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高齢化率はどこまで上げられるか。人口統計から見る未来③

こんにちは、こんばんは。Synapseです。

3話目となった今回は、高齢化率がどこまで上げられるのかについて考えてみたいと思います。

▼第2話はこちら

第2話では、高齢化率には上限があるという仮説を立てました。今回は、その上限を決める要因を探ってみたいと思います。

高齢化を支える因子は

 高齢化と医療福祉産業は切っても切れない関係にあるというのは、何となく想像できますよね。医療福祉産業は、日本全体の13.47%(2020年)を占める大きな産業となっていますが、この産業は労働集約型の産業ですから、高齢化率と医療福祉産業の間には関係性が見いだせるかもしれません。

高齢化率と医療福祉産業の関係

 秋田県は国内最高の高齢化率となっていますが、と同時に、2020年の県内最大の産業は医療福祉産業で15%となっています(国勢調査ベース)。秋田県にも名産品や観光地も多くありますが、医療福祉に従事する人数は相応に多いということがわかります。そこで、高齢化率の高い地域は、医療福祉産業が全体に占める割合が高いという仮説をまずは検証してみます。

 全都道府県で高齢化率と医療福祉産業の構成比率をプロットしてみました。横軸が高齢化率、縦軸が医療福祉産業の構成比率となります。相関関係を示す式が、R^2=0.315であることが示すように(1に近いほうが相関がある)、全体としてはなんとなく関係があるようにも見えますが、思いのほかバラツキが大きいようです。高齢化率30%近くの都道府県であっても、医療福祉産業比率は12%弱~18%程度とレンジは広く、この二つの相関関係は高くなく、県内のほかの産業の発展具合に依存する関係性と言えそうです。

高齢者数と医療福祉産業の人数

 産業構成比は、その地域でほかの産業が発達していれば医療福祉産業の比率は相対的に下がるということがわかりました。では、人口の相関関係を見てみます。高齢者一人当たりの医療福祉従事者の数は、地域間で差があるでしょうか。

 横軸が高齢者人口、縦軸が医療福祉従事者人口です。高齢者の数と医療福祉従事者数には想像以上の関係があるようです。相関関係は0.9852と、1にかなり近いです。

 しかし!この相関関係、総人口と従事者数の関係でも、ほぼ同じ結果が得られてしまいました。つまり、この算式では高齢者と従事者数の関係を表すのにふさわしいとは思えませんでした。

高齢者人口と、64歳以下人口のバランスを考慮して

 上述の2パターンではうまく関係性を説明できそうにありませんでしたので、次は 高齢者人口*X+64歳以下人口*Y=医療福祉従事者人口というパラメータを都道府県別に47種類求め、XとYに当てはまる近似解を求めるという手法をとってみます。(本当は、後期高齢者の係数Zも分けたかったのですが、数式が複雑すぎて求められませんでした…)

 そうして求められたXとYは、X=0.169 Y=0.031 となりました。この式は、
高齢者×0.169 + 64歳以下×0.031 = 医療福祉従事者数 
を意味しています。

日本の高齢化率40%を実現するための条件とは

 雑な試算になりますが、上記数式を利用してみようと思います。2050年の総人口を9,792万人、内高齢者3,852万人の場合、医療福祉従事者は833万人と算出されます。これを20歳~64歳の現役世代4,604万人で割ると、凡そ18.1%となります。繰り返しになりますが、2020年時点の比率は13.47%です。どの業界でも人材不足に苦しむことになると思いますが、その中で18.1%もの人を医療福祉に割かなければならないということは、あらかじめ知っておいて損はないと思います。

あらゆる産業の効率化が必要

 2050年は、到達するまでに25年あるとはいえ、高齢化率が25年後に突然あがるわけではありません。年々高齢者が増えるので、日々業務の効率化を実施していかなければなりません。そしてそれは医療福祉産業の効率化を実施して対応するのでは足りず、ほかのすべての産業を効率化させ、そこで浮いた人員を医療福祉産業に振り向けるという構造変革が必要です。

まだいくつかの選択肢が残されている

 すでに人手不足が顕在化していますが、2050年までに取りうる対策はまだまだ残されていると思います。ITやロボットを活用した作業の効率化や、移民政策の拡大。それから、過剰品質の業務や、輸入でもいい産業を捨てることなど、様々な戦略が取りえると思います。

 ですが、Synapseの経験上、こういった建設的な意思決定を日本人は選択しない(できない)傾向が強いように感じます。で、どうなるかというと、あまりの人手不足に耐え切れず、なし崩し的に移民を受け入れ、それでもやらなければいけない仕事にも手がつかずに自然消滅、様々なサービス・品質の低下、というのが基本路線ではないかと思っています。かつての「安かろう悪かろう」ではなく、「高かろう悪かろう」の時代がもう足音を立てて近づいているのではないでしょうか。

そんな意思決定の行く末は

 今回は医療福祉産業従事者が18.1%まで上げることができれば、無事に高齢化率40%を迎えられるということがわかりました。
 
 一方で、それができなかった場合には、どうなるのか、それを次回考えてみたいと思います。

本日も癖の強い記事を最後までお読みいただきましてありがとうございます。



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