見出し画像

シンデレラガールズにとって、初めての9thライブ STARLIGHT FANTASY

デレステ(not シンデレラガールズ)の9周年ライブが終わった。今回はSTARLIGHT FANTASYと銘打たれたファンタジー風をコンセプトとしたライブということで、どうなるかちょっと心配しながらも結果的にライブは(Kアリーナの最高音響のおかげもあり)かなりの成功に終わり、デレステは10周年に向けて順調な歩み出しをしたと言えると思う。

スポットとして素晴らしいところは多々あれど、このライブの役割を象徴していたのがアンコール前のガールズインザフロンティア、そしてアンコール明けのNew bright stars、Life is HaRMONYの使い方だと感じた。ので、それについて書いていく。

ガールズ・イン・ザ・フロンティアの役割

ガールズ・イン・ザ・フロンティアはシンデレラガールズの10thツアーFINAL公演のための楽曲投票企画「My Best Cinderella Songs」で投票数1位を獲得している。

この楽曲が登場したとき、歌詞について荒れていたのももはや古い記憶かもしれない。「自分の足で歩け シンデレラ」という詞のニュアンスについて、いくつかの議論があった。が、この歌の詞の真意はその部分ではなく(強いてそれに近いニュアンスの楽曲を挙げるとすれば、shine!!の「この自分の靴で 今進んでいける勇気でしょう?」などがそれにあたるかも、それはそれでまた話があるが、ここの話とはずれるので割愛)、以下に示す

守るべきは過去じゃない
ずっと stay at the frontier

ガールズ・イン・ザ・フロンティアより

の言葉であると思っている。

シンデレラガールズは平等ではなく、また妾の子とも表現される複雑な出生事情で、だからこそ?なのか形容し難い強烈なエネルギーを放つタイトルとしてアイドルマスターのこの10年を真に牽引していたと言ってよいだろう(もちろん他のアイドルマスターについてもそれぞれの方向でアイドルマスターを引っ張ってくれている)。その精神が最もよく現れた楽曲として、1位にこの楽曲が選ばれたと思っている(純粋な音楽的な人気があるアンドロメダを除いたとして、アイドルマスターというコンテンツ性自体に深くアプローチする曲であるalwaysより上というのがすごい)。

そしてこの歌のラスサビ前の

だから 拓け!

の部分は、その精神を宣言するような叫びにより、最高潮に盛り上がる。10thFINAL公演での1位の順位の発表ののち、「みんなの気持ち、受け取ったよ」という渋谷凛の言葉と共に始まったこの曲とこの部分の歌唱は、このシンデレラガールズのスピリットを提供者側と受給者側が真に共有できていることへの喜びと、それに応える魂の歌唱であった。

そして今回、この曲がライブの最後に流れた際、頭によぎったこととして、「この楽曲の人気を再利用する」つまり過去にすがることそのものが、前述したこの楽曲の精神と矛盾するものになってしまうのではないかということだ。今回の公演のセンターは神谷奈緒と久川颯になっている。神谷奈緒はTrancing Pulseの落ちサビラスト部分の歌唱など声の伸びにも定評があり、また本来の楽曲センター担当の渋谷凛とのユニットの仲もあるため、いかにもありそうな流れに思えた、がそうなってほしくない、と願いながら楽曲を応援していると、該当の部分は、

神谷奈緒と久川颯の二人による叫びで表現されていた。

アンコール明けのNew bright stars、Life is HaRMONY

今と未来と過去があって
bright stars 繋がるの

New bright starsより

行こうよ next stage!

