トレーニングをするならば知っておきたい【トレーニングの原理・原則/9選】
以前、ウェブサイトの方にアップしていた記事のリライトになります。
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トレーニングには【原理・原則】があります。
どんなことでも同じですが原理原則に則らなければうまく行きません。
原理原則を知って無駄なく安全で効果的なトレーニングを行ないましょう!
はじめに。トレーニングの原理・原則は諸説あります。
トレーニングの原理・原則は、本やトレーニング団体などにより、少しずつ定義が異なります。
「違いがあるんだったら、アテにならないじゃん!」
と思われるかもしれませんが、安心してください。
そんなに大きく違うことを言ってません。
分類がそれぞれ異なっているだけです。
今回の投稿では、大森が重要だと考える【原理・原則/9選】をご紹介します。
その中でも、特に重要なものを3選。
加えて意識したい6つを選びました。
大切なことは、ルールを知ることで、ご自身が行なっているトレーニングに自信が持てるようになることです。
半信半疑のトレーニングはうまくいきません。(それもトレーニングの原則のひとつ「意識性」に関わります。詳しくは後述。)
では、みなさんのトレーニングが原理・原則に適しているかを確認しながらご覧ください!
より良いトレーニングのヒントにしていただければ幸いです。
過負荷の法則(かふかのほうそく)
負荷を加えると強くなり、負荷がないと弱くなる性質。
例:重いものを持って行なう筋トレで、筋肉は強化される。
例:毎日扱っている箸を持っていても、腕の筋肉が強化されることはない。
過負荷=Overload(オーバーロード)の法則とも呼びます。
こういう初歩的な認識は大切だと思っています。初心忘れず。
筋肉は「負荷」があることで強化されます。
この原理に基づいて筋トレをすれば、必ず効果が出ます。
トレーニングをしていているのに筋肉がつかない人は、負荷を見直しましょう。
これはけっこう重大なテーマで、シンプルなのですが実は簡単ではありません。
筋トレにおいて、筋肉に負荷をかけるつもりが関節にかかってしまい、
筋肉を発達させるどころか関節を痛めてしまう場合もあります。
これはトレーニングフォームの問題で、テクニック的に改善しなければいけない事例です。
ただ闇雲に気合いと根性で行なう筋トレがリスクなのはこういう理由があるからです。
漸進性(ぜんしんせい)
体力要素は少しずつ増進する性質。急に重いものは持ち上がらないし、急に速くは走れない。徐々に負荷を上げていき、身体に適応させることが大事。
例:はじめは重く感じた負荷が、少しずつトレーニングすることで軽く感じるようになった。
例:計画を立てて少しずつ走る距離を長くしていって、やがてフルマラソンを完走できた。
例:やったこともないレベルの高いトレーニングをやってみたら、ぜんぜんできなくてケガをした。
何事にも言えますが『積み重ねが大事』ということですね。
特異性(とくいせい)
体力要素は特異的に増進する。
例:長距離を走るトレーニングをしても、短距離を速く走れるようにはならない。
例:身体を柔軟にするストレッチでは、筋肉が発達しない。
特異性=SAID(Specific Adaptation Imposed Demand)の法則とも呼びます。
(say[言う]の過去形がsaidなので「セッド」の法則と読みます)
「特異性」はかなり重要です。
【過負荷】と【漸進性】はわりと直感的で一般的な知識かと思いますが、この【特異性】は盲点になりやすいところです。
運動をしないよりはなんでも良いのでした方が良いですが、
具体的な効果を求めるのであれば目的に合った運動をすべきなのも【特異性】があるからです。
上記の例えのように、長距離を走る=【長く走る体力要素】と短距離を走る=【速く走る体力要素】は異なる、ということです。
フィットネスクラブのお客様でも、ジムに通っていて体力に自信があったけど登山に行ったら意外と疲れてしまった、といったお話はよく聞きます。
実際には運動は様々な体力要素の組み合わせになっているので、1つの運動で多様な体力を向上させることもありますが、
しかし、原理的には「その運動はどんな体力要素を高めるものなのか?」という理解をすることが、
その運動効果を最大限に発揮するため、またご自身の目標・目的達成のために不可欠なことです。
今行なっているトレーニングの特異的な要素は何でしょうか?
