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新型コロナウイルスワクチン 個人的まとめ

2024年10月から新型コロナウイルスワクチンの自治体による定期接種が始まった。対象は65歳以上、または60歳~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な人となっている。費用の補助があり原則無料で受けられる。もう対象者には自治体から通知が送られているはずだ。

新型コロナの状況は年々変わっており、ワクチンをどの集団に程度推奨すべきかも変化している。知識整理のために一度まとめておこうと思う。

流行状況

今は第11波らしい。7月下旬をピークに徐々に下がってきている状況だ。とは言え依然として高い状況だろう。例年のことを考えると12月からまた次の波が来る様に思われる。

国立感染研究所HPより

現在の流行株

今の流行株は大部分がKP.3 で、JN.1とKP.2が続く。KP.3はJN.1から派生したもの。JN.1はオミクロン株のBA.2.86からの派生である。

昨年はオミクロン系統XBB.1.5株対応のワクチンが用いられたが、それに対してJN.1は免疫回避能を持っていた。今年のワクチンはJN.1対応のものになっているが、現在の流行株であるKP.3に対しても中和抗体誘導能があるとのことである。

現在のCOVID-19の重症度

COVID-19が発生した早期やデルタ株が出現した時は重症化する患者が多く、また使用できる薬剤も少なかったため医療機関はかなり緊迫した状況であった。当時はmRNAワクチンの登場はかなりの助けとなりホッとした覚えがある。
しかし今の状況はそれとは異なる。オミクロン株となり病気の重症度は低下した。また、多くの人がワクチンを接種するか罹患しており、基礎的な免疫力を保有している状況である。現在流行中のKP.3で特に有害性が上がっているとは聞かない。また、臨床現場の印象でも若年者では罹患してもほぼインフルエンザ並みで終わってしまう事がほとんどである。ただの風邪に近づいている印象である。
しかし、高齢者、特に80代後半以降では肺炎をきたして入院するケースもいまだにあり、不幸にも亡くなってしまったり、肺炎が器質化して呼吸障害が残ってしまうことも稀ではないため油断できない。
以上から、年齢や合併症を考慮しリスク別に管理する必要があるだろう。

行政機関の推奨

厚労省もその様に考えている様で、ワクチンの対象を65歳以上、または60歳~64歳で心臓、腎臓または呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される人、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)による免疫の機能に障害があり日常生活がほとんど不可能な人としている。
医療従事者は現場で感染するリスクが高く、また、重症化リスクがある患者にうつす可能性もあることを考えると、定期接種候補として欲しいが、今回は入っていない。自分は打ちたいけれども15000円ほど掛かってしまうことから、そこまでは出せないかなと思っている。

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001305412.pdf

一方で米国CDCは6ヶ月以上の人全員にワクチンを推奨している。特に65歳以上、合併症がありリスクの高い人、今までワクチンを打っていない人に強く推奨している。

使用するワクチンはJN.1対応のものである。現在認可されているのはmRNAワクチンが3種類、組み換えタンパクワクチンが1種類、mRNAレプリコンワクチンが1種類である。

厚労省資料 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001305412.pdf

有効性

昨年のXBB.1.5対応1価ワクチンの効果が参考になる。
国内の報告では未接種者と比較して60歳以上で入院予防効果44.7%。
海外の報告では未接種者と比較して
・60歳以上で入院予防効果70.7%、ICU入室予防効果73.3%。
・18歳以上で入院予防効果62%、救急受診予防効果58%。
・65歳以上で、入院予防効果が接種後7-59日で54%、接種後60-119日で50%。
大雑把には重症化を半数ほど減らせる感じであろう。

安全性

投与するにあたり副反応は懸念事項になる。前回の定期接種における副反応の報告はファイザー社 副反応疑い 153例(0.0006%)、重篤 83例(0.0003%)、死亡 22例(0.0001%)
モデルナ社 副反応疑い 50例(0.0016%)、重篤 32例(0.001%)、死亡 12例(0.0004%)
武田ノババックス社(組み換えタンパクワクチン) 副反応疑い 44例(0.0126%)、重篤 13例(0.0037%)、死亡 1例(0.0004%)
であった。
報告された副反応の総数は実感より少ない気がするが、重篤例や死亡例は漏れがないはずである。重篤なものは稀と言えるだろう。

厚労省資料 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001305412.pdf
厚労省資料 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001305412.pdf

ファイザー社のコミナティのインタビューフォームでは、注射した局所の痛みなどは80%以上に認められ、頭痛60%、筋肉痛40%、発熱17%ほどであり、これは現実に則したデータかと思う。重篤な副反応は少ないが、翌日までそこそこしんどいワクチンという印象だ。

コミナティ インタビューフォーム
https://www.pfizermedicalinformation.jp/system/files/medpage_section/cmt01if_8.pdf

特に懸念される副反応は心筋炎である。稀であるが重篤になりうる。COVID-19 mRNAワクチン投与で心筋炎のリスクは増加し、リスク比は3.24である。しかしCOVID-19感染でも心筋炎を起こすリスクが高くリスク比は18.28である。また、ワクチンでの心筋炎は感染後の心筋炎よりも予後が良い事が多いようだ。
また、心筋炎を発症するリスクが高いのは特に12-30歳の男性である事が分かっている。若年者はCOVID-19で重症化することは少ないこともあり、無理に投与しなくても良いように思う。
高齢者に関しては利益が危険を上回ると考えて良いだろう。

どのワクチンを選択するか

ファイザー社とモデルナ社のワクチンは販売から3年以上経過し投与人数も多く、データの信頼性の面で一日の長がある。これらのワクチンが今のところは標準的と言って良いだろう。
これらのmRNAワクチンは発熱や投与部位の疼痛など副反応を起こす事が多く、それが辛い場合は発熱や局所反応が少ないと報告されている武田社の組み換えタンパクワクチンは選択肢となるだろう。

ヌバキソビット総合製品情報概要 https://www.takedamed.com/pdf/product/595?resource=1#page=6&scrollbars=0&toolbar=0&statusbar=0

Meiji SeikaファルマのレプリコンmRNAワクチンに関しては、製薬会社のデータからは有効性、安全性ともに既存のmRNAと遜色ないと報告されている。一部のワクチン反対団体より安全面から批判されているが、特にシェディングといって他者にスパイクタンパク成分が伝播するという懸念に関してはその科学的根拠は見出せなかった。
ただし、既存のmRNAワクチンを上回る効果があるわけではなく、まだ登場したばかりで長期の安全性は不確定であることから、個人的にはまだ待ちだなと思う。

まとめ

65歳以上、特に後期高齢者の人、癌、心疾患、腎障害、呼吸器疾患、糖尿病などの疾患がある人はCOVID-19ワクチンを接種した方が良いだろう。
基本的にはmRNAワクチン、副反応が強い人は組み換えタンパクワクチン。
若い人は事情(例えば受験で絶対かかりたくないとか)がなければやらなくていいんじゃないかな。

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