見出し画像

社会的トリアージ、上げられない高齢化率。人口統計から見る未来④。

こんにちは、こんばんは。Synapseです。

 第4回となった今回は、2050年の人口について、高齢化率を上げきれなかった場合についてシミュレーションしてみたいと思います。

▼高齢化率が上がる条件について検討した第3話はこちら。

シナリオ「生産性効率化できず、高齢化率を上げられなかった未来」

 今回のシナリオは、第3話の検討で必要とされた「全産業に占める医療福祉産業の占める割合が、18.1%に達する」を達成できず、現在の産業構造を維持して、13.47%を維持した場合です。

 全産業の18.1%となると、日本の筆頭産業が医療福祉産業になるということを意味します。それもダントツの。そのような状況はさすがに考えにくく、ほかの産業もインフラ、食料、一部の製造業などエッセンシャルな産業は捨てられませんから、どうしてもなかなか18%を達成するのは難しいと思います。そんな中、海外からの労働者を受け入れることをせず、今のままを続けて全産業がシュリンクしていくと仮定した、やや乱暴なシミュレーションです。

足りない医療福祉をどう補填するか

 ドラえもんが大増産されることがなければ、補填することは難易度高です。まぁ、2050年ともなればドラえもんは量産されている可能性もありますが、それはまた今度にしましょう。

 では、不足した医療福祉の状況下で何が起こるかといえば、医療福祉サービスの高騰や待機時間の長時間化です。サービスは需給バランスで価格が来まる側面もありますから、高収入が実現できる産業であれば一定の伸びを見せる可能性はあります。ですが、それは利用者側に支払い能力がある場合だけですよね。医療は健康保険などの社会保険によって成り立っている側面からも、やみくもに価格を上げる政策は実施しづらいと思います。したがって、一部の高所得者が民間の医療機関に行く以外は、救急車を呼んでも来ない、病院に行っても長蛇の列というのが常態化するものと思われます。

 それを回避するには、社会保険料などをモリモリ上げるか大量に国債を発行するなどして資金を手当てし、医療福祉産業を拡大する必要があります。(今回は、それはやらないで、13.47%を維持するという整理です。)

社会的トリアージ

 トリアージとは、大規模災害など大量の傷病者が発生した場合に、限られた医療リソースを最大限活かすために用いられる重要な手法です。

 もちろん、通常の医療の範疇で堂々とそんなことが行われれば人権問題に発展するかと思いますが、事実世の中の医療リソースが不足している状態が慢性化すれば結果的にトリアージと同じことが起こるというのは想像に難くありません。

 この場合、資金に余裕のある人は健康保険などを利用せずとも民間で全額負担で医療を受け、サービスを受けることができますが、長時間待たされる場合には容体が急変してしまうケースもあるでしょう。また、年齢によって受け入れを拒否されるなどの扱いも、なし崩し的に生じてくるものと思います。

 こういった、ミクロには意図せずとも、結果的にマクロではトリアージが行われる状態を「社会的トリアージ」と呼ぶこととします。江戸時代には姥捨て伝説が数多く残りますが、これも一種の社会的トリアージといえると思います。

医療福祉の構成比率が13.47%を続けた場合

 医療技術が飛躍的にのびることがなく、今のままを続けた場合、第3話で算出した従事者数概算算式:高齢者×0.169 + 64歳以下×0.031 = 医療福祉従事者数 を用いて逆算すると、以下の通り医療を受けられない人数が生じます。(計算上は2025年に医療からはじきだされた91万人は2030までに死亡すると仮定、以下同じ)

以下は、各5年分の人数。
2025年   91万人
2030年 211万人
2035年 247万人
2040年 398万人
2045年 231万人
2050年  93万人

以上、2050年までに1270万人(年平均42万人)が医療福祉サービスを受けられないという結果が得られます。その結果、高齢化率は30%で頭打ちとなることがわかります。言い換えると、今の医療福祉の構成比率では大規模な社会的トリアージが発生し、高齢化率は30%までしか上げられないということです。この状況はコロナ禍とは比較にならない程度の医療福祉のひっ迫です。

人口推移をあらためてシミュレーションしてみると

 第1話でシミュレーションした結果では2050年の人口は約9,800万人程度でした。(最新の社人研の推計では10,400万人程度)
 今回のシミュレーションでは、2050年の人口は約8,500万人となり高齢化率は30%です。社会保険料負担は現在と同水準ですからまだ現実的なラインでしょうか。この状況が続けば、1億人を割り込むのはちょうど2040年ごろとなりそうです。

 医療技術の進歩は目覚ましく、各産業の進化も進みますから、これほど極端な状況にはならないとは思います。2050年ともなればドラえもんもたくさん働いているかもしれません。また、シルバー民主主義が浸透している日本でこれほどの医療ひっ迫が起これば、社会保険料を上げて対応するものと思います。ですから実際にはこれほどまでに人口減少が一気に進むとは考えにくいですが、民間の(全額自腹の自由診療など)医療介護サービスが発展するのではないかと想像できます。

この時、現役世代は?

 さて、社会保険料がじわじわと上がり、同時に高齢化率も上がる。そのとき現役世代はどんな行動に出るでしょうか。自分の両親を見捨て、海外に逃亡するでしょうか?それとも腹をくくって高い社会保険料を納め続けるでしょうか。介護離職も多くなり、現役世代にカウントされながらも産業に従事できない人も増えるでしょう。そうすれば、ますます必要な医療福祉構成割合は高くなっていきます。

 そこまではこのシミュレーションには含められていません。さすがに妄想できないのです。いずれにしても産業構成率18%のフルサービスは考えにくいですから、少なからず社会的トリアージは発生するものと思います、残念ですが。

 現在の社会水準を鑑みても、高齢化率40%はまだ夢の先にいる気がします。(実現困難な未来)
 この状況で得られた経験、技術をこれから後を追う世界中の国々に上手く輸出し、資産を形成していくことで、少しでも日本人の生活が豊かになれば、幸いですね。

すべては夢物語


いいなと思ったら応援しよう!