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【ネタバレ】「ドクタケ忍者隊最強の軍師」を見て子供が子供でいられる社会を願った話

こんにちは、こんばんは。
映画の公開から一月が経ってもまだ情報を整理しきれない緑川です。

この映画、家族の話なんですよね。
きり丸(戦災孤児)
土井先生(戦災孤児)
この二人を中心に「家族とは何か?」と考えるきっかけをくれます。



この先ネタバレ配慮してません




先に書いた通り二人に血縁はいません。
それでも一緒に暮らしている。

二人の関係は先生と生徒であり、保護者と被保護者。
親子のようでもあり兄弟のようでもあるけれど、どちらでもないと言う、不確かな繋がりです。

それでも破綻しないのは二人が努力して繋がりを保っているからなのだと思います。

互いに程々に甘えたり甘やかしたり、世話を焼いたり焼かれたり。

そうやって築いてきた絆が土井先生が行方不明になることで霧散します。

大人たちは子どもたちに「土井先生は遠くへ出張に行った」と説明して行方不明であることは伏せられます。
「(土井先生の借家の)長屋のどぶ掃除どうすんだよ〜」と言っていたきり丸。
出張そのものは間々ある事なので心配はしません。

学園の六年生達が土井先生を探して聞き込みして回っていることを知っても「坂東に出張していることを知らないんだ! この情報いくらになるかな〜」と稼ぐ算段を立てます。

居なくなるなんて、考えたこともないのです。

ところが生死不明であることを知ってしまいます。

そこからきり丸の表情は抜け落ちます。(余談ですが、あの絵柄で表現出来ることに感動しました)

淡々と授業をこなし、休みの日には土井先生と住んでいる長屋の掃除という、いつもの日常を過ごします。感情らしい感情は悪夢を見ている時だけ。

「子供が子供で居られる社会が幸せな社会だ」と作家のはやみねかおるは言いました。彼の児童書を読んでいた子供時代には意味がよくわかりませんでしたが、大人になった今は心から同意します。

きり丸は駆け引きなしで頼ったり甘えたりして良い相手を失ったことで、子供でいられる状態ではなくなってしまいました。遊びもせず不満も言わず、ただ淡々と土井先生の家を掃除する(アルバイトを休んで)という労働で自分の居場所を確保しようとしているように見えます。

無意識だろうと思いますが、賃金が発生するアルバイトより、居場所との結びつきを強固にするための無報酬の掃除を選んでいるというのは、土井先生がいる時にはありえない行動です。

土井先生との思い出が詰まっている長屋を掃除するパートで流れてくるBGMが秀逸です。
山田先生のハミングなのですが、まさに子守唄。思いやりや温かさが滲みます。

天涯孤独な土井先生は、抜け忍として行き倒れていたところを山田先生に拾われた過去があり、"土井半助"の名前も山田先生が付けたものです。

先生二人も、疑似親子と言える関係なのです。

このハミングが守ってくれる大人の存在を示しているように感じてわたしはグッと来てしまいます。


長屋を掃除した帰りに、記憶を失い天鬼となった土井先生を見かけます。
天鬼に殺されかけた六年生に囲まれて、ただならぬ気配を感じていたはずですが、久しぶりに笑顔を見せます。

「土井先生、生きてた…」

発したことはこの一言。

このシーンには胸がいっぱいになってしまいます。
「帰ってきて」とか「六年生たちを攻撃した」とか、そんな事はこの時は脳裏にかすりもしないのでしょう。
ただ無事を祈っている。

これで家族じゃないなんてだれが言えるでしょう?


学園に帰ると、思い詰めた様子のきり丸を案じたクラスメイトたちに詰め寄られて事情を話します。
乱太郎たちは組のみんなには多少甘えることが出来るみたいで安心しました。

「みんなで(担任としての)土井先生を取り戻そう!」
と息巻くクラスメイトたちに
「オレは土井先生に会いたい!」と本音を吐きます。

ここでも「会いたい」だけなんですよね。
自分のことを忘れている相手に多くを望むのは怖いことでしょうし、無事で居てくれさえすれば良いというのも本音なのでしょう。どちらも含むのだろうと思うと実に巧みな台詞です。

は組のみんなに相談することによってきり丸は子供らしさを少しずつ取り戻します。


最後のシーン、は組のお約束に
「教えたはずだ!!」と胃を痛くした天鬼を前に
「己の命より銭大事!!」
「払ってたまるか六文銭!」
と、いつも土井先生を困らせていた台詞を並べたてます。

今まで土井先生相手に自覚的に甘えていたとまでは思いませんが「こういう事を言っていい相手」として認識していたのですね。

そうやって記憶を取り戻した土井先生の
「一緒に帰ろう」
と言う台詞にはきり丸や他のキャラクターだけでなく、見ているわたしも涙が浮かんできます。ちなみにわたしが3回目を観た劇場では四方からすすり泣きが聞こえました。

いつもあるものが当たり前にあるものだと思ってはいけない。
それを刻みつけてくれるような映画です。
わたしも家族の顔が見たくなりました。

そんな忍たま映画が本日1/31から4DX上映が始まります。
楽しみだ〜!

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