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ハイパーインフレによるジンバブエドルの廃止と復活


ジンバブエは南部アフリカにある内陸国です。首都はハラレで人口は1,500万人。暑いイメージのあるアフリカ諸国の中にあって、ジンバブエは標高の高い高原に位置しています。国土の大半はサバンナで構成されており、ザンビア川やリムポポ川などの主要河川があり、豊かな自然環境を誇ります。

温暖な気候で農業や興業が盛んでしたが、植民地時代を経て独立を前後した内戦があり、大きな経済成長は望めない中、2000年代に深刻はハイパーインフレを経験します。当然ですが、経済は大きく落ち込み近年に至るまでその影響を払拭しているとは言えない状況です。

ここでは、ジンバブエの通貨であるジンバブエドルの変遷についてご紹介していきます。

●ジンバブエドルの変遷


ジンバブエドルの変遷を独立後より見ていきます。

●●1980年:ジンバブエが独立し、ジンバブエドルを導入

民主的な議院内閣制となりましたが、1987年に大統領制に移行。初代首相だったムガベ氏が大統領に就任し、2017年まで強権政治を行うことになります。一方で旧宗主国の英国の援助もあり、元々盛んだった農業や鉱業によってしっかりとした経済成長を遂げた時期です。

●●1990年代:軍事介入と経済の悪化

順調な経済成長を遂げたていた90年代。一方で強権政治による軍備も増強されます。そのような中で起こった99年の第二次コンゴ戦争に介入。90年代に入って、経済成長に陰りを見せたジンバブエ経済の起死回生策として、コンゴの地下資源を狙っての介入だったのです。

コンゴへの派兵は混乱を招き、ジンバブエの経済や医療・教育はどんどん悪化、インフレが進んでいきます。

●●2000年代:経済の急速な悪化によるハイパーインフレの発生

2000年代に入って経済の急速な悪化を打開するために起こしたのが、強権政治による白人が所有する農地の強制収容です。黒人に農地を再分配するための措置だったのですが、うまくいっていた白人と黒人の融和がこの政策によって破綻します。

これによって、白人地主がモテいた高い農業技術が失われるという大失態となったのです。結果として食糧危機を招き、世界最悪とも言えるジンバブエドルのハイパーインフレーションが発生しました。

元々、脆弱であった経済基盤に経済を支えていた白人の離反、長期政権による不満と治安の悪化。全てが悪い方向に向かったうえでのハイパーインフレです。

さらに2008年にはこれらの大流行が起こります。2009年にはいよいよジンバブエドルが廃止となり、米ドルと南アフリカランドが事実上の通貨となったのです。

●●2010年代:長年続いたムガベ政権の終焉とジンバブエドルの復活

ハイパーインフレとジンバブエドルの廃止という事態になっても、ムガベ政権が揺らぐことはありませんでした。それは、元々軍事政権であり、軍部を把握していたことによる安定政権だったのです。しかし、2017年にはついに国防軍による軍事クーデターが勃発。ムガベ氏は政権を追われることとなりました。

●現在のジンバブエドル


英国や米国、南アフリカの援助などによって、2019年に暫定的な通貨ですが、RTGSドルが導入されます。2009年にジンバブエドルが廃止され、ジンバブエ国内には米ドルや南アフリカランドをはじめとした外国通貨が幅を利かしていましたが、RTGSドルの導入によって、ジンバブエ中央銀行はこれを唯一の法定通貨として定めます。

これによって、国内で外貨を法貨として使用することが禁止されたのです。一方で、RTGS通貨も大規模なインフレーションを引き起こすことになります。RTGSドルに信用がなかったことが要因なのですが、深刻な紙幣不足もインフレに拍車をかけてしまいました。

そこで、暫定的ではありましたが米ドルの使用が認められることになります。しかし、実態はRTGSドルのままであり、呼び名を変えてジンバブエドルを復活させたということになります。

依然としてジンバブエの法定通貨といった位置づけになっていますが、ジンバブエは常にインフレ状態であり、他の通貨の使用は禁じられていながら、米ドルが幅を効かせており、ユーロや英ポンド、南アフリカランドも流通、さらには中国元や日本円なども流通しているという、いまだに落ち着きを見せないジンバブエ経済となっているのです。

しかし、一方で、世界最悪のハイパーインフレーションとなったジンバブエ経済もひと頃の混乱ぶりからは脱却しています。落ち着きを見せたわけではありませんが、他のアフリカ諸国と比べて、温暖な気候で水も豊富であり、経済政策さえ間違えなければ、経済成長の仕組みは整っているのは間違いなく、元々岩盤であった、鉱業や農業といった主要産業を育てることで、地道な経済成長を遂げることがジンバブエ経済の発展には欠かせないといっていいでしょう。



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