アナログゲームミュージアム長野分館の提案
アナログゲームミュージアムについて
アナログゲームの定義について
アナログゲームとは広義のボードゲームと考えているが、昨今使われるいわゆる「ボドゲ」は異なり、麻雀や双六・囲碁将棋などのテーブルゲーム、トランプやコインを使ったカジノ的ゲーム、TRPGやマーダーミステリーなどのシナリオゲームも含めたものだとここでは定義しておきたい(アナログゲームミュージアム設立記念イベント活動報告でも具体的な定義は無かったので、ここではあくまで私感として定義付けをしておく)。
アナログゲームミュージアムとは
アナログゲームミュージアム(以下、本文ではAGMと表記)については、公式サイト(https://analoggamemuseum.org)があるので、サイトやツイッター(「アナログゲームミュージアム」で検索)を参照していただきたい。サイトから引用するならば「すべてのアナログゲームを保存しアクセスできるようにしよう。」ということが目的、主観ではあるがアナログゲームの保存・記録化が主とした活動で、そこから中長期的には「ミュージアム」としてアナログゲームの閲覧・活用・イベントの実施等を見据えている団体である。
会員になるためにはpixiv FANBOXで月額400円のプランに入るという、面白い入会方法ではあるが、これはあくまで個人(いわゆるボドゲファンなどがターゲットとして考えられる)としてであり、団体として賛助会員になるためには万単位の年会費を払う必要がある。ここでいう団体は「賛助」というところなので、学術的な団体・ゲームデザイナー集団(企業やサークルなど)が主であろう。
アナログゲームミュージアムの現状
現状については先述した設立記念イベントの活動報告から引用したい。
神奈川県大磯町で民家を用いた資料館を運用(2000を超える収蔵品がある)が一般公開が難しく、またアクセスにも課題がある。
そこから話が派生し、新宿区にある「おもちゃ美術館」が区と連携しており小学校の廃校跡を利用しているので良いが現在はツテがない(会場で「市町村長さんはいませんかー」という声掛けが出た)、漫画を例に挙げいろんな場所で記念館的に分散してミュージアムが作られれば面白い、欧米には公共のゲームミュージアムがけっこうあるが中立性が必要、という話が出た。
分散型ミュージアムの提案
分散型ミュージアムとは
先述して「分散してミュージアムが作られれば面白い」という話をした。これはトークショーで出た話なのだが、ここで例に挙がっているのは石ノ森章太郎記念館や水木しげる記念館などの漫画家の記念館的なものでそれが各地にあるので、それを真似して分散して地方にミュージアムを作りネットワークを広げてみたらどうだろうという話であり、また具体例としては僻地にある海洋堂ミュージアムのキャッチフレーズ「わざわざ行こう」という話である。
かなり前の話になるがそもそも現在のAGMがアクセス難という話も出ており、ここについてはまた議論などが必要だろうが、各地にAGMが派生していくのは面白いと感じた。
地域振興から分散型ミュージアムを考える
私の大学の専攻が地域振興であり、その中でもメインは過疎山村の振興なのだが、そもそも過疎山村にアクセスを求めるのは難しい。少子高齢化だけでは片付かない問題が山間地にはあるからで、だからこそ過疎化・廃村化していくという悪循環がある。
ただ私の生まれ故郷である新潟県妻有地域は、現代アートを地域活性化に繋げた稀有な例であり、地域全体をミュージアム・キャンバスとして活用しようという内容で、廃校や古民家を美術館化したり、現在ある棚田や渓流を視点を変えることで観光地化したりして成功している。「大地の芸術祭」というワードで検索して内容を見てほしい。TVでも何度も取り上げられている山村の地域活性化の良い例である。
また、先述した漫画家の記念館は作者の出身地に置かれているものが多く、記念館を作ることで観光の目玉として売り出している地域がほとんどではないだろうか。もっともそのような記念館に私自身が行ったわけではないので、確実性には欠けてはいるが。
その視点でいくと、ゲームの記念館があることで観光地化することは不可能ではないと考える。それこそ地域行政とやり取りをしないと何とも言えないが(特に廃校の活用については)、成功例があればそれに追随していく地域があるのも哀しいかな現実ではないか、と考えている。
長野に分散型ミュージアムを作る提案
ここまで来てようやく本題に入る。前置きが長いのは容赦してほしい。「地域活性化とAGMの発展がうまくかみ合うのではないか」というのが主題である。会場で「分散型ミュージアムを作る」と聞いたとき、真っ先に浮かんだ施設がある。それが長野県にある「セルバン白雲館」だ。
天然温泉がある宿泊施設でロッヂもあり、何よりオーナーからしてアナログゲームに造詣が深く200以上のゲームを保持している。サイトの「ごあいさつ」欄からして「年間を通じてボードゲームやTRPG、LARP(体験型RPGゲーム)等を楽しめるお宿を目指しております。」と書かれており、実際にTRPGやマダミスを宿泊施設ならでは(もちろん日帰りもできる)の形で提供している珍しい施設だ。
ただアクセスは悪い。近くのICから車で約20㎞、公共交通機関に関しては長野駅から特急14分で最寄りの須坂駅に着きそこから終点までバスで40分、さらにタクシーとサイトには書いてある。近くには他の宿泊施設もあるからおそらくさほどバス停からは遠くないだろうが、温泉地とはいえ山間部極まれり、というところである。さらにコロナ禍により客足は遠のき、経営難にあえいでいる。
ここを結び付けようではないか、というのが本題だ。多くのゲームがあるということは、言い換えれば多くのゲームを収蔵しているのだ。哀しいかな客が少ないことにより収蔵スペースは存分にある。これを活用しない手はない、と考えたのだ。先ほども書いたように宿泊型イベントもやっているので大規模なゲーム大会にも活用でき、常に施設管理はされている。海沿いと山間部という違いはあれど、管理も徹底されていれば「ミュージアム」としてはうってつけなのではないか。・
もちろんあくまでこれは「分館」の話であり、肝心のゲームのアーカイブ化など主問題については都市部で検討すべきだろう。ただ、お互いに「施設の運用」というところに関して言えば、Win-Winの関係を築けるのではないだろうか。私はそう考えている。
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