2024 第30節 福島ユナイテッド×AC長野パルセイロ
長野の緻密な修正が福島の優位を覆した90分
開幕:福島の優位なスタート
とうほう・みんなのスタジアムで繰り広げられた福島ユナイテッドとAC長野パルセイロの対決は、現代サッカーにおける戦術の複雑性を如実に示す好例となった。0-0という結果の背後には、両監督の綿密な戦略と、それを体現する選手たちの知性が垣間見える興味深い90分間があった。
初期配置
福島ユナイテッド:4-3-3
長野パルセイロ:3-4-2-1
長野のプレスと福島の対応
長野は以下のようなプレスを仕掛けた:
2シャドー⑭三田選手と⑧近藤選手が福島のセンターバックにプレス
トップ⑩山中選手が福島のピボーテ(⑬宮崎選手)をマーク
Wボランチが福島のインサイドハーフ(IH)⑳城定選手と⑰針谷選手に対応
福島は、このプレスに対して以下のような対策を取った:
IH(城定選手、針谷選手)がボールを受けに下がる
トップの㊵樋口選手やLWGの⑩森選手が中盤のスペース(バイタル)に降りてくる
この動きにより、長野のボランチが福島のIHについていくと中盤にスペースができ、そこを攻撃の起点として使うことができた。
長野の戦術修正
長野の高木監督は、19分あたりで福島の対応を見て以下のように戦術を修正:
シャドー(⑭三田選手)が福島ピボーテ(⑬宮崎選手)をマーク
もう一方のシャドー(⑧近藤選手)が福島IH(⑰針谷選手)をマーク
ボランチ(⑥西村選手)が福島IH(⑳城定選手)をマーク
これにより、中盤をダイヤモンド型にしてマンマークに変更。福島のビルドアップを阻害することに成功。
この変更により、福島は以下の課題に直面:
センターバックへのプレスが1人になったため、CBの持ち運びが重要に
サイドでの優位性を作る必要性(長野の配置はサイドが弱点)
マークオンの選手によるスペースメイク、マークオフの選手によるスペース活用
退場による10人での戦い
後半、試合の流れを大きく変えたのは福島DFの⑤大森選手の退場だった。DOGSOの判定については議論の余地があるかもしれないが(前日のプレミアリーグ、チェルーシー×ブライトン戦でのエストゥピニャンも同じようなファウルを犯すもイエロー)、これにより福島は10人での戦いを強いられることになった。
福島はこの窮地を、FW樋口選手を下げてDF③松長根選手を投入するという冷静な判断で乗り切った。10人になっても、彼らは自分たちのサッカーを諦めることなく、ボール保持を試みた。4-4-1ではなく4-3-2という強気の采配。
GK吉丸絢梓選手は試合後、この状況についてこう振り返った。「10人になっても逆転して勝てた経験が今年はあったので、特に慌てることはなく、いつも通り自分たちのサッカーをやろうと意思統一はできていた」この冷静な姿勢が、苦しい状況下でのチームの粘り強さにつながったと言えるだろう。
戦術的課題
この試合で浮き彫りになった福島の課題は、相手のプレスに対する対応だ。これは今後の試合で改善が必要な部分だろう。
一方で、10人になってからの修正は見事だった。守備を固めつつも、攻撃の機会を完全に諦めることなく戦い抜いた姿勢は評価に値する。
寺田周平監督は試合後、チームの姿勢を高く評価しつつも、課題を指摘した。「1人少なくなっても臆することなくボールを保持する時間も作れていた。選手たちの逞しさや成長を感じられたし、本当に感謝している。」しかし同時に、「勝点3を取れなかったことは悔しい。カウンターを受けることで、相手の中央にボールを入れていくようなチャレンジが少なくなっていってしまったように感じている」と、攻撃面での課題も挙げている。
次戦への展望
この引き分けにより、福島は6位のプレーオフ圏内に浮上した。次戦はアウェイで讃岐と対戦する。寺田監督は「3連戦にはなるが、みなさんの期待に応えられるようにチーム全体で乗り越えていきたい。もう一度、今日出た課題を生かしてゴールを奪うところのアイデアや質を上げ、次のゲームにぶつかっていきたい」と、次戦への決意を語った。
次の讃岐戦では同じ3-4-2-1の相手に対して、長野戦で露呈した課題をどう修正し、どのような戦いを見せるか。福島ユナイテッドの進化は、まだ続いている。
福島ユナイテッドの今後の戦いに期待しましょう!
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