居が大好きだ。そして、役ごとの振れ幅の広さも。
この記事、写真(撮影場所やポージングも含めて)がまた秀逸で、たった4カットの新撮画像が今の「珠城りょう」をあますところなく伝えている。性別を超えた色香、素顔の美しさ、ハットや立ち姿といった男役としての成熟。ドキドキが止まらない。これからも何度も繰り返し読みなおす記事のひとつになった。

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