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旧枠の買取表が高いワケ。

みなさんこんにちは。ラテと申します。

軽く自己紹介をしておきます。
デュエマクラシックの愛好者で、仕事としてもTCGを触っています。自己紹介終わり。

今日は旧枠の買取額についてのお話です。

今になって旧枠の買取表を出しているお店というのもかなり珍しいですが、子供の頃に遊んでいただけあって、「あのカードって今こんなに高いの!?」と驚いた方も多いかと思います。

先日、X(旧Twitter)にてこんな投稿を目にしました。

※要約※
「旧枠を某お店に売りに行ったが、買取表の金額よりも査定結果があまりに低くて残念だった」

たしかに、ウキウキで買取に持って行ったにも関わらず提示された額が買取表の1/10以下だと残念な気持ちになりますよね。

ただ、これにはしっかりとした理由があり、恐らくぼったくっているわけではない、ということを可能な範囲でお店側の視点からお話できればと思います。かなり長くなりますので、お時間のある時にお読みいただければ幸いです。

※私自身は該当店舗のスタッフではないため、実際に査定されたカードやその状態、その場の状況などは把握しておりません。あくまで推測であり、全ての店舗、ケースにおいてそうとは限らないという点にご注意ください。

はじめに

このお話をするにあたって、前提として押さえていただきたい点がいくつかあります。

・買取表の金額は「美品」での買取金額である
・「美品」に対する認識の乖離がある

まずはこれを覚えておいてください。
お店が出す買取表の金額というのは、特記事項がない限りは原則「美品」での買取価格です。カードに傷があれば、その程度に応じて減額されていくのは当然ですね。

そしてこの「美品」という言葉が厄介で、人やお店、カードの種類によって多少の傷を許容した上で美品として扱うことも多々あります。

「現環境で使われている汎用だがコレクション需要は無いカード」なんかはその傾向が強いですね。

そのためここでは、「線傷や白欠けなど、劣化した点が一切無いほぼ完璧な状態」を「美品(完美品)」と定義します。

では、お店が想定する「旧枠の美品」とはどの程度なのでしょうか。実際に見てみましょう。

この写真、パッと見は綺麗ですが、よく見ると右下あたりに小さな白欠けがあるのがわかるかと思います。

小さな傷ではありますが、これでもお店としては胸を張って「美品です」とは言えません。
むしろこれはわかりやすい方で、欠けは無くとも小さな擦れですら「傷」に含みます。

人によっては美品と思われても不思議ではありませんし、むしろそっちの方が多いかもしれません。

ほぼプレイでしか使われないカードであれば美品扱いでも許容されるかもしれませんが、コレクションの需要が非常に強い旧枠デュエマだとそうはいきません。

所謂コレクターとしてカードを集めている方は、程度の差こそあれ状態にこだわります。「せっかくコレクションするなら美品がいい」と考えるのは当然ですよね。

要するに、お店の考える旧枠デュエマの美品水準は、かなりコレクターに寄っている(=厳しい)とも言えるわけです。

こうした点から、フラッと買取に出される方とお店の間で、美品という言葉に対する認識の乖離が少なからず存在している、と私は買い取る側の人間として日々実感しています。

買取額を決める2つの要素

本題に入りましょう。

旧枠の買取表、やたら金額が高いですよね。
ボルホワなんて7〜10万円レベルで買取募集されていることはザラにあります。

なのに、実際に査定で提示された金額はその1割にも満たない…。
なぜこんなことが起こるのでしょうか。

それには、主に2つの理由があります。

・店舗目線の需要
・時代的な背景

順番に解説します。

①店舗目線の需要

今現在パックを買って手に入るような現行のカードと違い、旧枠デュエマはローカルルールである以上、そもそもの母数(人口)は限られています。そこから更に完美品を探しているコレクターとなると、もっと少なくなるでしょう。

古いカードの需要は主に以下のどちらかです。
・美品のコレクション
・傷ありのプレイ用

よって「傷はあるけど比較的綺麗なカード」というのは、コレクターにとっては不要で、プレイヤーにとっては高すぎるため、特に売れにくい不良在庫になるリスクが高いのです。

メルカリなどのフリマアプリであれば、日本全国どこからでも買えるためそこまで購入者の層を気にする必要はありません。
また、悪い言い方をすれば写真の撮り方1つで傷を誤魔化すような出品も可能です。

一方、実店舗を構えた場合は実際に足を運んでもらわなければなりません。その代わり、購入者はその目でしっかり吟味して購入できます。またまた言い方を悪くすれば、実店舗は傷の状態を誤魔化せないからこそ確実に売れる金額設定にしなければならないわけですね。

特に、人気どころ以外のカードは顕著です。
例を挙げてお話しましょう。

日本のどこかに、『光器ナスターシャ』の完美品を探している人がいたとします。
旧枠の完美品というのは一期一会レベルで珍しいもの(理由は後ほど説明します)。
ましてこのカードが封入されているのは、『DM-08 超神龍の復活』。あのバジュラやバイラスゲイルと同じ弾で、未開封BOXの相場は20万円前後の代物です(そもそもこの箱自体滅多に流通しません)。
完美品を探しているなら、3,000円でも10,000円でも買う人はいるかもしれません。

