心理支援、多職種連携、主体性を育む「寄り添い」の在り方
今回のクラウドファンディングは、家族介護者への心理支援に焦点を当てつつ、彼らが抱える孤独感や不安感に寄り添い、それを実質的なケアへと変えていく取り組みである。特に、多職種の知見を活用し、それを家族や本人が「自分たちの力」として活かせる仕組みづくりを目指している。
家族支援における「寄り添い」とは
先日オンラインのトークイベントがあり、「家族支援の在り方」をテーマに、医療や介護の現場で直面する課題について意見を交わす場となった。このイベントでは、クラウドファンディングの進捗報告や応援コメントへの感想を共有しつつ、ケアマネージャーや民生委員が主導する形で緩やかな議論が進められた。参加者はその内容を聞きながら、介護や家族支援に対する新たな視点を得る機会となった。
議論の中で浮かび上がったのは、いくつかの重要な課題である。まず、「医療の壁の高さ」が挙げられた。家族や介護者が医療との関係を築くのは容易ではなく、専門的な用語や複雑な制度が心理的な負担を高めているとの声が寄せられた。また、「本心を語れない現場の現実」にも触れられ、多くの家族が「困っている」と声を上げられず、問題が深刻化してしまう状況があることが指摘された。
そのトークイベントの後、「もっと寄り添ってほしい」という声が寄せられた。この言葉には、家族が直面する孤独感や心理的負担が反映されている。一方で、寄り添いを感情的な共感だけにとどめず、それを問題解決や生活の質の向上に結びつける必要性がある。
家族介護者が求める寄り添いは、「分かってほしい」「話を聞いてほしい」といった感情的なニーズが中心となることが多い。しかし、専門職が提供する「寄り添い」とは、感情の共有だけではなく、家族が主体的に問題解決に取り組むための自己効力感を育む視点を重視するものである。
多職種連携がもたらす力
本プロジェクトでは、家族支援の効果を最大化するために、多職種の知見を積極的に活用している。医師、看護師、ケアマネージャー、リハビリ専門職、相談員といった多職種が持つ専門知識や経験は、家族や本人にとって重要なリソースである。このリソースを活用し、以下のような形で家族の力に変えていくことを目指している。
個別化された支援の提供
多職種が協力して個々の家族の状況を分析し、具体的かつ実践的な支援プランを策定する。それにより、家族が「自分の状況に適した支援」を実感できる環境を整える。自己効力感を引き出すアプローチ
専門職が持つ知見を一方的に伝えるのではなく、家族が自らの課題を理解し、解決に向けて動ける力を育てる。具体的には、実践的なスキルや知識を家族にわかりやすく共有し、日常生活で活用できる形で支援を行う。多職種連携による継続的サポート
支援は一時的なものにとどまらず、多職種が連携して継続的にフォローアップする仕組みを作る。これにより、家族が長期的に安心して介護に向き合える環境を提供する。
寄り添いを超えて主体性へ
家族支援における最終的な目標は、家族や本人が自らの生活や介護環境において主体的に行動できるようになることである。そのためには、支援をただ受け取るだけではなく、それを自らの力に変え、自信を持って取り組める状態を目指すべきである。
「寄り添う」という感情を受け止める行為は重要であるが、それはあくまで出発点であり、継続して当然あるもので、ゴールではない。多職種の知見を活用し、それを家族や本人が自らの力として活かせるようにすることが、支援を持続可能で効果的なものにする鍵である。
今後の展望
今後は、多職種連携をさらに強化し、家族や本人が自立的に行動できる環境を整えることに注力していく。また、心理的寄り添いを具体的なケア改善に結びつける取り組みを進める中で、家族介護者が主体的に取り組める支援モデルを構築する所存である。
この家族支援プロジェクトを通じて、家族介護者の心理的負担を軽減しつつ、彼らが持つ可能性を最大限に引き出していきたい。引き続き、皆さまからのご意見やご支援をいただければ幸いである。