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山下メロ/5枚の写真から語る『遊技場的建築と時代』都市のラス・メニーナス【第19回】
2020年から「路上観察の現在地を探る」として、いろいろな方をお招きして、その方が見ているものの魅力、また、どうしてそういう視点に至ったかなどを、片手袋研究家の石井公二と編集者・都市鑑賞者の磯部祥行がお聞きしてきたトークイベント『都市のラス・メニーナス』。主としてYouTubeで配信してきた。「ラス・メニーナス」とは、17世紀にベラスケスによって描かれた、見る人によってさまざまな解釈を生じさせる絵画。街も、人によって、まったく異なる見え方をしているはずだ。
平井オープンボックスを会場として、毎月1回開催中。その第19回が2023年7月30日(日)に、平成レトロを提唱し、スケルトンやファンシー絵みやげなどの研究をする山下メロさんをお招きして開催された。
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山下メロさんといえば平成レトロ。そのテーマでテレビなどのメディア出演も多いので、「メロさんが路上観察!?」と驚いた方も多いだろう。実は私たちもそうで、最初は平成レトロをテーマにお話いただこうと思ったのだ。ところが「何を言っているんだ。なぜもっと早く私に路上観察を語らせないのか。うずうずしているんだ」とお返事をいただいた。そこで、告知用にいただいた画像がこれだ。
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タイトルは「遊技場(的)建築と時代」。ん? 「路上観察」的な文言は入らない。果たしてどういうお話が聞けるのか、期待しながら始まった。
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「ファみ活(ファンシー絵みやげを探して保護する活動)で日本中の観光地に行くんです。むちゃくちゃ歩くんです。そのとき、何するかというと、路上観察ですよ。暇つぶしというとネガティブですけれど、歩いているときに写真撮ったりするのは楽しいんですよ」
観光地でのファみ活も、店が閉まれば終わり。ではそこで宿に入るかというとそうではなく、メロさんはそこから街歩きを始めるという。その時間がいいのは、シャッターも閉まってるので、シャッターアートや店舗のロゴも観察できる。一方、歓楽街はやっている。歓楽街は建物にお金をかけているので「めちゃくちゃいい」そう。ではその1枚目。
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過去に撮影した膨大な写真からの厳選ではなく、あえて最近撮影のものから「ちょっと歩けばありますよ」というスタンスで選んだ5枚の写真。その1枚目は閉店したパチンコ店。移動中のクルマの中からというものだが、この意匠のすごさ。歓楽街のバブルっぽい建物は大理石や金属を使ってゴージャスにしているが、ゲームセンターのような対象年齢が下がると、わかりやすい、ポップなものになるという。差し色は黄色。これだけ大規模な建物が、閉店後、再利用もされずにそのままになっている。
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2枚目。床に注目。左は郡山のラーメン店、右は秋葉原の中華料理店。ブロックチェックの床と、ブラックの調度品という組み合わせ。これを「中華モダン」「Cモダン」と名付ける。
平成レトロの一つとして、部屋の中をモノトーンにするという流れがあった。「renomaの黒いコタツ布団とか」とメロさんが言ったとたん、思い出した。磯部が上京したとき(1991年)に買ったのは、黒いコタツとrenomaの黒いコタツ布団だったと。いまこれを書いていて、バスタオルは MICHIKO LONDON だか Mr.JUNKO だかの、黒白ストライプだったのを思い出した。
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3枚目。「こういう建物」ありますよね。コンクリート打ちっぱなしをイメージした外板は、しかも、割れたようになっている。「ガラスブロックを室内に使う」というのも平成レトロの一つだそう。『東京ラブストーリー』のカンチの部屋にもある。建物には差し色として赤が使われていて、それがアミューズメント感を醸し出している。赤と黄色がエレメントなのだ。
4枚目は民家の写真なのでここでは控える。黄色と赤が使われ、かつ当時流行したパンチングメタルも使われている。
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5枚目。奥(写真右)は黄色い鉄骨にガラスブロックが組み合わせられている。そして「P」「満/空」はネオンでできている。ほかさまざまな、平成期に特徴的な意匠がある。
平成レトロの建築を見てきたが、こうした「遊技場(的)建築」を端的に表す言葉は、まだ路上観察界隈の言葉としては、ない。しかし、「かなり皆さん、見てるはずです」とメロさん。路上観察が好きな人は下ばかり見ていがちだけれども、視線を上げ、建物も数を見よう。そうすれば、いろいろな気づきがあるはず。好きなように見て、気づいていこう。
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(1)YouTubeにて写真1枚目・2枚目の約25分を公開しています。
(2)配信すべてを有料にて観覧いただけます。
『5枚の写真から語る遊技場的建築と時代』都市のラス・メニーナス