30代後半からの、IT業界挑戦記 ⑥ 大自然の摂理
便座が俺を呼んでいる。
※そういう話が苦手な方はブラウザバック推奨です。
4時間近くPC前に座っているが、寒くなってきたせいもあってか、なんだか下腹部から太鼓の達人 難易度:鬼並みに小刻みのビートが刻まれている。
うむ。これはまずい。
急ぎPCをロックし、身支度を整え、下腹部からの呼び声に導かれるように私はジェントルメンの絵柄が刻んである戸を勢いよく開けた。
説明しよう。
私の常駐している会社は、そこそこ大きいビルなのだが、なんとそれぞれの階層に男女どちらかの憩いの場しか設置されていないのだ。
数百人規模の人数がひしめき合っている中、たった数個の個室を毎日奪い合って生きている。この世は弱肉強食だ。
話を戻そう。
戸を開け放ち、目に飛び込んできたのはやはりというべきか、赤く塗られた金属に彩られた扉たちだった。
だがしかし。神は私を見捨てなかった。
扉が全て赤い事を確認した後、すぐに中から物音が聞こえた。
ガラガラッゴロゴロッ…
そう、それはもうすぐ戸が開くという事を伝える合図でもあった。それならば話は早い。下腹部から刻まれるリズムも徐々にテンポが上がってきている。いつもであれば上から下まで駆けずり回って白い部屋を探す所だったが、そんな余裕はなさそうだ。このままここで待つ事にする。
ッザアァァァァ…
川のせせらぎのような音が水色のタイルに囲まれた部屋に響き渡る。よし、これは何とか人の尊厳を保つ事が出来そうだ。
と、その直後。聞き覚えのある音が再度部屋に鳴り響く。
ガラガラッ!ゴロゴロゴロッ!
ほう、二度目か。
まあ、そんな事もあろう。かく言う私も、一度合図を送った後にちょっと通りますよとばかりに飛び出てきた事もあった。ここは致し方ない。
サァァァァ…
2度目のせせらぎが聞こえる。よしよし、もうすぐ楽園への扉が開くはず。そう信じて疑わなかった。だがしかし。
ガラガラッ!!!ゴロゴロゴロゴロッ!!!
サァァァ!!!ガラガラッ!!ジャバァァァ!!
ガラガラガラッ!!ゴロゴロッッッ!!!×10
いや何回拭いてんだよ!!!!
流石の私もこんなに合図を送った事は一度もない。
どうしたんだ、ここまでくると逆に心配になってくる。
そんなに一大事だったのか。それとも破滅的な何かが起こったのか。
ガラガラッ!!サァァ!!ゴロゴロゴロッ!!
そんな事を考えている間にもまだなり続く合図、計18回。※通算 私調べ
ここまできたらもう、中にいる奴の顔を絶対に拝んでやる、私の下腹部ももう限界だ。どちらが先に限界を迎えるか勝負だ、などと一人勝手に盛り上がりながら部屋から出てくるのをそっと待つ。この間約15分程度。
カチャカチャ…
来た!!遂にその顔を拝む事が出来る!!!
どんな奴がこんな狭い空間で金属と紙のセッションを楽しんでやがったのか、その顔をこの目に焼き付けてやる、とばかりに開け放たれるドアに視線を注ぐ。
ガチャッ…
なんと、そこから出てきたのは…
私にマウスを貸してくれた、SESの先輩。
いやアンタだったんかい!!!
っていうか大丈夫ですかほんと、ケツ切れてません?
笑いを堪えながら、個室の戸を開け放つと、
ピッカピカの便座が私を迎えてくれた。
そこからもう笑いが堪えられず、便座に座りながらもカタカタと震えが止まらなかった。仕事場に戻るのが辛かった。
あ、今回はIT業界全く関係ないです。すんません。
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