※ちなみに、未開封BOXやPSAなどの鑑定品と、完美品個体の単品は完全に別物です。

DM-08の未開封が20万円でも「まぁそれくらいするか」で終わりますが、そこから更に低確率で『光器ナスターシャ』の完美品を引き当てても、それが20万円で売っていたら「高すぎるわ!」と感じる人がほとんどでしょう。おそらくそれが『超竜バジュラ』であっても。

PSAやARSなどで最高評価が付けばBOXより高くなるカードもありますが、本当に極一部。そういうことです。


その一方、傷ありだとどうでしょうか。
イラストは美しいですが、お世辞にも強力とは言えず、使っている人はほぼいないでしょう。
となると、プレイヤーからの購入は期待できません。あるとすれば、「めちゃめちゃ安いから一応買おうかな」といったついで買い程度。

私自身の経験として、そこまで状態が悪くないのに200円でも売れ残ることは多々あります。
多少綺麗だからと中途半端に高い金額で買い取ってしまうと、全く動かない不良在庫となってしまうリスクが非常に高いのです。

…個人としては状態に応じた値段でしっかりと買い取りたくても、店舗経営上難しい現実があるわけですね。

②時代的な背景

旧枠といっても、その幅は広いです。
基本編〜覚醒編まで含まれるわけですが、この中で最も需要があるのは基本編〜転生編。いわゆる「デュエマクラシック05」の範囲ですね。次いで不死鳥編〜戦国編あたりでしょうか。
幅はあるものの、その大半はおおよそ20年前に製造されたカードです。

今発売されているカードでも初期傷の大小は存在し、まして20年前のカードなんて今ほど製造技術も高くありません。

そして今現在旧枠を探しているのは、そのほとんどが当時子供だった人たち。
20年前はTCG自体が今ほど認知されておらず、ましてや「カードをスリーブに入れて保管する」という文化は定着していませんでした。
公園にある石のベンチでスリーブも付けずに遊んでいた方は多いでしょう。

つまり現在でも美品として残っているのは、絶版BOXから直接剥いた物(その上でさらに初期傷をすり抜けた個体)、あるいはスリーブに入れる文化のない当時から厳重に保管されていた物のどちらかに限られます。

だからこそ完美品の希少価値が異常なほど高く、値段が跳ね上がるわけですね。


このように、
・店舗目線ではそもそもの需要が限られる
・完美品以外は高く売るのが難しい
といった理由が重なった結果、買取表と実際の査定額に大きな落差が生まれてしまうのです。

番外編

経営的な問題

カードショップだけでなく商業全般の原則として、会社が利益を出すためには

「最低でも原価の1.3倍で販売する」

というのは広く知られています。
しかし、ただ単純に全てを1.3倍にすればいいというわけではありません。

10,000円で買い取った物を1.3倍の13,000円で売れば3000円生まれます(もちろん全てが純利益ではない)が、100円で買い取った物を130円で売っても、同じ1.3倍なのに30円しか生まれません。

査定してお金を払い、スリーブに入れて在庫として管理し、値付けしてようやく販売したにも関わらず、その結果30円しか生まれないのは費用対効果として非効率です。

よって、特別な事情がない限り、販売が100〜200円程度の物は余裕を持って10円や50円で買い取り、できる限り多く利益に繋げなければなりません。

先ほど述べた通り、プレイにも使いづらく人気のないSRなどは、傷ありだと200円でも平気で売れ残ります。10円や50円の査定結果は決して不自然なことではないのです。

旧枠を高く売るには?

普段お店で働いている側の人間としてあまり言うべきではありませんが、ただ高く売りたいならぶっちゃけフリマアプリの方が適しています。相場そのままの値段で直接売れるため当然と言えば当然ですが…。
ただ、取引や発送、販売手数料など諸々を含めると一概には言えません。

・1枚1枚のカードをちゃんと見てほしい
・カードの状態に自信がある
・面倒なトラブルを避けたい
・今すぐにお金が必要

このような場合はお店で売ることを推奨します。また、フリマアプリは使わずお店でしかカードを買わないという人も一定数存在しており、高額カードなんかはその傾向が強いです。

旧枠をしっかりと取り扱っているお店であれば、在庫状況や状態によってはフリマアプリの相場とほぼ同値、あるいはそれ以上で買い取ってくれる可能性もあります。
一度お店に買取を出し、納得できなければフリマアプリで出品という流れが最も無難ではないでしょうか。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
かなり長くなりましたが、買取表と査定結果の金額にギャップが生じる理由がなんとなくわかったかと思います。

売る側と買う側のどちらが悪いというわけでないのですが、どちらにとっても悲しい出来事でした。お互いにとって気持ちのいい取引にするためにも、少しでも内情への理解が広まればいいな…と願っております。

ではまた👋

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