このクエスチョンは常に意識していただきたいところです。
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以上、必修3選でした!ここからは推奨6選です。
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適応性(てきおうせい)
あらゆる環境に適応する性質。良い方向にも悪い方向にも適応する。
例:人間は全ての動物の中で最も地球に広く分布している。
人間は地球上で最も環境に適応する生物、なんて言われていますが、意味合いは同じです。
【過負荷】とも近いのですが、より負荷の高い状況に筋肉が適応することが筋肉の発達につながり、という性質ですね。
【適応性】について書く場合に欠かせないのが、
『陰性適応』と『陽性適応』です。
陰性適応はネガティブな方向に適応すること、
陽性適応とはポジティブな方向に適応することです。
運動していない状況が環境が続くと筋肉が衰えるのは『陰性適応』が働いているからです。
運動不足があらゆる身体能力を低下させるのは、人間の性質だと理解しましょう。
同時に、年齢にかかわらず運動している人が体力があるのも、人間の性質です。
【適応性】をどう扱うか。
ライフスタイルの基本になることだと思います。
△超回復(ちょうかいふく)
運動によって体力が低下した後に休養することで以前より体力増進する性質。
休養が足りないと運動をしても体力が減少する意味も含んでいる。
例:1日疲れて家に帰ったので夜はグッスリ寝た。朝起きたらスッキリ元気になっていた。
例:ハードにトレーニングした翌日、回復が足りず前日よりもトレーニングが出来なかった。
説明に説明すると、下記の図のようになります。
運動をすると当然疲労します。そして一時的に体力は落ちます。
そして休養を取ることにより体力が回復して、以前より体力が向上します。
この原理で大切なことは、
体力が回復するタイミングを間違える=回復が足りないと運動してもかえって体力が落ちることもある(【適応性】の陰性適応)ということです。
この原理を考えても、運動と栄養と休養のバランスの大事さを分かりますね。
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…追記です。↓
※タイトルに「△」が付いている理由。
書き切った後でなんですが、この【超回復】は直感的に正しいようでいて実はそんなに単純な話ではない、という場合も多いです。
ただ「運動だけでなく栄養や休養も大切!」というメッセージとしては分かりやすいと思いますのであえて残しておきました。
詳細はまた別の機会に書きたいと思います。
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可逆性(かぎゃくせい)
運動で得たと体力は運動を止めれば戻ってしまう性質。ただし運動期間が長ければ戻るのも遅くなる。
例:運動して痩せても、運動をやめたら太ってしまった。
「得やすいものは失いやすい」「悪銭身につかず」「easy come, easy go」といった言葉がありますが(最後の某楽曲のタイトル?)、
トレーニングにも同じことが言えます。
短期的な成果は短期的に失います。
ダイエットで言えばリバウンドが起こるのは【可逆性】が働くと考えましょう。
逆に(次項の【継続性】にも関わるのですが)長い期間トレーニングを続けて得られた成果は、しばらく期間が空いても急激に落ちることはありません。
これは本当で、フィットネスクラブにいるとよくお見かけするケースです。
仕事や体調の都合でしばらくジムをお休みされていても、再開した時に体組成を測定してみると思ったほど「筋量が落ちず脂肪量も増えず」だった方を何人も見ています。
先に書いた【適応性】にも関わりますが、長い期間で適応された状態は(良くも悪くも)変化しにくい、というのもこの【可逆性】によるものだと考えられます。
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推奨6選のうち半分が終わりました。あと3つです!
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継続性(けいぞくせい)
文字通り「継続は力なり」。
例:毎日腕立て伏せをしていたら、気づいたら胸の筋肉が厚くなっていた。
「継続は力なり」の一言で全て説明が付くのですが、
強いて補足をするならば「何を継続しているのか?」という点を意識したいです。
先に書いた【特異性】との関わりますが、ご自身の目標や目的に適切なトレーニングができているか?
そのトレーニングは【過負荷の原則】に則っているか?
日々のトレーニングが【漸進性】に則って少しずつ負荷が増えているか?
