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2024 第26節 福島ユナイテッドFCvsギラヴァンツ北九州


第1部 5471の魂が交錯した90分

※戦術分析は第2部です。

8月最後の土曜日、とうほう・みんなのスタジアム。この日、ここに集まった5471人の観客は、おそらく彼らの人生で最も濃密なフットボール体験をしたに違いない。

空は鉛色の雲に覆われ、時折小雨が降る。私はキックオフ2時間前に到着した。そこで目にしたのは、まるでJ1の試合でも行われるかのような長蛇の列。普段見慣れた顔と、明らかに初めて足を踏み入れたであろう顔が混在する不思議な光景。この日、福島ユナイテッドは「ユナまつり」と銘打って5000人の来場者を目指していた。野心的な数字だ。しかし、人々は期待に応えるかのように続々と集まってくる。


キックオフ直前、空は劇的に変化した。曇り空は夕日に染まり、遠くには虹が架かる。神々しい光景だ。この瞬間、私は思った。「今日は何か特別なことが起こるに違いない」と。
試合が始まると、スタジアムは満員御礼。私が数年通い続けて初めて目にする光景だ。感慨深さと共に、何か大きな変化の予感が胸を占める。

ユナイテッドの選手たちは、その期待に応えるかのように猛攻を開始する。右サイドバックの森璃太は、新潟からの期限付き移籍とは思えない程にチームに溶け込んでいた。ピボーテの加藤の復帰は、チームに安定感をもたらした。澤上、針谷、森、加藤と、次々とシュートを放つ。しかし、ゴールネットは一向に揺れない。琉球戦の悪夢が頭をよぎる。

そして、私の目は否応なくピッチ上の二人の選手に引き寄せられる。福島の背番号14、大関友翔。そして北九州の若き才能、藤原健介。彼らの存在感は特別だった。まるでモーツァルトとサリエリのようだ。才能と努力、天賦の才と研鑽の成果。二人の関係性は、まるで音楽劇のように、ピッチ上で静かに、しかし激しく展開されていく。
そして、この日は背番号14に軍配が上がる。本来は左IHのポジションだが、彼は縦横無尽に走り回り、時に右サイドまで駆け上がる。明らかに異彩を放っていた。 彼の動きは、チームの中で特別な意味を持っていた。ビルドアップの出口となり、チャンスメークをし、さらにはフィニッシュにも絡む。その姿は、古い例えかもしれないが、プレースタイルは異なるものの、ジョホールバルの中田英寿を想起とさせた。

そして、運命の88分。狭いペナルティエリア。北九州の9人の壁。それは、まるで迷路のようだった。しかし、大関は迷路を解く鍵を持っていた。彼の動きに呼応するように、チームメイトが踊る。矢島、城定、長野。そして最後は清水が、まるで長い物語の結末を書くように、ボールをゴールに叩き込んだ。
その瞬間、スタジアムが揺れた。5471の魂が一つになった瞬間だった。私は思わず目を閉じた。この歓声を、この感動を、この瞬間を、しっかりと心に刻み付けたかった。
試合終了のホイッスル。1-0、福島の勝利。ピッチに倒れ込む北九州の選手たち。彼らもまた、この歴史的な瞬間の一部なのだ。

5000人プロジェクトは、最高の結果で幕を閉じた。普段の4倍の観客。この中から、何人が再びスタジアムに足を運ぶだろうか。それは誰にも分からない。しかし、私は確信している。今日この試合を見た人々の心に、何かが芽生えたはずだと。

試合開始前、明治安田の支社長さんの言葉を思い出した。「今日は奇跡の試合です」。その時はよくある社交辞令だと思った。5471の魂が織りなした90分。それは、ただのフットボールの試合ではなかった。それは、小さな奇跡だった。そして、その奇跡は、これからも続いていくのだろう。福島の地で、フットボールという名の交響曲は、これからも鳴り響いていくに違いない。

