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2024 J3第24節レビュー 福島ユナイテッドFC🆚FC琉球


緑の芝生と消えない夏の熱気 -とある土曜日の試合について

※戦術分析は第2部です。

台風一過の蒸し暑い午後

8月のある土曜日、私はスタジアムに向かっていた。とうほう・みんなのスタジアム。台風7号が過ぎ去った後の空気は、まだ湿り気を含んでいて、シャツの背中に汗が滲む。この日、福島ユナイテッドFCとFC琉球による熱戦が繰り広げられた。サマーブレイクを経て3週間ぶりの公式戦となるこの一戦は、両チームにとって重要な意味を持つものだった。順位表中位で競り合う両チームにとって、この試合の結果が今後のシーズンの行方を左右する可能性を秘めていたからだ。

スタジアムに到着すると、そこにはすでにいつもより多くの人々が集まっていた。台風7号の接近により、一時は開催が危ぶまれたが、幸いにも天候は回復し、予定通り18時にキックオフを迎えた。

痛みの記憶

福島は、慣れ親しんだフォーメーションで試合に臨んだ。最前線にはファルソ9ができる樋口を配置し、攻撃的な姿勢を示した。一方のFC琉球は、前回の対戦時に採用していた3バックから4-4-2へとフォーメーションを変更。この戦術的変化が、試合展開に大きな影響を与えることとなる。

試合開始直後から、主導権を握ったのは地元福島だった。テクニカルな中盤陣を中心に、ボールを支配し続ける。前半だけで12本のシュートを放ち、ボール支配率は64%にも達した。統計的には圧倒的な優位に立ちながらも、最後の一押しが足りず、ゴールネットを揺らすことはできない。

そして福島にとって痛恨の出来事が起こる。攻撃の要であるFW塩浜が、ゴール前への果敢な飛び込みの際に膝を負傷。痛みに顔をゆがめながらピッチを後にし、代わりに吉永が投入された。この予期せぬ変更が、福島の攻撃リズムを狂わせる一因となった。

沈黙の後半戦

後半開始直後、FC琉球は大胆な采配に出る。ボランチとFWの2枚替えを断行し、試合の流れを変えにかかった。この采配が見事に功を奏し、試合の様相は一変する。それまで圧倒的な攻撃を仕掛けていた福島が、一転して守勢に回る展開となった。

攻撃の糸口を失った福島は、後半に入ってからシュートすら放つことができない苦しい時間帯を過ごす。チームメイトからのパスは樋口に届かず、彼の足元でボールが踊ることはなかった。

そして試合終盤、琉球にとって待望の好機が訪れる。アディショナルタイムに仕掛けたカウンター攻撃が、疲弊した福島の守備陣を突破。鋭い縦パスからゴール前に抜け出した琉球の選手が、冷静に決勝点を決める。スタジアムに詰めかけた福島サポーターたちのため息が漏れる中、試合は琉球の0-1勝利で幕を閉じた。

この試合を通じて、福島には攻撃の最終局面での精度向上という明確な課題が浮き彫りとなった。前半の圧倒的な攻勢を得点に結びつけられなかったことが、敗因の一つとなったからだ。一方で琉球は、粘り強い守備から鋭いカウンターを仕掛ける戦術の有効性を証明した。

サマーブレイク明けの一戦で、両チームともに今後のシーズンに向けた課題と可能性を見出すこととなった。福島は攻撃の精度向上と、負傷離脱した選手の穴を埋める必要性に直面。琉球は今回の勝利を弾みに、さらなる上位進出を狙う。

リーグ戦も佳境に入り、両チームの今後の戦いに注目が集まる。この一戦で明らかになった課題をどのように克服し、チーム力の向上につなげていくのか。サポーターたちの期待と共に、シーズン後半戦の展開に熱い視線が注がれている。

消えない夏の熱気と、続く物語

試合終了の笛が鳴り、人々はスタジアムを後にしていった。日が落ちた後も、アスファルトからは熱気が立ち昇っている。夏はまだ終わる気配を見せない。
この日の試合は終わったが、選手たちの物語はまだ続いている。樋口の孤独、塩浜の痛み、琉球の歓喜。それらは全て、この先も形を変えながら繰り返されていくのだろう。その繰り返しの中に、人生の本質があるのかもしれない。
私は帰り道、額の汗を拭いながらふと立ち止まった。空を見上げると、蒸し暑い大気の向こうに星々が瞬いていた。その光は、どこか遠くにある希望を指し示しているようにも見えた。しかし同時に、その星々の光さえも、この夜の暑さに溶けてしまいそうだった。
虫の声が遠くで鳴り響く。その音は、終わりなき夏の序曲のようだった。明日も、また暑い一日になるだろう。そして、誰かの物語が、またどこかで始まるのだ。

第2部 戦術分析 ポゼッション型チームが沼る理由

琉球のプレスvs福島のビルド

まず、両チームのフォーメーションに着目しましょう。福島が 4-3-3、琉球が 4-4-2 を採用。ここで特筆すべきは、琉球の 2 トップによる絶妙なプレス。福島のピボーテである㊶上畑選手へのパスコースを切りながら、巧みに孤立させつつ、センターバックに対して効果的なプレッシャーを仕掛けました。この戦術が試合展開に多大な影響を及ぼしていたことは明白です。



福島4-3-3。琉球4-4-2。

琉球のプレス。2トップによるカバーシャドーで福島ピボーテの㊶上畑選手へのコースを封鎖


戦術スタッツ


福島陣営にとって、上畑選手への最適なボール供給(相手2トップとボランチの四角形の中)が困難な状況に陥りました。しかし、ここで個々の選手の卓越した技術が光ります。インサイドハーフの大関選手が位置を下げて展開に加わったり、各選手が個人技を駆使してマークを振り切ったりすることで、わずかながらチャンスを創出。

ただし、福島の真骨頂である疑似カウンターが機能していなかったことが大きかったと思います。その要因は、琉球が深追いを避けたからです。福島はゴールキーパーを含めた 3 名での低い位置からのビルドアップを試みますが、琉球はそこまで前線からプレスを掛けてきませんでした。

さらに、高い位置でのビルドアップ。2トップのプレスに対し、ピボーテが DF ラインに下がり 3 バックを形成するところですが、福島はその戦術を採用しません。結果として、個人の技量に依存したビルドアップとなっています。

ここで、統計データを確認しましょう。ボール支配率は福島が前半 63%、後半 57%。シュート数は前半 12 本、後半 4 本。明らかに後半に失速傾向が見られます。

この後半の失速には、主に 2 つの要因が考えられます。

第一に、前半に負傷交代を強いられた塩浜選手の離脱です。優れたパサーが多い福島にとって貴重なフィニッシャーである、チームトップスコアラーの不在により、得点の機会が著しく減少しました。

第二に、ポゼッション型チームに往々にして見られる陥穽に陥ったことです。ボールは動くものの、選手の動きが停滞する。後半になり運動量が低下すると、決定的なシーンを作り出せなくなる。これは珍しくない事態です。

本試合から得られる教訓は走力の重要性とやはり言いたいのは陣形の理を活かすことの重要性です。福島は自身のサッカースタイルを貫徹しようとしましたが、結果的に琉球の戦術に翻弄されてしまいました。

詳しくはYS戦のレビューを参照ください。

次節の試合では、より柔軟な戦術采配が可能となるか、注目に値するところです。

以上が本日の分析となります。面白かったという方はスキ、フォローお願い申し上げます。

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