ご開陳
ベストアルバムについてくる、未発表曲はだいたい良い。
タイタニックから引き上げた金銀財宝レベルの良い曲がたくさんある。
逆に、なんでこれ放置してたの? と突っ込みたくなるくらい。
その歌手がノっている時期に作るだけ作って置いておいたとか?
毛色が違ってタイミング的に出せなかったとか?
利権の難しい問題が絡んでる?
仲間に止められた?
天才すぎて発表する部分を忘れていたのか?
曲が良ければ良すぎるほど、なんでこれ放置……? と謎と笑いがこみ上げてくる。
どういう作業工程を経て「放置」になったのか、聞きたいバンドがたくさんある。
ベストアルバムではないけれど、
いつかのエッセイで取り上げた鬼束ちひろさんの「HYSTERIA(2020年)」は「デビューして間もない頃に録音された弾き語りのデモテープや、当時制作されていながらも、楽曲として成立させていなかった数多ある楽曲」から選出されてできたものだそうです(Wikipedia)。
歌詞だけを新たに制作してくっつけるという特殊な工程を経て生まれた作品群らしい。
どのメロディーも美しいけれど、鬼束ちひろさんがデビューして間もない頃といえば二十年以上も前の話だ。
なんでこれ放置……? と今も謎を抱えながら聞いている。
良い曲ばかりだ。
かつてのバンドやアーティストがベストアルバムを出して、その中に珠玉の未発表曲が入っていると、お宝を引き上げてきました感がすごい。
さらに捜索したら、もういくつかサルベージできる曲があるのではと勘ぐってしまう。
話がそれるが文豪の未発表書簡は、親族の人や博物館の人が家の蔵や大学の倉庫を漁っているときに出てくる。文通していた人の子孫が持ってきたりとか。
文豪の書簡は(研究者ではないので)あまり興味が湧かないけれど、好きなバンドの未発表曲だと「おおっ!」となる。
もっと探したらデモ音源でもなんでもまだまだ出てくるんじゃないかとゾクゾクする。
しかし、これはファン側の欲張りかもしれない。
アーティスト側がお蔵入りしたい曲もあるはずだ。
だからこそ尋ねてみたい。
なんでこれ放置してたの……?
少し前にThe White Stripesの未発表曲「City Lights」を聞いた。
すごく良い曲だった。メロディーも歌詞も歌声もいい。
あまりにも良かったので和訳を探したが見つからず、深夜にコツコツと翻訳作業を行ったりした。
そのくらい良い。
ある音楽記事によると、
だそうだ。
「発見」ということは、The White StripesのJack Whiteさんはこの曲を作ったが忘れちゃっていたってことだろうか……?
詳細は分からないけれど、
この曲を15年近く放置できるのすごくない?(逆に)
それとも曲の断片を見つけて、『Jack White Acoustic Recordings 1998 – 2016』が出た2016年に歌詞やメロディーを補完して完成させたということだろうか。
見つけたものがデモテープなのかメモ書きなのかギター楽譜なのか分からないけれど、何らかの痕跡を元に一から作詞作曲し直したのだろうか。
でも5枚目のスタジオ・アルバムのために作られたって書いてあるから、
未発表にしてもほぼ完成していたんじゃないかな……どうなんだろう。
良い曲なのでじっくり聞いているのだが、
その制作過程をふと気にすることが、三回に一回くらいある。