第2部

初期配置

福島ユナイテッドFC: 4-3-3
ギラヴァンツ北九州: 4-2-3-1

左:福島 右:北九州

注目すべき点として、福島は出場停止の上畑選手の代わりに、久しぶりに30番加藤選手がピボーテ(守備的中盤)として起用されました。この変更が試合展開にどのような影響を与えたかを見ていきましょう。

戦術スタッツ

北九州のプレス戦術

  • トップとトップ下の選手が並列に並び、実質的な2トップを形成

  • この2トップで福島のピボーテ(㉚加藤選手)を消す

  • 同時に、福島のセンターバック(CB)にプレスをかける(カバーシャドー)

  • 北九州のボランチが福島のインサイドハーフ(⑭大関選手と⑰針谷選手)をマーク

この戦術の狙いは明確です:福島のビルドアップを妨害し、特にピボーテの加藤選手がCBから直接ボールを受け取ることを防ぐことです。

北九州のプレス。4-4-2から2トップがピボーテを消しながらCBにプレス

4-4-2フォーメーションの弱点と福島の対策

4-4-2フォーメーションには、一般的に以下の弱点があります:

  1. バイタルエリア(CBとボランチを結ぶ四角形の空間)

  2. 中盤のボトム(ボランチと2トップを結ぶ四角形の空間)

福島は、この弱点を突くために加藤選手をピボーテとして配置しました。加藤選手が中盤のボトムでフリーになれば、一気にバイタルエリアへのパスコースが開くことになります。しかし、北九州もピボーテに入れさせないような立ち位置を取ります。

福島のビルドアップ戦術

福島は以下のような戦術でビルドアップを行いました:

  1. 低い位置では、キーパーと2CBの3枚で数的優位を作る

  2. 高い位置でのビルドアップ時は、CB2枚(ピボーテをDFラインまで下げて3バックを作ることはしない)

  3. インサイドハーフ(IH)の大関選手、針谷選手をビルドアップの出口として活用

  4. CBからIHへパス、そしてダイレクトでまたCBへ戻すという動き

  5. この間に、ピボーテの加藤選手が絶妙な動きで中盤ボトムでフリーになる

  6. 左ウィングの森選手や中盤の選手がバイタルエリアに侵入

この戦術により、福島は前半だけで6回(違ってたらすみません)もアタッキングサードまで進入することに成功しました。中盤3枚の動きがシームレスで、時には逆三角形が頂点を変えて通常の三角形に変形するなど、北九州の守備陣が捕まえきれない場面が多々ありました。

福島のプレス戦術

福島のプレスも特筆すべき点がありました:

  • 両サイドバックが相手サイドバックまで積極的に出ていく

  • これにより、サイドの主導権を握ることに成功

  • ただし、サイドバック裏を突かれるリスクも存在

しかし、北九州はサイドハーフが中央に寄る傾向があったため、サイドを突く意識が低く、福島のリスクが顕在化することはありませんでした。

戦術分析のまとめ

この試合は福島の完勝と言える内容でした。特に、4-4-2フォーメーションの相手に対する攻略法については、かなりの成果が見られました。

福島の成功の鍵となった要素:

  • ピボーテ(加藤選手)の効果的な活用

  • 中盤3枚の流動的な動き

  • サイドバックの積極的なプレス

今後の展望:八戸戦に向けて

次節の八戸戦では、新たな課題が待ち受けています:

  • 八戸は3-1-4-2(守備時5-3-2)という奇策を取る

  • 中央が非常に厚いため、通常の戦い方では苦戦が予想される

  • 対策として考えられるのは:

    1. サイドでの数的優位を作り出し、アーリークロスを狙う

    2. 中盤3枚の選手が脇を突く柔軟な動きを展開する

まとめ

現代サッカーにおいて、戦術の理解と適切な実行は勝利への近道です。相手の弱点を突く戦術と、自チームの強みを最大限に活かす柔軟な戦術の組み合わせが、試合の勝敗を分ける重要な要素となります。
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