【超回復】の原則に則って、運動し過ぎ=オーバーワークになっていないか?
無駄なトレーニングは無いと思っていますが、せっかくならば良いトレーニングを続けましょう。
何事にも言えますが、積み重ねが大事、ということですね。
個別性(こべつせい)
同じトレーニングをしても、その効果には個人差がある。
そのため個人個人の性質に合わせたトレーニングプランが必要である。
例:長年運動経験がある30代男性と、何十年も運動をしておらず肩こりや腰痛に悩まされている60代女性は、同じトレーニングができない。(する必要がない)
例は露骨でしたが、しかし多かれ少なかれ、そういうことです。
年齢、性別、運動歴、病気や怪我歴、体力レベル、目標・目的、興味、嗜好、得手不得手、モチベーション、などなど、ひとりとして同じ人間はいません。
同じ人間でも日々のコンディションは変わります。
ということは同じトレーニングであっても、人により同じ効果が得られるとは限らないということです。
大切なことは【個別性】という多様性があることを認識することです。
違いがあることを前提、個々の違いに少しずつ修正しながらトレーニングを続けること、その「取り組み」そのものが大事だと思います。
言い方と変えれば『他人と比べる必要はない』ということです。
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さあ、次が最後です!
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意識性(いしきせい)
トレーニングはその効果を意識することで効果が高まる性質。
イメージトレーニングの効果の高さと「ながら運動」の効率の悪さを理由。
筋肉を発達させたいのであれば、その筋肉に意識を集中させることで良いトレーニングができます。
ボディビルの人が鏡で自分の筋肉をチェックする姿や、某お笑い芸人さんの筋肉の名前を呼ぶネタがありますが、実は理にかなっていることです。
ここで少し議論があるのは、フィットネスクラブにある有酸素マシン(エアロバイクやランニングマシン)に多くある「テレビ」の存在。
「テレビを見ながらバイクをこいだりランニングする有酸素運動」は、この【意識性】から考えると、効果は半減すると言わざるを得ません。
しかしながら続けることに意味がある【継続性】を考えると、テレビなどを利用するのは有効です。
実際の体力レベル、有酸素能力レベルの成果を見て「ながら」トレーニングを評価すれば良いと思います。
これらの【原理・原則】を全て覚える必要はありませんが、知っておくと迷子になりません。
「トレーニングをしている」という行為そのものや「トレーニングした実感・やった感」といった達成感もトレーニングの成果です。
しかしそれだけで終わらず、効果・成果も欲しいですよね。
それをすることによってどんな効果・成果が得られるのか?
それが自分のライフスタイルにどう影響するのか?
身体の変化には理由があります。
それは【トレーニングの原理・原則】に基づいて起こります。
【原理・原則】から理解することで単なるトレーニングが身体をより良くするための具体的で明確な対策・解決策としてのトレーニングになります。
逆にいうと、効果・成果が得られない時はこれら【原理・原則】から外れていないか?を確認しましょう!
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最後に少しPRをさせてください。
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結果・成果を出すために【原理・原則】をどう扱うか?そこにパーソナルトレーニングの価値はあります
パーソナルトレーニングでは、
人それぞれの【個別性】見極めた、
適切な【過負荷の法則】で、
【漸進性】的に少しずつ負荷を調節し、
目標・目的に合った【特異性】に沿って、
【適応性】を引き出しつつ、
【可逆性】を考慮して、
【超回復】の確認をしながら、
【意識性】で明確なパフォーマンス向上を目指した、
トレーニングをご提案します。
少々冗長でしたが、パーソナルトレーニングではまさに【個別性】にあったトレーニングをすることができます。
それを対話・コミュニケーションの中で明確にしていく。
みなさまが運動の恩恵を得られるよう、本質や方法を今後も考え、みなさまにご提案をしていきたいと思っています。
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最後までご覧頂きありがとうございます。
この投稿がどなたかの運動/フィットネスへのモチベーションにお役に立てそうであればシェアしていただければ幸いです。
ありがとうございました。
大森 剛/OMORI TAKESHI
http://www.largeforest.com