
「流行でなく、永遠に残るデザインを」コシノジュンコさん、万博ユニホームに込めた哲学_デザイン
産経新聞記事2025/2/22
22日で開幕まで50日となった2025年大阪・関西万博で、シニアアドバイザーを務めるデザイナーのコシノジュンコさんが、新たな領域に挑んだ。時代の最先端を取り込んだ1970年大阪万博のパビリオンスタッフのユニホームとは異なり、老若男女問わず心地よく着られるようにボランティアユニホームを監修。そのデザインには、コシノさんが長年のキャリアを通じて築き上げた哲学が込められている。


「かわいい」と評判
ネービーにグレー、またはイエローを組み合わせたTシャツ。
色合いのベストや帽子、ポーチがセットになったボランティアのユニホームはシンプルながらも機能性に富み、動きやすそうなデザインだ。
昨年4月にお披露目されると「かわいい」などと話題になり、ボランティアの募集に際しては目標の2万人を大幅に上回る5万5634人から応募があった。
「これを着て働きたいと、モチベーションが上がるユニホームに仕上がった」。監修したコシノさんは胸を張る。
斬新な「70年」
コシノさんは、70年万博で3つのパビリオンのユニホームデザインを手掛けた。真っ赤なロングコート、ネービーの大きなネクタイを合わせた白のワンピース、パンタロンのパンツスタイルという、当時の最先端を取り入れたスタイルにした。
70年万博は「デザインの実験場だった」と振り返るコシノさん。「自由に、思い切り、新しく、面白いことをやりたい」との思いから「若い日本人のコンパニオンが、よりフレッシュにかわいらしく見えるよう、メリハリを意識してデザインした」と語る。
デザイン性が高く、斬新な印象を与える70年万博のユニホームとは対照的に、今回のボランティアユニホームはシンプルで、流行に左右されない普遍的なデザインだ。
極限までそぎ落とし…
監修では
「ボランティアと一目でわかる」
「さまざまな天候でも心地よく着られる」
「年齢や性別、体形などに左右されない」ことを求められたという。
目指したのは、極限までディテール(装飾)をそぎ落とした、誰もが似合うユニホーム。「着る人も見る人も楽しめるデザイン」を追求し、万博の理念である多様性を表現した。
コシノさんはデザインの力を「言葉では伝えきれないことを万人に分かりやすく見せることができる」と言い切り、ファッション(流行)を構成するデザインの逆説性に言及した。
「良いデザインは流行ではありません。永遠に残るデザインが誕生することを願います」(石橋明日佳)
◇
こしの・じゅんこ 昭和14年、大阪府岸和田市生まれ。新人デザイナーの登竜門「装苑(そうえん)賞」を最年少で受賞。1978年のパリコレクションに参加して以降、世界各地でショーを開催。舞台衣装などを数多く手がける。平成29年、文化功労者。
産経新聞記事2025/2/22