趣味としての人工生命づくり 第5回 生物の謎3つ
高校の時に生物部に入り、生物の授業を聞く中で生物学に興味を持ったのですが、学んでいく中で、本当に知りたいことは、なかなかわからないという思いが溜まってきました。
僕の生物への興味は、自分がこうして意思を持って存在しているということへの強烈な疑問と不安に基づいています。それは、小学生の頃や思春期の頃に宇宙の始まりや終わり、死を想像した時の胸が締め付けられるような不安と不思議さへの畏怖のような気持ちです。
生物学は、本当に信じられないような緻密な仕組みによって生き物が生きていることを教えてくれました。しかし、その緻密な仕組みがなぜ生まれたのかという疑問にはなかなか応えてくれません。
人間型ロボットの研究者のインタビューなどを読むとなぜロボットを作るのかという質問に対して「それは人間を知るためだ」という答えを目にします。人間の歩行や運動、言葉の理解や発言、表情、感情などを人工的に再現することで、人間が行っていることをより深く理解することができるということです。
生物の成り立ちを考える上でも、生物の理解のために生物を作るというアプローチは有効なのではないかと思います。もちろん生き物全体の再現は難しいので、特定の現象に注目して部分的なシミュレーションをいくつか作っていけたらと思います。
謎1 ホタルの同時明滅
ホタルは種類や生息場所にによって発光のリズムをもっています。それぞれの個体がそれぞれのタイミングで発光するのですが、集団になるとその発光のタイミングが集団で同期して行く現象が知られています。指揮者のようなリーダーがいるわけでも元になるリズムが外にあるわけでもありません。ホタルの視力は0.01程度で近くの光しか捉えられないとおもわれます。
どのようにしてリズムを合わせることができるのでしょうか?
謎2 浮遊植物の遷移
池に浮いている水面を覆う植物では、周期的にメインになる種が入れ替わるという現象があります。Aという植物が水面の大部分を覆ったと思ったらBという植物が水面を覆い、C→A→B→C→A→B→C・・・と繰り返していきます。
一定の環境の中で複数の種があれば一定のバランスで安定しそうですが、周期的に入れ替わっていくのはなぜなのでしょうか?そのような現象を生む原因を仮説をたてて検証してみたいと思います。
謎3 視神経の配列
目で光を感じる視神経は網膜に2次元上に配置されていて120万本もの神経の束が脳へとつながっています。脳の視覚中枢でも元の網膜と同じように平面状に神経がつながっているそうです。
目から伸びた神経が位置関係を保ったまま脳につながるのはどのような仕組みによっているのでしょうか?一つ一つの神経は自分の位置をどのように知るのでしょうか?
これは光ファイバーの両端の配列を揃えることの難しさを考えてみても驚異的なことです。
謎4 動物の体表の模様
シマウマ、キリン、ヒョウ、などなど動物の体の表面には様々な模様があります。縞模様、斑点、ひび割れ模様などなど。これらの模様を作る仕組みはどうなっているのでしょうか。これらは数学者のチューリングが理論的に予想した反応拡散方程式によって説明できると言われています。実際に作ってみながら考えて見たいと思います。
謎5 体節の分かれ方
昆虫や私たちの体は節が基本になっていて、卵から体ができてくるときも節に分かれて体作りが始まります。
この体節が私達の背骨の繰り返しの構造を作っています。同じ間隔で細胞の集団を分ける方法として、体節時計と呼ばれる遺伝子の規則的な発現が元になっていると言われています。体の模様づくりで出てきた反応拡散の仕組みが使われているという説もあります。
それぞれのモデルをつくってシミュレーションしてみましょう。
謎6 体の軸
卵はだいたいまんまるで上下左右同じことが多いですが、僕たち人間の体は頭尾軸、背腹軸、左右軸と3つの軸に則って出来ています。卵が上下左右均一な塊だとすると細胞はどのように自分の場所を知り体を作ることができるのでしょうか?なにも目印がなければ場所によって違う遺伝子が働くということができません。上下の区別はつくかもしれませんが、それだと円柱や円錐のような形しかつくれません。
その体の軸づくりと軸に合わせた形態の変化をシミュレートしてみたいと思います。
*無料ですべて読めますが、応援いただけると幸いです。
ここから先は
¥ 300
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?