「理解とは」
真夜中。
とあるマンションの一室に、その霊は現れる。
愛する旦那を奪った女を探し続けているという。
「お前だろ。お前だろ。お前だろ。」
引っ越してきたばかりのA子は、はじめこそ布団に顔を埋め震えていたが、次第に困った様子で身を起こした。
「あの、私では無いと思うのですが…。」
「嘘をつけ。」
「本当に違うのです。そうではなくて、
私、男性は恋愛対象じゃないので。」
「……」
霊の女は呆然とした。
そんな事は念頭に無かった。
戸惑った挙げ句、ひとまず自分は固定概念に囚われてなどいない、理解のある霊だという事を伝えたかった。
「私、偏見ないわよ。」
沈黙の後、A子はこう返した。
「幽霊が『私、怖いよ』なんて言いますか。」