Life is HaRMONYより

該当部分の歌唱が神谷奈緒と久川颯両名によるものだったことは、大きなメッセージ性がある。ニューフェイスの中でも当初無個性と評されながらいくつかのストーリーの積み重ねによる成長を経た久川颯の絶叫のような叫びと、仲間を支える神谷奈緒の歌唱によって歌われたこと、これがアンコール後のNew bright starsの詞に表現されていた。

精神としては、過去は振り返らずずっと先を見て前線に立ち続ける、しかしそれは今まで積み重ねてきたすべてに支えられてのことであり、その過去は誇るべきコンテンツの財産である。それを踏まえた上で、10周年という次の節目に共に挑んでいこうという決意表明。これがSTARLIGHT FANTASY公演の役割だと受け取った。

補足的には、Life is HaRMONYの頭サビのアカペラ歌唱が島村卯月の歌唱だったことも印象的である。シンデレラガールズの公演のセンター、座長的役割は島村卯月(大橋彩香)→1stライブ出演組→2ndライブ以降出演組という風に少しずつバトンタッチしていき、現在島村卯月役大橋彩香さんは、10thFINALなどの特別な公演を除き、ライブで特別な役割を持つことなくいち出演者として公演に彩りを加える立ち位置に落ち着いている。それでも、かつて大センターを担当していた人間の透き通るアカペラ歌唱は一瞬でその事実を再認させるのに十分な力があり、後進を支えるのに足りる過去があることを表現してくれていた。

9thライブの役割

ASやミリオンライブ、SideMと異なり、シンデレラガールズはコロナ禍のタイミングに直撃したため、(8thと)9thライブというものを開催できていない。7thライブの直後コロナ禍が始まり、周年云々のレベルではなくコンテンツの生き残りをかけて24時間番組や完全無人配信ライブなど、あらゆる手段をもって火を灯し続け、気づけば10周年を迎えたという形であった。

9thライブというのは、本来10周年に向けた最後の重要なステップである。SideMは文脈を理解しきれている自信がないので言及ができないのが申し訳ないが、765ASの9thライブは、ホームにしていた家庭版コンシューマーゲームという市場の逆風もあり、10周年までコンテンツの盛り上げを維持する、という気迫の中で行われていた印象がある。ミリオンライブは翌年に控えていたアニメ展開もあり、節目に向けて襟を正すような周年曲「夢にかけるRainbow」と共に、「ミリオンライブは止まらねえ」という名/迷言で翌年の10周年イヤーを駆け抜ける宣言をしていた。

デレステというアプリゲームは、シンデレラガールズ史どころかアイドルマスター史、ソーシャルゲーム史というレベルで見てもエポックメイキングな作品であると言って良いだろう。アニメ展開とタイミングを完全に合わせたリリースによって、アイドルマスターというタイトルを一般まで普及させた立役者であると思っている。
つまり、言い換えると、多くの人にとってのシンデレラガールズというのはイコールデレステであるということだ。これは正史どうのこうのという話ではなく、印象の話である。その10周年という節目を迎えるための、お互いの決意の意思確認という9周年ライブをようやくシンデレラガールズが行うことができたことが、喜ばしい。

終わり

永遠を目指す祝祭

Fantasia for Girlsより

最近は蓮の空に代表される、時間経過系(=リアルタイムで作中キャラクターが進級し、コンテンツを卒業していく(らしい。伝聞))コンテンツが話題になっている。「今このコンテンツを追う意味」が光る良いアプローチだと思うが、作中キャラクターが年齢を取らずとも、望む望まないに関わらず「コンテンツ」自体は年齢を重ねていく。

基本的にソーシャルゲームの全盛期はリリース直後から最大2年程度をピークにゆるやかに減少していくと言われている。デレステも例外ではなく、周年イベや人気キャラやユニットのセルラン、イベントアクティブ数やなども、全盛期とはいかないのが事実である。だが、その中でも生き汚く足掻く姿、それもまたリアルタイムコンテンツだと思っている。

永遠を「目指す」と言う言葉の通り、いつかは終わるこのお祭りを、だからこそその節々を噛み締めて楽しみたい。この決意表明の上で来たる10周年、すでにツアーの予定は発表されたが、ゲーム、コンテンツ自体の展開も含めて、期待したい。



まずとりあえずPassion Jeweries 004の続報をやな…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?