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トルストイ『クロイツェル・ソナタ』に描かれる情熱と狂気

こんにちは、Laughing Literatiです。今日は2024年11月9日、音楽と文学が深く結びついた作品を取り上げたいと思います。今回ご紹介するのは、ロシアの巨匠レフ・トルストイの短編小説『クロイツェル・ソナタ』です。

この作品は、ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」にインスパイアされたもので、音楽が引き起こす感情の高まり、そしてその感情がいかにして人間関係に影響を与えるかを鋭く描いています。物語は、音楽によって感情が激しく揺さぶられた結果、悲劇的な事件に至る夫婦関係を描写しています。

音楽の魔力

物語の中で、主人公のポズドニシェフは音楽の力を非常に恐れています。彼は音楽が人の感情を支配し、理性を奪う力を持っていると考え、特にベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」が彼の妻との間に起こった悲劇の引き金となったと信じています。音楽は、美しさと狂気を同時に喚起し、愛と嫉妬の境界を曖昧にしてしまう恐ろしい力として描かれています。

ポズドニシェフはこう言います。

「Музыка — это страшная вещь. Она делает с душой то, что другие искусственные средства не могут.」
(音楽は恐ろしいものだ。音楽が魂に及ぼす影響は、他のどんな人工的手段でもできないものだ。)

彼は音楽が人間の心に強烈な影響を与えることを認めつつ、その影響が破壊的なものになる可能性に気づいています。

ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」

この作品の中で、ベートーヴェンの「クロイツェル・ソナタ」は単なる背景音楽ではなく、感情と物語の中心にあります。二人の登場人物がこの曲を共演するシーンは、音楽が感情を増幅し、制御不能な状態に陥らせる瞬間として描かれます。トルストイは、音楽が人々の心に潜む深い欲望や嫉妬、そして愛情を露わにする媒介として機能することを強調しています。

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