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[エッセイ]年賀状短期バイト

クリスマスが終わると、一気に年末ムードが漂ってきた。

私は学生時代、就職活動が終わってから
ひたすら卒論と遊びに時間を浪費していた。

しかし段々とお金が尽きてくる。
というかそもそもそんなに遊びが上手ではないので、普通に飽きてくる。

大学3年の終わり頃、就職活動と教育実習をしていた私はさすがに時間がなくなり
それまで4年ほど働いていたスーパーのバイトを辞めていた。
店長から「またいつでも戻ってきてね!!」と見送られながら家から5分のバイト先を後にした。


数ヶ月後、就職活動が無事に終わった。
さすがにバイトをせねばと思っていたところ
店長の言葉を思い出す。

お待ちかねとばかりに店長を訪ねたところ

「うちは改めて面接センターに行って面接してもらわないといけないんだ」と言われたので、
面倒だなと思いつつも再度応募をして面接を受けた。




そして落ちた。


ウソだろ。

現役中は真面目に働いていたし、
なんなら店長からの評価も良かった(と思いたい)。
しかし、このスーパーは大手が経営しているため、
店長の一存では採用できないとのこと。

就活が終わってからは卒業論文にも追われていたので
勤務できるのは週2~3回。

これがダメだったらしい。
(本当はどうせ受かるだろうと舐めた態度だったのが大手面接官にはバレていたのだと思っている)


ということで仕方なく短期間でも入れるバイトを探すことに。
ネットで検索していると
某全国チェーンのカメラ店が年末年始の年賀状受付バイトを募集していた。

早速電話で応募したところ、あっさり採用された。

後から聞いたのだが、「電話の時点でちゃんとしていたので採用しようと決めていた」そうだ。
どうだ、私を落としたスーパー。私は”真面目そう”が取り柄なのだ。


そんなこんなで勤務初日

まずは店頭で年賀状のビラ配りを行う。

これまでスーパーで培ってきた接客力をなめるな。
あっという間にノルマの50枚を配り終わった。

すると追加でまた50枚渡され、
さすがに時間も経っていたので捌ききれなかったが
予想外の才能を開花させていた。



年賀状のチラシを受け取ってくれた人には必ず早割の案内をし、
運が良ければそのまま発注してくれる。
これが非常に嬉しい。

店内の大型タッチパネルで写真を選んでいる様子を見ていると
ただの勧誘だけではないんだなと、仕事をすることのやりがいを初めて感じたような気がした。


都内の大型店だったのでスポーツ選手や有名人もちらほら来店し、
さらっと一番豪華な年賀状を作っていく。

有名人はやっぱり年賀状も豪華だなあなんて思いながら
出来る限り機械的に接客していた。


「もちろんあなたには気付いていますが、私、ちゃんとそういう配慮ができる人間なんです」だとか、「大丈夫、気付いていませんよ」といった素ぶりで対応する。

せっかくだからと、たいして送る人もいない年賀状を自分も少しだけ作った。
1番安いので良いのだが、見栄をはって下から2番目のデザインにした。


年賀状シーズンが終わったころ
店長から「卒業までいたらええやん」と言っていただいた。
職場の雰囲気もとても良く、楽しく仕事をしていたので喜んで続けることにした。

最初からここでバイトすれば良かったと思っていた私は
きっと薄情なんだと思う。

FA移籍するプロ野球選手にとやかく言う資格はないのかもしれない。


先日、数人だけ送る先があるため年賀状を作りに家の近くのカメラショップに行った。


本当は1番安いデザインで良かったのだが
見栄をはって少しだけ良いデザインにした。

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