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「里美のリーダーへの道」
里美は小さな営業チームの一員だった。入社3年目、27歳。成績は悪くなかったが、特別目立つ存在でもなかった。ある日、上司から突然呼び出され、こう告げられた。「里美、来月からチームリーダーをやってみないか?」
驚きと不安が同時に押し寄せた。自分に務まるのか? チームを引っ張るなんて考えたこともなかった。でも、どこかで「挑戦してみたい」という気持ちが芽生えていた。
第一歩:初めてのアポイント
リーダーとしての初仕事は、新規顧客とのアポイントだった。里美は慣れないリーダーシップを発揮しようと、事前に資料を用意し、チームに役割を割り振った。しかし、会議は散々だった。顧客の質問に答えられず、チームメンバーもフォローできず、沈黙が続いた。結果、契約は取れなかった。
帰り道、里美は肩を落とした。「私、リーダーに向いてないのかも…」
でも、その夜、彼女はノートを開いた。アポイントの流れを振り返り、失敗の原因を書き出した。
・「顧客のニーズを事前に把握できていなかった」
・「チームに明確な指示を出せなかった」
・「自分の緊張がみんなに伝わってしまった」
成功や失敗の結果だけを見るのではなく、過程に目を向けた。そして、次の現場でどうするか具体的な改善策を考えた。
二歩目:学びを活かす
次の機会は、既存顧客との更新交渉だった。里美は前回の反省を胸に刻み、準備を重ねた。顧客の過去のデータを調べ、ニーズを予測。チームには「質問されたら私が答えるから、メモを取ってサポートして」と明確に伝えた。
交渉当日、緊張はあったが、前回より落ち着いていた。顧客が「最近、コスト削減を考えている」と言ったとき、里美は即座に「それなら、このプランはどうですか?」と提案。チームもスムーズに資料を渡し、補足した。結果、契約更新に成功。
オフィスに戻った後、里美は再びノートを開いた。今度はうまくいった点を書き出した。
・「準備が自信につながった」
・「チームの役割分担が機能した」
でも、完璧ではなかった。「もっとメンバーの意見を聞くべきだった」と新たな課題も見つけた。
失敗と向き合う覚悟
リーダーになって3ヶ月。里美のチームは順調に成果を上げていたが、ある日、大失敗が起きた。大口案件の提案書にミスがあり、顧客から「信頼できない」と突き返されたのだ。チームの士気は下がり、里美は責任を感じた。「私が確認を怠ったせいだ…」
落ち込む里美に、先輩リーダーの健太が声をかけた。「失敗は誰にでもある。大事なのは、そこから何を学ぶかだよ。」
その言葉に背中を押され、里美はチームを集めた。「今回のミス、私の責任もある。ごめん。でも、ここから改善していこう。一緒に考えてくれる?」
メンバーと話し合い、提案書のチェック体制を見直した。失敗に向き合い、改善策を立てる。その過程で、チームの絆が深まった気がした。
リーダーとしての成長
半年後、里美のチームは社内でトップクラスの成績を収めるようになった。彼女は毎回、現場の後に振り返りを行い、次の行動に活かしていた。成功の裏には、失敗と向き合った経験があった。
ある日、上司が言った。「里美、リーダーとして立派に育ったな。」
里美は笑った。「まだまだです。でも、経験から学ぶ限り、成長できる気がします。」
ノートには、新しい目標が書かれていた。「チーム全員がリーダーになれる環境を作る」。里美のリーダーへの道は、まだ続いていた。