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中島敦の『山月記』に見る人間の葛藤と孤独

こんにちは、Laughing Literatiです。今日は10月13日、日本文学の中でも特に深い人間ドラマを描いた中島敦の『山月記』について取り上げたいと思います。この短編は1942年に発表され、戦後の日本文学界で重要な位置を占めています。

『山月記』のあらすじ
物語は、唐代の詩人であった李徴が突然、虎に変身してしまう話です。李徴は優れた詩才を持ちながらも、自尊心の高さゆえに官職を辞し、詩人としての道を選びますが、成功せずに孤独と苦悩の日々を送ることに。そして、ついには自らの内なる恐怖と虚栄心に飲み込まれ、虎となって山中に消え去るのです。彼の旧友、袁傪との再会が物語のクライマックスとなります。

自尊心と虚栄心の葛藤
『山月記』は、李徴の内面の葛藤を通じて、人間の持つ虚栄心と自尊心の問題を浮き彫りにします。李徴は、自らの詩才に自信を持ちながらも、他人に対する恐怖と自己否定の念に苦しみます。彼が虎に変わってしまったのは、まさにその心の弱さを象徴していると言えます。

「人間、至るところ青山あり。何も故郷に固執することはない。」
(中島敦『山月記』)

この言葉は、李徴が自分を追い詰めた自尊心と、その結果としての孤独を表しています。彼の葛藤は、現代でも私たちの心に響くテーマです。

孤独と自己喪失
李徴が虎に変わるというファンタジー的な要素は、現実世界における孤独や自己喪失を象徴しています。彼は詩人としての成功を追い求めるあまり、自分自身を失い、ついには孤立し、人間性までも喪失してしまうのです。これは、人間が持つ自己意識と社会との関係性の問題を深く掘り下げたテーマです。

今日の豆知識
中島敦は『山月記』をはじめとする一連の短編で、その鋭い洞察力と詩的な文章で知られています。短命であった彼は多くの作品を残すことができませんでしたが、その作品は今も多くの読者に読み継がれています。『山月記』は、人間の本質や生き方に対する鋭い問いかけを投げかける、まさに日本文学の名作です。

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